競馬・競輪は、「未来予測」である。
これは、自称「希望の星」の若さんの持論であった。
彼は、皆の「希望の星」を目指していたのだ。
「本命も当てるし、穴も当てる、若さんは<天才>と違うか」と荻さんが感嘆するように、競輪仲間に言う。
過去を語ると空しいくもあるが、若さんは伝説の勝負師「西豪」を崇拝していた。
麻雀もプロ並みに強いのである
その西が、42歳の若さで逝ってしまう。
末期の膵臓がんであっのだ。
西は豪快で気っ風の良い男で、女にもてていた。
美しく響く低音の声をして、如何にも男らしい男であった。
大学時代は合唱団に所属していたそうだ。
元は自衛隊員の医官であり、階級は2佐だつた。
医官とは、医師の資格を有する陸・海・空自衛隊の幹部自衛官のこと。一般的な軍隊の軍医に相当する。
競馬と競艇で得た金で、仲間を引き連れて、銀座、赤坂のナイトクラブで飲んでいた。
日本酒は飲まないで、ブランデーやワインを好んでいた。
彼こそがまさに皆の「希望の星」の存在だった。