阪神、退団濃厚ボーア残すべきだった? 高年俸ネックも「適応しようと努力していた」〈dot.〉

2020年11月12日 16時30分16秒 | 野球

11/12(木) 16:00配信

AERA dot.

阪神退団が決定的と見られているボーア (c)朝日新聞社

 阪神ジャスティン・ボーアがシーズン終了前に帰国した。1年限りでの退団が濃厚と見られている。

 助っ人の戦力としては物足りないという判断だろうが、ボーアの評価は決して低くない。特に人間性に関しては素晴らしい。今後の日本への適応の可能性など、球団側の判断は正しかったのだろうか……。

「日本に着いたその日から、温かいご声援をいただきありがとうございました。ファンのみなさんの声援は私に届いていて、すべてが私の力になっていました。タイガースファンは最高です。そして、素晴らしいチームメートたちとタイガースの一員としてプレーできたことを誇りに思います。もちろん、日本食はおいしくこの日本という国は最高です!たくさんの応援をありがとうございました」(ボーア)

 11月7日、阪神球団からボーアの帰国が発表された。10月22日に出場選手登録を抹消されてから1軍に昇格することなく米国へ戻ることになった。このコメントが最後のメッセージになりそうだが、ここでも阪神や日本への感謝しか述べていない。ボーアの人間性を表している。

「絵に描いたようなナイスガイ。メジャーで実績があるのにおごったところがない。チームに溶け込もうと積極的に会話もする。日本野球に適応しようといろいろやっていた。打てなくても常に前向きな姿勢は見習うべき点。ファンにも気さくに対応していて、時間が許す限りサインなどにも明るく応じていた。コメントはボーアの本音だったと思う」(阪神球団関係者)

 大の親日家であり、マーリンズで一緒だったイチローを尊敬している。日本のレベルの高さを知っており、来日前には周到な準備も重ねた。ケーシー・マギー(元楽天、巨人)などにアドバイスを受けていたことは有名だ。しかしながら日本野球への対応には終始、苦戦していた。

「打撃フォームに米国人独特のクセがある。力負けしないで打ち返すために、『間』を作らないで直線的にバットをボールに当てる。引っ張る打球が多いプルヒッターなのはそのため。また始動も早く開き気味になるので、左投手の外角球などはボール球に見えていたはず。日本野球への適応には時間がかかると見ていたが、思った以上に苦しんだ」(在京球団スカウト)

メジャーでは17年シーズンに25本のホームランを放つなど、通算92本塁打を誇る長距離砲。日本一を掲げた今年、打線の柱として期待されたが、春季キャンプから苦しむ場面も目立った。結局99試合で打率.243、17本塁打、45打点と期待を裏切る結果になってしまった。

「結果が出なくても前向きな姿勢は変わらなかった。コーチや仲間からの助言をもらい、新しいことにも取り組もうとしていた。開幕後に結果が出始めた時期にはチーム内の誰もが喜んだ。ボーアの必死に取り組む姿を知っているから。2軍でも毎日一生懸命やっていた。ハングリー精神など、結果以上にチームへの影響は大きかったのだが……」(阪神球団関係者)

 誰に聞いても良い人だったボーアだが、人望だけでは生き残れない。生え抜き選手ならチーム残留の芽もあったのだろうが、『助っ人』としては決して満足できる結果ではなかったのは事実だ。推定250万ドル(現在のレートで約2億6,000万円)とも言われる高額年俸もネックになった。

「32歳という年齢を考えれば、即戦力で結果を求める。ボーアの打撃をしっかりチェックしていれば、日本への適応に時間がかかることはわかったはず。実力と年俸がマッチしていない印象は強い。代理人にうまく売り込まれたのかもしれない」(国内マネージメント会社関係者)

 米国での実績もあり野球への取り組み方も模範的だ。甲子園の浜風を苦にしない長距離打者は貴重なはず。1年限りでの退団には別要素も絡むという。

「今オフは山田哲人(ヤクルト)など、FA市場に大物がいる。またソフトバンクから自由契約となった内川聖一など、ビッグネームも獲得できる状況になっている。補強資金を捻出する必要があった。福留孝介、能見篤史というベテランが退団することで浮いたお金を合わせれば、かなりの額を回せる。成功するかギャンブル的な要素もある外国人ではなく、お金を費やしてでも国内選手を獲得する方針ですね」(阪神担当記者)

85、86年の三冠王ランディ・バース。93年の首位打者トーマス・オマリー。かつての阪神は球史に残る左打ち超優良外国人を見つけ出して来た。そして2人とも性格が良く仲間に慕われた。ボーアもそのような存在になることが期待されたが、バッティング技術では彼らに並び立つ選手にはなれなかった。

「ボーアとは異なる打撃スタイルだった。バースは離れた立ち位置から。オマリーはオープンスタンスから。ともに思い切り踏み込んで逆方向へも鋭く打ち返せた。引っ張りが特徴のボーアに同様の期待をするには無理があったのかもしれない。いくら性格が良くても結果が出なければダメ」(在京球団スカウト)

 ボーアは『3匹目のどじょう』そして『神様』『仏様』にはなれなかった。そして阪神が頂点を狙うプランの立て直しが再び始まる。今度はどうなるのか、球団編成部のお手並み拝見だ。

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