ナビスコカップの大宮アルディージャ戦、マリノス戦で見られたような、上昇へのきっかけの一端が見える試合ではあった。
小笠原、梅鉢のダブルボランチと、再び梅鉢を起用。前回ほどは目立たなかったが、肝心なところでは体を張ったプレーで、ピン
チをしのいでいた。柴崎ほど試合全体をコントロールする力はないが、その分、気迫で相手の中心選手をつぶしにいく姿勢には、
非常に好感が持てる。柴崎のような広い視野でゲームを見られるようになれば、将来は間違いなくアントラーズを支える選手に育
っていくだろう。
その柴崎だが、前半40分頃、太股の怪我をしてしまい、増田に交代した。興梠のゴールは、柴崎が綺麗な縦パスを大迫に出し
て、それを大迫がシュートしたボールがちょうど興梠の前に転がってきたのを蹴りこんだものだったので、柴崎の質の高いパスは
得点に絡んでいた。先発できなかった増田にとっては願ってもないチャンスだったが、いまひとつ元気がなく、柴崎が先発するの
はやむを得ないと感じさせた。
興梠は今期初得点。気分的には相当楽になったのか、得点後の表情は明るかった。ラッキーに近いゴールだったとはいえ、これ
をきっかけに少しずつでもいいから、自信を取り戻して欲しいものだ。動きそのものはかなりよくなって来たように見えた。た
だ、一点取って安心したのか、後半に気の緩みが早くも見られたのは残念だ。流れが来ている時は、どんどん仕掛けて得点を狙う
貪欲さが欲しい。
その点、非常に期待が持てそうなのが、後半、ジューニョといっしょに投入された、ドゥトラだ。荒削りだが突進力があり、自
分一人で局面を打開しようとする強い意欲を感じる。ジューニーニョは独特のリズム感を持っているが、ドゥトラとのコンビは
良さそうに見えた。ブラジル人同士だからいいということはないだろうが、ジューニーニョも日本人だけの中にいるときより、
気分的に楽というか、うまく周囲にフィットするように見えた。ジュニーニョはまだ本調子ではないが、ドゥトラが彼の力を引き
出すきっかになるかもしれない。若い経験が浅い選手が多いせいもあって、アントラーズはまだまだ借りてきた猫のような大人し
さが目だって物足りないが、ドゥトラのような直線的に力で突進していくタイプは、是非とも必要だと思う。
山村は今日はやや危ない不安定なプレーが多かったが、岩政がしっかりカバーしていた。新井場は左サイドに入って、右サイド
は西だったが、新井場の出来は良かったと思う。運動量も多かったし、シュートも積極的に打っていた。西の出来が前回に比べて
悪く、目立たなかったのが残念。西はいいポジションで待っている時が多いのに、周囲が彼を生かさない傾向は去年からあった。
西はいいクロスを出せる能力があるので、もっと積極的に攻撃に参加して欲しい。
大迫は一人でドリブルで突破してシュートした場面と、興梠からのパスをシュートしてわずかにはずれた場面は惜しかった。
全体的は得点を取る匂いを感じさせるプレーが多いが、最後を決めきれない状況が続いてはいる。もう少ししたらふっきれたプレ
ーが見られるかもしれない。柴崎が退いた後、やはり全体をしっかり締めていたのは小笠原だった。全体の状況を見る目というの
は、何と言っても小笠原はずば抜けて優れている。後半、運動量が落ちることが多くなったが、柴崎、山村、梅鉢のような若い
選手をまとめられるのは、小笠原をおいて他にはいない。
大宮はチーム全体として何をしたいのか全く見えず、アントラーズ以上に問題だらけで、選手全員が迷っているように見える。
そんな中、途中から入ったラファエルが素晴らしい個人技で、山村を置き去りにして、あわやゴールというシーンを作った。
まさに一撃必殺の、「殺し屋」的なプレーにはうならされた。
昨日、ピンキーとキラーズの「恋の季節」を紹介したら、作詞をした岩谷時子が作った、「岩谷時子賞」というのを由紀さおり
が今日受賞したというニュースを聞いて驚いた。岩谷時子はまじめな音楽?の作詞もたくさんしているが、1970年のNHK全
国学校音楽コンクールの課題曲、「空がこんなに青いとは」はその代表的な曲だ。これは本当に素晴らしい詞と音楽で、当時たぶ
んまだ小学生か中学生だった私も、この音楽を鮮烈に覚えている。
You Tubeの二つ目は、昨年の大震災直後の、2011年3月17日に、駒井ゆりこという女性が、たぶんやむにやまれず、自宅
で作った動画だ。あのような状況で、この人がこの作品を選んで、心を込めて歌っているということ自体に深い感動を覚える。被
災地でこの動画を見た人がいたとすれば、勇気付けられたことだろう。音楽の力のすごさを感じさせる動画だ。
山村 「柴崎さん、怪我大丈夫っすか?」
柴崎 「ううううう。今日は厄日だった・・・・」
山村 「光星学院、いいチームでしたね!」
柴崎 「もっと手堅い野球すれば、あと二点は取れてたよな」
山村 「でも9番までせこいバントなんか全然する気なくって、藤村君に真っ向勝負してたのは良かったすよ!」
柴崎 「マジで言ってる?」
山村 「マジっすよ!何で送りバントしないのかって思いましたけど、あれが光星の野球なんだって思いました」
柴崎 「五回が惜しかったね・・・・。でも藤村君から12安打はたいしたもんだ」
山村 「お互いに全然逃げないのが、見てて気持ちよかったっすよ」
柴崎 「梅鉢はどうしてたの?」
山村 「試合が終わったら一人で部屋で泣いてました」
柴崎 「ほんとかよ。こっちはショックで落ち込んで、怪我までしちゃって、最悪」
山村 「でも試合には勝ったし。川澄さんから返事も来たし・・・・・」
柴崎 「えええ!!!何?川澄さんの返事って何だよ」
山村 「あれ!さっき梅鉢さんが、柴崎に川澄さんから返事が来たようだって言ってましたよ」
柴崎 「おいおい、その返事、どこ行ったの?」
山村 「梅鉢さんが持って行ったみたいですよ」
柴崎 「・・・・・・・」
山村 「それで今日のプレーはなんか余裕なかったんすかね」
柴崎 「俺は余裕どころじゃなかったんだよ!光星は負けるし、怪我はするし」
山村 「もっと早く手紙のこと教えれば良かったっすね・・・・」
柴崎、笑いながら、ひとり部屋の中を駆け回っている。
山村 「あれ?怪我はどうなったんですか?」
柴崎 「もう、治った」
山村 「別の病気の方は治ってないでしょう。重症みたいですから・・・・」