将棋とサッカーの関係というとありそうでないような感じだが、羽生善治の本はためになる。
最近、かなり売れたらしい「決断力」(角川ONEテーマ21)という本で羽生はこう言っている。
「勝つのは一点差でいい。五点も十点も大差をつけて勝つ必要はない。常にギリギリの勝ちを目指しているほうがむしろ確実性が高くなる
と思っている」
アントラーズの強い時は確かに一点差で勝つ試合が多かったように思う。一点先制してしまえば、勝てるというくらい守りが堅かった。今、
そういうサッカーをしているのはベガルタ仙台だろう。このあいだのセレッソ戦のように、二点取られて三点取り返すというのは、見ているほう
は興奮して楽しいが、そういうサッカーはアントラーズのサッカーではない。ガンバのサッカーは三点取られたら、四点取ればいいというサ
ッカーだと思う。
今日の茨城新聞を見たら、先週のセレッソ戦について、岩政選手がこう言ったという。「ああいう勝ち方がいいとは誰一人思っていない。
できていないことが多すぎる」。小笠原選手も同様のコメントだ。「先制して追加点を入れて突き放して勝つのが一番。強いアントラーズには
それができた。前のような勝ち方ができるまで努力しないと」と。
サッカーでも将棋でも大差で勝つのは面白くない。ギリギリのところで勝つのが面白いのだ。強いチームにはそれができる。優勝した時
のグランパスはそういうサッカーをしていた。
羽生はこの本で面白いことを言っている。
「見た目にはかなり危険でも、読みきっていれば怖くない。剣豪の勝負でも、お互いの斬り合いで、相手の刀の切っ先が鼻先一センチの
ところをかすめていっても、読みきっていれば大丈夫だ。逆に相手になにもさせたくないからと距離を十分に置いていると、相手が鋭く踏み
込んできたときに受けに回ってしまう。逆転を許すことになる。将棋では自分から踏み込むことは勝負を決める大きな要素である」
前に進むと危険が増すから下がりたいような時に、一歩下がっても状況は変わらない。むしろ相手は一歩間合いをつめてくるので、下が
れば下がるほど、状況は悪くなることが多い。そういう時は、むしろ「私を斬ってください」くらいの気持ちで、相手に首を差し出すくらいの勇
気が必要だというのだ。
もちろん将棋とサッカーは違うが、戦いにおいてはリスクはつきものだ。羽生は、「積極的にリスクを背負っていくことが、未来のリスクを
最小限にする」と言っている。決断とリスクは常にワンセットになっているものだが、そのリスクを背負う気持ちの人がいない集団は育って
いかないというのだ。
アントラーズは守備が最強の時も、完全に引いてしまって、守ることに専念した試合はほとんどみたことがない。相手がドン引きして攻め
あぐねて、カウンターで負けたことはずいぶんあったが。基本的はアントラーズは長期的なヴィジョンを持ちながらも、リスクを恐れないで
相手に向かっていくタイプのチームだと思う。その姿勢がタイトルの多さにつながっている要因の一つだろう。若い選手が多くなってきた
今、失敗を恐れることなく、「相手に首を差し出す」くらいの気持ちで向かって行って欲しいものだ。
最近のガンバについてよく知らないが、攻撃の起点になる遠藤と明神をどう抑えるかが、ポイントの一つになると思う。前節やや不調だっ
た山村と、前半で交代した梅鉢にはそのあたりをしっかりがんばってもらいたい。あとは、ラフィーニャを自由にさせないことくらいしか、対策
は思いつかないのだが・・・・・。ガンバは先制して勢いが付くと、どんどん調子に乗ってくるタイプなので、やはり先制点が欲しい。
早めに先制点を取って、突き放して、戦闘意欲をそぐような戦い方ができればいいと思う。個人的は柴崎、遠藤、そしてドゥトラに期待した
い。久しぶりに中田の復活も期待できるかもしれない一戦だ。
イギリスのロックバンド、キング・クリムゾンのロバート・フィリップと、ブライアン・イーノの1975年のコラボレーションのアルバムから。LP
の解説には、ここには、二人の東洋思想への傾倒が見られるという。
「全宇宙というのは不定のものであり、予測されたものではない。またクリエイティブなものはすべて不確定である」とフィリップが言うよう
に、1970年代のロックのメインストリームとは、違った位置で、ロック音楽に霊的な精神的な体験と、東洋思想への指向を見ることができ
る音楽になっている。
確かにサッカーでも最高レベルになると、実にクリエリティブで次の瞬間に何が起こるか予測がつかないような、芸術的なものになってい
く。そういう時はサッカー選手はスポーツ選手であると同時に、アーティストにも近いと思う。
イギリスばかり、それもやや難解な音楽が続いてしまっています。
またポップな音楽も増えてきますので、よろしくお願いします。
明日のガンバ戦は、何としても勝って、上位浮上への道を進んで行きたいものです。
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