映画『天才マックスの世界』

2012年02月13日 | 映画の感想

監督 ウェス・アンダーソン
ジェイソン・シュワルツマン、ビル・マーレイ、オリヴィア・ウィリアムズ、シーモア・カッセル、ブライアン・コックス、メイソン・ギャンブル、サラ・タナカ、スティーヴン・マッコール、ルーク・ウィルソン、コニー・ニールセン、アンドリュー・ウィルソン
ラッシュモア校に通う少年マックスは、人並み外れた才能を持ちながらも落第を繰り返す落ちこぼれ。だがそんな彼が学園の美人教師に恋に落ちたことから奇想天外なドラマが始まって行く…。巨匠コッポラの甥っ子ジェイソン・シュワルツマンの存在感、一世一代の名演を見せるビル・マーレイ、登場人物の心象風景を音楽に託した斬新な演出、と見所満点の刺激的な一作だ。

★★★★☆
ウェス・アンダーソン監督の映画は刺激的だ。エゴが強くて実に生々しい登場人物たちの感情が実にリアル。それでいてコメディ映画なのだ。どこか『ガープの世界』みたいな、ジョン・アーヴィングの小説の映画に似た雰囲気もある。この『天才マックスの世界』は、ジャンルとしては青春コメディ映画ってことになるんだろう。でも笑わせようというドタバタは一切ない。心を揺さぶってやろうというあざとさもない。生々しくもヘンテコな人物たちが絡み合い始めて、何が起きるやら起きないやらをただただ傍観してしまいたくなる。言ってみれば、すかし技の連続なんだけど、そのすかしっぷりのセンスが実にいい。木箱いっぱいの爆薬を準備して、凶暴な学生を雇った上でのクライマックスの、すかし宙返りみたいな終わり方なんて最高としか言いようがない。邦画でやたら増えてきた脱力系にも通じるものがあるけど、根本的な違いは作り込みの凄さ。脱力系邦画がヘタウマ漫画路線に近い演出なのに対して、ウェス・アンダーソンは画面構成から舞台装置から全部緻密に満たしきらないといられない偏執的なこだわりを感じてしまう。そこが魅力なんじゃないだろうか。たぶん一ヶ月もすればストーリーなんて忘れてしまう。『ロイヤル・テネンバウムズ』と同じように。でもまたこの世界に浸りたいと思わせる魅力たっぷりの映画だ。

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