映画『サンセット大通り』

2012年06月01日 | 映画の感想



監督: ビリー・ワイルダー
音楽: フランツ・ワックスマン
グロリア・スワンソン ノーマ・デズモンド
ウィリアム・ホールデン ジョー・ギリス
エリッヒ・フォン・シュトロハイム マックス
ナンシー・オルソン ベティ・シェーファー
フレッド・クラーク、ジャック・ウェッブ、ロイド・ガフ、ヘッダ・ホッパー、バスター・キートン、セシル・B・デミル、H・B・ワーナー、レイ・エヴァンス、ジェイ・リヴィングストーン
ある日、借金取りに追われていた売れない脚本家のジョーは、サンセット大通りに建つ一軒の寂れた邸宅に逃げ込む。そこは、サイレント映画時代の伝説的女優ノーマ・デズモンドの住まいだった。そして、かつての栄光を取り戻すべく銀幕への復帰を目指す彼女は、ジョーに主演作品の脚本を住み込みで執筆させることに。寝食にありつけるとあってこの依頼を引き受けたジョー。しかし、仕事はおろか私生活まで束縛され、ノーマへの不満が募っていく。やがて、ノーマが未だ復帰の機会を得られない中、同じ脚本畑のベティに癒しを求めていくジョーだったが…。
 豪邸で隠遁生活を送るサイレント映画時代の伝説的女優と、彼女が自身のために書いたシナリオの修正をまかされた売れない脚本家。ジゴロ気取りで邸宅での日々を過ごしていた脚本家が、仕事だけでなく私生活すら束縛される事に怒りを感じ始めた時、物語は悲劇を迎える。過去の栄光だけを糧として生きる忘れられたスター、ノーマ・デスモンドや彼女の召使、脚本家と恋に落ちる女性などの人物設定を始めとして、オスカーに輝いた脚本の構成は素晴らしく、ハリウッドの光と影をB・ワイルダーが見事に活写した傑作。ノーマに扮したG・スワンソンのラスト・シーンに向けて次第にテンションの上がって行く鬼気迫る芝居も凄い。
★★★★☆
デヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』の下敷きになったとか、多くの登場人物が本人役、または本人をなぞらえて作られているとか、そういう一切の予備知識なしに先日来のビリー・ワイルダー特集ってことで鑑賞した。最初っから面白いじゃないか。プールに浮かんだ男の死体の語りで始まるんだから。しかもプールの底から見上げたカメラアングルが凄い。水面の向こうに揺らめいて、死体を見下ろす警官たちが見えるんだから。いざストーリーが始まると、アッチャー、ボクの嫌いなタイプの映画じゃないか。往年のハリウッド女優が過去の名声にすがりつこうとしつつ酒やらドラッグやらに溺れて破滅していくのを描いた陰陰滅滅の内幕もの映画。なんか好きになれないんだよなぁ。と思いつつ見ていたんだが、ウィリアム・ホールデンがいかにしてプールに浮かぶのか?最早過去の栄光であることを隠し通してきたんだがいつバレちゃうのか?という部分がやはり気になって作劇の巧さに乗せられて見入ってしまう。トランプゲーム場面で出てくる老人がバスター・キートンであることに気がつかなかったけれど、勿体ぶったカメラ回しにオヤ?何者?と、見終わった後で調べたくなった。セシル・B・デミル監督にいたっては本人が本人役で演技している。このあたり、虚と実が入り混じった不思議感覚がした。ラストでカメラに囲まれて階段を降りるシーンなんて、黒澤明の『生きる』の階段のシーン同様に震えた。だが、この映画、知れば知るほど凄い。召使マックス役のエリッヒ・フォン・シュトロハイムと、グロリア・スワンソンの間にあった確執を知って、劇中、屋敷で上映される映画がシュトロハイムによるいわくつきの映画だと知るとなおさらだ。こんなふうに映画の世界と映画の作り手がリンクしている作品が存在しているのに驚いた。斬新な脚本の映画を作りたいという職人ビリー・ワイルダーの執念がなければ作れなかった映画だろう。最後にこの映画、実に画質がいい。『ローマの休日』なんかもスゴイ綺麗にリマスターされているけれど、この映画も実に美しく、すぐ目の前に映画空間が存在するように感じられた。『情婦』あたりもこんくらい映像が美しいと嬉しいんだけど。


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2 コメント

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名画ってのはこれのことですな (ヴァッキーノ)
2012-06-01 21:27:33
いやあ、この映画、ボクも好きなんですよ。
もう、上手い!
上手いんですよね。
ビデオテープ時代に観たので、画質は良くなかったッスけど。
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ヴァッキーノさんへ (矢菱虎犇)
2012-06-02 00:18:55
ヴァッキーノさん、お好きでしたか、この映画。
ボクはこの映画を見て、まず思ったのは手塚治虫なんです。どの作品とも覚えていないけど、たぶんブラックジャックなどで、往年の女優が整形をして若さをとりもどそうとするみたいなストーリー。明らかにこの映画を下敷きにしているなぁって。いろんなアーティストに派生していく・・・これはもう一種の文化ってヤツですねぇ。
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