ガイ者は、応接間のクリスタル灰皿で後頭部を叩き割られて絶命していた。
ガイ者の名は、権藤三郎。悪徳商法で荒稼ぎしていた権藤に怨みを抱く者は多かった。
灰皿から指紋は検出されなかった。
唯一の手がかりは、権藤が手にしていた、高崎屋のお品書きである。
高崎屋といえば、地元では有名なカツ丼専門店だ。
その高崎屋のお品書きを左手でつかみ、
右手でおしながきのカツ丼ハーフを指さし、絶命していたのである。
新人の捜査官新田「犯人が立ち去ったあと、少しの間、意識が戻ったのですね」
古参の警部補古井「うむ。しかし何故にカツ丼ハーフなのか。わかるか?新田」
新田「死亡推定時刻はお昼前。出前をとろうとしたんではないでしょうか?頭が痛いので、ハーフで。どうです?ボクの推理」
古井「おまえ、よく警官になれたなあ。これはな、ダイイングメッセージだ」
新田「応接間なのに?」
古井「新田、高崎屋のカツ丼、食ったことあるか?」
新田「もちろん。サクサク肉厚の豚カツ、甘辛つゆがしみこんで美味いのなんのって。ボクならハーフじゃ満足できないなあ。でも頭割れてたらやっぱハーフかなあ」
そのとき、権藤の使用人が呼ばれてきた。
古井「君、名前は?」
使用人「ま、前田健一です」
古井「今日、権藤さんは誰かと会う約束をしていたか?」
前田「それはわかりかねます。権藤さまは、来客の接待一切をご自分でされておりまして・・・」
古井「フフフフフ。前田さん、犯人はあなただ」
前田「何をいきなり・・・」
古井「まさか権藤さんがダイイングメッセージを残すとは思わなかったようだな」
・・・いきなり犯人指摘の急展開!古井警部補は、どうやって犯人は前田だとわかったのか?
シンキング・タ~イム!!
新田「古井さん、そろそろ教えてくださいよ」
古井「権藤さんが指さしていたのは、カツ丼のハーフ、つまり半人前だ!」
新田「半人前だ・・・はんにんまえだ・・・犯人前田・・・ややや!!」
使用人の前田がその場に崩れた。
「まちがいありません・・・権藤を殺したのはわたしです・・・でも、権藤自身は知らなかったが彼は不治の病に冒され余命いくばくもなかったのです。わたしが手を下さなくても早晩・・・」
古井「権藤さんは知っていたよ」
前田「え!?」
古井「死、見込んでいたんだよ、権藤さんは。高崎屋のカツ丼に味がし、みこんでいるようにね」
前田「まいりましたあっ」
犯人前田は、頭を抱え嗚咽をあげ続けた。
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