未来。
永久機関同様、絶対不可能と言われていたタイムマシンが完成した。
時間旅行理論を生み出し、自らマシンの開発をも成し遂げたのは、日本人、万城目博士である。
「博士、コングラチュレーション!」
「イヤ~ありがと、ありがと」
万城目博士が白いヒゲを指先でしごいた。
記者会見場は、世界各国の記者で溢れんばかりだった。
その会場ステージ中央にはマシンが鎮座している。
生け簀のような・・・TV番組の熱湯風呂のような・・・。
「これこそ人類初のタイムマシン、なづけてマンボウ№5!」
どよめく記者団。そして会場に鳴り響く、マンボのリズム。
「早速、時間旅行をご覧いただこう」
舞台袖から現れる、水着美女。いそいそと入湯・・・う~ん、これはその手のショーなのか?
博士が装置下部のボタンを押す。
するとどうだ、水着美女は水槽の中で見る見るマンボウへと変身してしまったではないか。
博士が次のボタンを押すと、水槽の中のマンボウの姿が忽然と消えた。
「博士、これは一体・・・?」
「美女はマンボウとなって時間旅行の旅へ出掛けたんじゃよ。時間旅行できるのは、なぜかマンボウだけ。人間はおろか他の動物実験もすべて失敗。そこで人間をマンボウに変身させることで時間旅行を可能にしたんじゃ!」
会場割れんばかりの拍手。一人の記者が質問する。
「確か、博士の理論では、タイムマシンが作られた時点が起点となるため、それより過去へ戻ることは不可能でしたよね?」
「そこなんじゃ。じゃが実際にやってみるとなぜか過去にも送れるんじゃ。そこがまったくもって謎・・・」
博士は、海水だけが満たされたマンボウ№5をじっと見つめるのだった。
・・・と、ここまで書いたところで、矢菱虎犇はキーボードを叩く手を止めた。
画面を見つめつつ、ボソリ。
「さ~て、どんなオチにするかなあ」
そう、『マンボウ№5』なんて駄洒落タイトルだけで書きはじめたものの、オチまで考えていなかったのだ。
マンボウのように虚ろな目でモニター画面をジ~ッ・・・・・・・・・ガクッ。
おっと、ついつい意識が遠のいて。
よ~し、もうやめやめっ。明日になったらなんか思いつくかもよってなわけで、とっとと寝てしまった。
そして翌朝。
朝刊をとろうと表の戸を開けた途端、プ~ンと強烈な魚の腐臭。
見れば、うちの前の路地に大きなマンボウの死体がゴロリ、ゴロリ。
な、なんなんだあ?
慌ててテレビをつけて、さらに驚いた。
昨夜から日本中、いや世界中でマンボウが大発生、海を山を街を道路を埋めつくしているらしい。
「え~!いったいぜんたい誰のしわざだあ?」
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