昼休み・生徒相談室
「矢菱くん、先生はね、叱ろうってわけじゃないの。第二次性徴期の男子がソレに夢中になってもなんの不思議もないわ。むしろ健全な発達よ。だから、決して罪悪感はもってほしくないの、アレに」
「先生、はっきり言ってください、オナニーと!!罪悪感?馬鹿馬鹿しい。ボクはオナニーに誇りをもってます。ゆくゆくはプロだって視野に入れてますよ」
「プロ?矢菱くん、オナニーにプロはないのよ。・・・ま、まさか、男優に?」
「わかってないなあ。男優なんて女優や監督に気を遣うばっかでしょ?ボクはね、ひとりでビデオを鑑賞して思う存分オナニーしたいんです。わかんないかなあ、先生には」
「いいかげんにしなさいっ。矢菱くん、放課後も相談室にいらっしゃい。家の人にも来ていただきますからね」
「望むところです。父にも母にも毎日見てもらってますよ、ボクのオナニー」
三十分前・給食時間の教室
「オレさあ昨日、オナニーやりまくっちゃってさあ。一晩で6本だよ、6本」
教室中、ワイワイ給食を食べていたのに、ボクがオナニーの話をしているうちに水を打ったようにシーン。
な、なんだよ。給食時間、オナニーの話しちゃ悪いのかよっ。
独身女教師、高橋先生が咳払いをした。
「矢菱くん、お上品な話題をしてくださいね」
お上品?じゃあオナニーの話題がお下品ってえの?納得できない!
女子全員の視線が冷たい。
おまえたち、ボクのオナニーのすごさがわかってないんだ!
ボクのオナニーを見たら、あこがれの桜庭さんだって目を潤ませて、ボクを「オナニーさん」って呼ぶようになるぜ。
ボクは女子どもに向かって叫んだ。
「オレのオナニー、見せてやる!」
先生も叫んだ。
「矢菱くん、相談室へ!!」
一ヶ月前・益田くんのお兄さんの部屋
友だちの益田くんちに遊びに行って、益田くんのお兄さんの部屋に入った。
部屋の壁にも天井にも映画のポスターがびっしり。
外国の俳優の名前、監督の名前、映画の専門用語・・・お兄さんの話すカタカナ言葉がすこぶるカッコイイ。ボクはそれを聞きながら丸覚えしようとする。
それに、お兄さんは、ネットで映画評論を毎晩何本もかいてるんだとか。
「ボクもかいてみたいなあ、映画評論」
「やってみるといいよ、矢菱くん。でも映画評論ってさあ、オナニーなんだよね・・・」
そのあとの話なんか聞いちゃいない。
映画評論は英語でオナニー・・・映画評論はオナニー・・・オナニー・・・
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