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金庸の武侠小説 (2)

2004-12-23 | Asia 「圓」な旅
査良というジャーナリストの人生の中で、金庸という作家の時間は、まるで計算されたかのように始まり、断筆とともに終わります。31歳から48歳という限られた時間に集中して膨大な作品が書かれたのです。Tomotubby は、金庸とほぼ同世代で、1970年に45歳で自ら命を絶った天才作家、三島由紀夫が5年刻みで人生設計をして膨大な著作を遺したことを思い浮かべました。

金庸は先述したように長編12作、短編3作を書き上げました。どうやら最後の短編で古典を下敷きにした「越女剣」はさほど重要な作品ではなかったようです。他の作品は時代設定が宋以降であるのに対して「越女剣」だけは戦国時代を舞台としています。金庸が最後の長編「鹿鼎記」のあとがきで披露しているのですが、「越女剣」を除いた著書名の最初の文字を組み合わせて次のような対聯を作ったのです。

飛雪連天射白鹿
笑書神侠倚碧鴛

偶然にできたにしては出来すぎです。早い段階から考えて題名を決めていたに違いません。ここに含まれた二つの短編小説の題名が「白馬嘯西風」と「鴛鴦刀」で、両方とも1961年に書き上げられています。両方が白鹿と碧鴛という対を成した動物の名前を決めるものであることも、金庸がこの対聯を作るために付け加えたのではないかと思えてきます。

長編10作品に目を移すと以下の通り。発表順で、数字は日本訳の巻数で、分量の参考にしてください。舞台となった時代についても書きました(「笑傲江湖」は、征服王朝期ではなさそうなので恐らくは明、「連城訣」と「侠客行」については時代背景が明らかにされていない)。

「書剣恩仇録」④清
「碧血剣」③明末
「雪山飛狐」①清
「射英雄伝」⑤南宋
「神侠侶」⑤南宋末
「飛狐外伝」③清
「倚天屠龍記」⑤元末
「天龍八部」⑧北宋
「連城訣」②
「侠客行」③
「笑傲江湖」⑦
「鹿鼎記」⑧清

このうち「射英雄伝」「神侠侶」「倚天屠龍記」の三作は分量もほぼ近く、俗に「射三部作」と呼ばれる連作で、登場人物も共通しています。

「飛狐外伝」は「雪山飛狐」の後で書かれていますが、「飛狐外伝」の主人公の少年時代を描く前伝という位置づけです。またこの二作と「碧血剣」「鹿鼎記」には闖王・李自成が関わり、「鹿鼎記」には「碧血剣」に登場する人物も登場します。

また康煕帝時代を舞台とした「鹿鼎記」に登場する反清の秘密結社「天地会」は、乾隆帝時代を舞台とした「書剣恩仇録」に登場する「紅花会」に通じています。この二作は、金庸の最初の作品と最後の作品にあたりますが、主人公のキャラクターや人生観が全く正反対で読み比べると興味深いと思います。

金庸は「越女剣」発表後すぐの1970年3月から1980年まで、年齢にして46歳から56歳という次の10年をかけて第一の修訂の作業を行いました。その後、第二の修訂の作業に入り、80歳を迎えた2004年に終了したとのことです。

金庸という作家は、恐らくは非常に頭のいい人なのではないか、そうでないと、こうはいかないだろう。と思えるのです。

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