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雲のむこう、約束の場所

2010-01-24 09:36:00 | アニメ


2004年に公開された新海誠監督の第2作。
http://www.kumonomukou.com/top.html

新海監督の作品は、お互いに思い合う少年少女がどうにもならない運命の力で引き裂かれ、それでも、遠く離れた場所で、何年もかけて思いあう話が多い。
「ほしのこえ」は地上と宇宙に。
「秒速センチメートル」は、親の仕事の都合による転校という物理的な距離と、お互いの成長と言う精神的距離によって。
そして今回の「雲のむこう、約束の場所」は、少女の「目覚めることは世界の破滅につながると言う眠り」によって・・・。

今回もまた、監督の背景美術に魅せられてしまった。
緻密でリアルな背景でありながら、2次元的な登場人物たちの動画が重なっても、全く違和感を感じない。
同じ空間にちゃんと存在し、そのリアルな道具をその登場人物がちゃんと使っているように見えるのだ。
また、視点と言うか、カメラアングルとそのパースの正確さ、焦点の移動によるぼかしやピントの合わせ方など。背景と動画が全く分離していないのだ。その自然な表現は、新海監督の「色指定」のセンスと背景美術のパースペクティブの技術の高さ、絵画としての絵心の豊かさ、そして何より、それら総合的美術としてのアニメーションの完成度を求めるこだわりから来るものなのだろう。

そして今回、音楽の持つ存在感に心打たれた。
少女が眠りにつく前に少年達に弾いて聴かせたヴァイオリンの曲を、一人暮らしの東京の部屋で少年はひたすら練習し、3年後、約束の場所へ旅立つ前の晩に、眠りについている彼女のいる空間でその曲を弾くのを聞いて、その少年の一途さに心打たれる親友・・・。
音楽が「あの頃」に一気に連れ戻してくれる。
まさに、音楽は「人生の栞」だ。
その曲を聞いた時の空間の気温、風の匂い、日差しの柔らかさ、着ていた服の質感、肌のぬくもり、その時の自分の心情まで一瞬にして思い出せる。

少年・藤沢浩紀役の吉岡秀隆氏のインタヴューによると、
「新海監督は『声を当てるのではなく、普通に演技してください。後でこちらで調整しますから』と言ってくださったので、浩紀になりきった自分の「間」で自然に演技が出来た。
と語っていた。
これはすごいことだと思う。
いわゆる『アテレコ』や『アフレコ』というのは、すでに出来上がった映像を見て声を当てていくのだが、役者の声の演技に合わせて動画を作っていくのは大変なことだと思う。
ただの口パクではない。その声や口調や『間』に合った表情にまで影響がでてくるのだ。
でも、それだけのこだわりがあったからだろう、その演技は浩紀と見事にリンクしていてすごく自然に見ることが出来た。


順番的に、『ほしのこえ』『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』となるのだが、できれば、新作は『叶えられた初恋』と言うテーマでつくってほしいなぁ・・・。
『秒速5センチメートル』最終章は、現実的で切な過ぎるので・・・。

昨日、『アニメイト』に新海監督の背景美術画集『空の記憶』を捜しに行ったら、売り切れだったので、注文してきた。
彼の背景美術は、かつての背景マンとしての私の封印を解いてしまった。
その画集を手にしたとき、私は一体どうなってしまうのだろう。
今から胸が高鳴って仕様がない。


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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2010-02-11 00:11:51
まさに音楽は「こころのしおり」だ。
とても良い表現で感動しました
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