Q
私達の団地では集合ポストや駐車している車に対するいたずらが発生しています。被害にあっているのは特定の棟の住民の方です。
その棟の方から棟の中でBさんが多くの人とトラブルを起こしており、犯人はBさんに違いないから、Bさんの行動を監視するために、防犯カメラを設置して欲しいと言われています。偶々管理組合としても防犯カメラの導入については検討していたところですが、設置に際して注意すべき点はありますか。
A
プライバシー権や肖像権については最高裁判所は「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的な利益を有する」としつつ「ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、撮影の場所、撮影の範囲、撮影の態様、撮影の目的、撮影の必要性、撮影の画像の管理方法等諸般の事情を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決する」としています。
共用部分に設置する防犯カメラであっても、プライバシー侵害として許されない場合があります。
ところで、区分所有建物の共用部分に設置された防犯カメラがプライバシーを侵害するとしてカメラの撤去と損害賠償請求がなされた事件があります(東京地方裁判所平成27年11月5日判決)。
この事件の特徴的な点は設置された4台の防犯カメラの内1台についてプライバシーの侵害の程度が社会生活上受忍すべき限度を超えているとして、カメラの撤去と慰謝料10万円の支払いを認めつつ、3台についてはプライバシーの侵害の程度は社会生活上受忍すべき限度を超えていないとして、撤去請求と慰謝料を認めなかった点にあります。
撤去が認められた防犯カメラは、撮影の場所や範囲が特定の居住者の「外出や帰宅等という日常生活が常に把握されるような場所」であることを理由にプライバシーの侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えていると判断しています。
かかる観点から、例えば、防犯カメラの撮影範囲がBさんの玄関や居室のみを撮影対象とするようなものであればプライバシー侵害となる可能性は高いと思われます。
また、防犯カメラは、そもそも「防犯目的」で設置されるものです。特定の組合員や居住者を監視する目的で設置することは許されません。
撮影対象としてBさんの玄関とか居室が写っていなくとも、設置場所や撮影範囲からBさんの行動を監視することが目的であると認定されることになればプライバシーの侵害となり得ますから、設置場所や撮影対象については慎重に検討する必要があります。
なお、先に紹介した東京地裁の事件では監視カメラの設置について共用部分の変更として特別決議が必要なのか、共用部分の管理行為として普通決議で足りるのかについても争われていますが、管理行為に該当して普通決議で足りるとされています。
回答者
NPO日住協法律相談会
専門相談員 弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2017年9月掲載)
私達の団地では集合ポストや駐車している車に対するいたずらが発生しています。被害にあっているのは特定の棟の住民の方です。
その棟の方から棟の中でBさんが多くの人とトラブルを起こしており、犯人はBさんに違いないから、Bさんの行動を監視するために、防犯カメラを設置して欲しいと言われています。偶々管理組合としても防犯カメラの導入については検討していたところですが、設置に際して注意すべき点はありますか。
A
プライバシー権や肖像権については最高裁判所は「人は、みだりに自己の容ぼう等を撮影されないということについて法律上保護されるべき人格的な利益を有する」としつつ「ある者の容ぼう等をその承諾なく撮影することが不法行為法上違法となるかどうかは、撮影の場所、撮影の範囲、撮影の態様、撮影の目的、撮影の必要性、撮影の画像の管理方法等諸般の事情を総合考慮して、被撮影者の上記人格的利益の侵害が社会生活上受忍の限度を超えるものといえるかどうかを判断して決する」としています。
共用部分に設置する防犯カメラであっても、プライバシー侵害として許されない場合があります。
ところで、区分所有建物の共用部分に設置された防犯カメラがプライバシーを侵害するとしてカメラの撤去と損害賠償請求がなされた事件があります(東京地方裁判所平成27年11月5日判決)。
この事件の特徴的な点は設置された4台の防犯カメラの内1台についてプライバシーの侵害の程度が社会生活上受忍すべき限度を超えているとして、カメラの撤去と慰謝料10万円の支払いを認めつつ、3台についてはプライバシーの侵害の程度は社会生活上受忍すべき限度を超えていないとして、撤去請求と慰謝料を認めなかった点にあります。
撤去が認められた防犯カメラは、撮影の場所や範囲が特定の居住者の「外出や帰宅等という日常生活が常に把握されるような場所」であることを理由にプライバシーの侵害は社会生活上受忍すべき限度を超えていると判断しています。
かかる観点から、例えば、防犯カメラの撮影範囲がBさんの玄関や居室のみを撮影対象とするようなものであればプライバシー侵害となる可能性は高いと思われます。
また、防犯カメラは、そもそも「防犯目的」で設置されるものです。特定の組合員や居住者を監視する目的で設置することは許されません。
撮影対象としてBさんの玄関とか居室が写っていなくとも、設置場所や撮影範囲からBさんの行動を監視することが目的であると認定されることになればプライバシーの侵害となり得ますから、設置場所や撮影対象については慎重に検討する必要があります。
なお、先に紹介した東京地裁の事件では監視カメラの設置について共用部分の変更として特別決議が必要なのか、共用部分の管理行為として普通決議で足りるのかについても争われていますが、管理行為に該当して普通決議で足りるとされています。
回答者
NPO日住協法律相談会
専門相談員 弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2017年9月掲載)