マンション・メンテblog

集合住宅管理新聞「アメニティ」のブログです。工事業者募集やセミナーの案内などを随時掲載していきます。

集会室で新型コロナのクラスターが発生したら管理組合が責任を負うのか

2021-09-22 16:00:53 | マンションQ&A
 
 新型コロナウイルスの感染が拡大しています。私たちのマンションでは住民同士の集会室を利用したサークル活動が盛んです。もし、集会室を利用した居住者の間でクラスターが発生したら、管理組合が責任を負うことになりますか。責任が問われるのであれば、集会室の利用を禁止したいと思いますが、可能ですか。また、理事会も集会室を利用していますが、理事の中には感染が怖いと言うことで参加を渋る方もいて、定足数を満たすことが難しくなっています。これでは理事会での決議ができませんが、何か良い方法がないでしょうか。


 集会室は共用部分ですから、管理組合としては一定の感染対策を講じる必要があります。即ち、人数制限、時間制限、利用者のマスク着用、ソーシャルディスタンスの確保、アクリル板等の設置による飛沫対策、換気の実施、利用時の検温、手や指の消毒等通常求められる感染対策は行う必要があります。

 そして、このような感染対策を行っている限り(あるいは、行うことを誓約させて利用を認めたが、利用者がこれを守らなかった場合)、仮にクラスターが発生しても管理組合が責任を負うことはないと考えます。

 変異株の影響から一般的な感染対策を行ってもクラスターが発生する可能性は否定できません。このリスクを回避するために、集会室の利用を禁止することは可能でしょうか。筆者としては、緊急事態宣言が出ている期間については集会室の利用を全面的に禁止することも許されると考えます(本来組合員は集会室を利用する権利を有していること、集会室を利用した住民間の交流は大切なことなので、全面的な禁止は感染状況が深刻である場合に限定すべきであると考えています)。

 緊急事態宣言期間中は全面的に禁止する場合ですが、総会決議まではする必要がありません。集会所の使用細則等で利用の可否について、理事長が判断するといった規定があれば、この規定に基づいて理事長が禁止することはできると考えられますが、全面的な禁止は組合員に対する相応の制限となりますから理事会で審議して決議しておくことが望ましいと思います。

 標準管理規約では「理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する。」と規定しています。

 また、総会とは異なり、代理人や書面による議決権行使を認める規定はないことが通常です。そうすると、例えば、理事が10名であれば5名が出席しないと理事会を開くことができません。もっとも、理事会は参加者が同じ場所に一同に集まることまでは要求されていません。WEBシステムを利用してリモートで理事会を開催することは可能ですし、コロナ禍では積極的に活用して良いと思います。筆者が顧問をしている管理組合でも集会室には理事長、副理事長と議事録作成を補助する者の数名程度が集まり、他の理事はリモート参加で理事会を開催している実例はあります。集会室等を利用しない完全なリモートでの実施も可能です。なお、リモートで参加する場合は、外部から内容を聞かれないように自室や個室のコアワークスペース等から参加するなどの配慮は必要です。
回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年9月号掲載)

集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
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法律Q&A 上階からの水漏れを理由にその期間の管理費等の支払拒否をするAさん

2021-07-21 15:08:40 | マンションQ&A
 
 Aさんが住む居室の天井から水漏れがありました。管理組合で原因を調査したところ、上階のBさんの浴室の老朽化が原因とわかりました。そこでBさんは速やかに応急工事を行い、水漏れは止まりました。しかしAさんは、水漏れが始まってから収まるまでの間の管理費と修繕積立金の支払いを拒絶しており、Bさんが負担すべきだと主張しています。応急工事で水漏れが収まったあとに発生した管理費等は、Aさんは毎月支払っていますし、特にお金に困っていることはないようです。管理組合として、どう対応すればよいでしょうか?

 
 管理費等の負担は、区分所有者の最低限の義務といわれています(東京地裁平成19年11月14日判決/判例タイムズ1288号286頁)。この費用がなければ、マンションや団地を維持管理していくことができないからです。区分所有法19条は、区分所有者が、共用部分の負担を負わなければならないことを定め、標準管理規約(単棟型)25条は、区分所有者が管理費等を管理組合に納入しなければならないと定めています。

 このように、管理費等は極めて重要な管理組合の財源ですから、たとえある区分所有者が、管理組合に対して債権を持っていたとしても、これと管理費等の負担を相殺して、その支払いを拒むことはできないとされています(東京高裁平成9年10月15日判決/判例時報1643号150頁)。

 本件では、そもそもAさんは、管理組合に対して債権を有していません。水漏れの原因は、Bさんの専有部分である浴室の老朽化ですので、水漏れにより受けた損害は、Bさんに賠償して貰うのが筋であり、管理組合は何ら責任を負いません。つまり、仮に管理組合に対して債権を有している場合ですら、管理費等との負担と相殺することは認められていないのですから、いわんや、管理組合に対して債権を有していないAさんは、水漏れを原因として、管理費等の支払いを拒むことはできません。

 私は、ちょうど昨年の7月号の当欄で、管理費等の滞納問題は、そもそも、管理組合と組合員の内部的な問題で、本来的には敵対関係にはないはずであるから、督促をする際も、一定程度、組合員の実情を踏まえた上で対応していくのが望ましい、と個人的な見解を書きました。滞納者の経済状況の悪化が滞納の原因である場合は、滞納解決策を、管理組合と滞納者で協議していくことが重要であるとも書きました。

 では、本件ではどうでしょうか。Aさんの主張は、全く法的な根拠のない、単なる言いがかりに過ぎません。しかも管理費等が支払えないほどの経済状況の悪化もうかがえません。であれば、管理組合としては、区分所有者の最低限の義務を果たしてもらうべく、毅然とした態度で臨むべきです。具体的には、Aさんとの協議にあまり時間をかけず、早々に管理費等請求の訴訟を提起すべきです。裁判で和解するとしても、分割払や遅延損害金の免除など、滞納者が支払いしやすくなるために管理組合側が度々行う譲歩は、本件では必要ないと思います。

回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・内藤 太郎
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年7月号掲載)

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法律Q&A 駐車場に長期不法駐車をする居住者に違約金をもとめるには…

2021-06-18 11:57:03 | マンションQ&A
駐車場に長期不法駐車をするAさん
使用細則に違約金の規定を定めたいが…


 
 私達の団地内にある来客用の駐車場に組合員のAさん名義の車が長期間にわたり不法に駐車されています。管理組合が撤去するためには費用がかかるので駐車場使用細則を改訂して、使用細則に違反する駐車に対しては1日あたり5000円の違約金を支払う規定を定めようと考えています。何か問題がありますか。

 
 リゾートマンションの事案ですが、本件と同様の紛争が争われた裁判例(東京地方裁判所平成30年3月13日判決)があります。この裁判で被告は①管理規約に違反する行為に対して違約金を課すことは管理規約に規定がない限りできない(使用細則ではできない)②区分所有法や本件管理規約には「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その者の承諾を得なければならない」と規定しているところ、本件使用細則の改訂は被告の車両のみを対象としており、被告に不利益を課すものであり、被告の承諾が必要であるが、被告は承諾していない③1日5000円という違約金は著しく高額であり、公序良俗に反して無効であると反論しました。

 まず、①について、裁判所は「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項のうちには、区分所有法が直接に定め規約の設定を許さないもの及び規約によってのみ定めることができるものがあるが(区分所有法30条1項参照)、本件条項が規定する本件駐車場内の車検切れの放置自動車に対する違約金の設定は、このどちらにも該当しないというべきであり、本件駐車場内の車検切れの放置自動車に対する違約金の設定は、規約の委任を受けた細則又は規約の委任のない細則において、行うことができる」と判断しました。

 次に、②については「特別の影響とは、規約の設定、変更、廃止の必要性及び合理性と、これによって受ける一部の区分所有者の不利益を比較して、一部の区分所有者が受忍すべき程度を超える不利益を受けると認められる場合であると解され、この点は、使用細則の設定、変更、廃止においても同じである」「本件使用細則の改訂の必要性は高く、その内容の合理性についても金額については検討の余地があるが、一応の合理性は認められる」としつつ、後述するように違約金は1日2500円が相当であるとして、その金額の範囲内であれば、「本件改訂の必要性及び合理性と、これによって受ける被告の不利益を比較して、被告が受忍すべき程度を超える不利益を受けるとまでは認められない。

 したがって、本件改訂は一部の区分所有者に特別の影響を及ぼすものとは認められず、本件改訂について被告の承諾は要しない。」と判断しました。

 さらに、③については「本件駐車場を不法に占有することにより生じる損害額に比べて相当高額な違約金額の設定も許容されると解される。一方、本件自動車が本件駐車場に放置されたことにより重大な具体的損害が生じたことを認めるに足りる証拠はなく、また、証拠によれば、本件マンションの屋内駐車場の最も高額な使用料が月額7500円であることが認められ、これらの各事情を斟酌すると、区分所有者による自治の尊重という観点を踏まえても、日額5000円(月額約15万円)という違約金額は高額に過ぎ、相当性を欠くといわざるを得ず、本件条項の違約金額のうち日額2500円を超える部分は民法90条に反して無効である」と判断しました。

 以上から、使用細則で違約金を定めることはできますが、違約金の金額については高額すぎる場合は無効と判断される余地がありますので、注意が必要です。

回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年5月号掲載)

集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
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マンション建物Q&A 「大規模修繕の修繕周期を18年に出来るのか?」

2021-04-13 14:01:53 | マンションQ&A

 最近新聞でマンションの大規模修繕周期を12年毎から18年毎にする修繕サービスを管理会社が発表していましたが、どの様な方法で修繕周期を延ばすことが可能なのでしょうか?その管理会社に頼まないと出来ないのでしょうか?修繕周期を延ばすことにより修繕積立金を軽減できるのでしょうか?


 大規模修繕工事の周期は、2008年に国土交通省監修で工学系大学教授やマンション管理組合支援団体・建築家団体・マンション管理業団体等が意見を出し合い編纂した『長期修繕計画標準様式・作成のガイドライン』で大規模修繕工事の周期を12年とされ、12年周期を採用している事例多く、また適正であるとの判断されたもと思います。これは、コンクリート躯体のひび割れや錆び鉄筋露出現象などが目立ち始め、外壁塗装などが退色や汚染・剥離など劣化してくる時期が12年目頃であることから採用された周期と考えられます。

 では、12年周期を18年周期にするにはどのようにすれば良いかですが、18年位耐候性のある外装の主要材料である塗装材やシーリング材・防水材を使うことです。外壁塗装材はフッ素樹脂系塗料を使えば18年位耐用します。シーリング材は表面を塗装してやるかシリル化アクリレート系シーリングは塗装無しでも18年位耐用するとされています。防水材については、屋根防水等は従来から適切に施工をすれば20~25年位耐用します(途中部分補修や保護とそうのの塗替えは必要ですが)。また、バルコニー床等のウレタン塗膜の簡易防水も保護塗装をフッ素樹脂系を使用し、適切な塗膜厚を確保すれば18年位耐用します。

 しかし、塗装が18年の耐候性があっても、コンクリート躯体にひび割れが発生すると塗装もひび割れてしまい、早めの修繕が必要になってしまいます。そこで塗装表面にひび割れが伝わらないように、塗装の下塗りをひび割れに追従する弾性のある材料を使います。尚、高弾性塗料は膨れ事故が起きやすい材料なので、注意が必要です。

 これらの高耐候建材や高弾性建材を駆使し、修繕周期を延伸の手法があります。適正な材料を選定(設計)し、適正な工事をする工事会社であれば、どこに頼んでも可能な手法です。

 修繕周期12年を18年にすると、単純計算で修繕費が12/18=0・66倍となり、それに高耐候・高弾性材料を採用した工事費が一般材料での工事費の1・5倍以下であれば修繕積立金の軽減になります。

 しかし、この手法は全ての建物に有効なわけではありません。外壁がタイル仕上のマンションでは、18年間タイルが割れたり浮いたりするのを防止するのは困難であり、東京都内では10年毎に外壁タイルの落下危険部の全面打検(あるいは赤外線線探査)を条例で義務付けています。調査結果著しくタイルに割れや浮きがある場合は、放置できませんので、18年経過前に大規模修繕工事を行う事になります。

 よって、そのマンションに応じて、高耐久建材使用し、経年による経過を確認しながら、大規模修繕の修繕周期の延伸を試行して見ることが望まれます。

【回答者】
NPO日住協法律相談会 専門相談員
一級建築士・山田 俊二
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2021年4月号掲載)

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自己破綻の管理費滞納者、どのように回収していくのか?

2021-03-29 14:10:56 | マンションQ&A
 
 管理費等を滞納している区分所有者(居住者)の代理人弁護士から、自己破産予定である旨の通知が届きました。債権届を出すことを求められています。今後、どのような流れで滞納費を回収していくのか教えてください。


 まず、この時点では、滞納居住者に弁護士の代理人が就いたことの通知がなされたにすぎず、まだ裁判所へ自己破産申立はなされていません。代理人弁護士は、滞納居住者に対する他の債権者にも通知を送り、債権届の提出を求めて債務の状況を調査して、自己破産申立の準備を進めます。管理組合としては、まずは代理人弁護士の求めに応じて、債権届を代理人弁護士宛に提出してください。

 自己破産の申立がなされる前に、居室の任意売却がなされる場合があります。その任意売却の際に、滞納管理費等が精算されることが普通です。任意売却後に発生する管理費等は、当然新所有者へ請求していくことになります。

 では、任意売却されずに自己破産の申立がなされた場合はどうなるでしょうか。しばらくして、裁判所から管理組合へ書面が届きます。この書面には2パターンありまして、ひとつは、破産手続が開始されると同時に、破産手続が終了(廃止)したとの通知です(「同時廃止」と呼ばれています)。これは、破産者に配当できるだけの資産がない場合の処理です。居室は破産者が所有したままになります。多くの場合で滞納居住者の債務は免責され、管理組合は、破産開始決定前日までの滞納管理費等を滞納居住者へ請求できなくなります(破産開始決定日以後は請求可能です)。この場合は、ほぼ例外なく居室に抵当権が付いていますから、抵当権者が居室の競売を申し立てるのを待って、新所有者へ滞納分を請求するか、場合によっては、区分所有法59条に基づいて、管理組合自ら競売を申し立てることも考えられます。

 もうひとつパターンは、破産管財人が裁判所から選任されて破産手続が開始されたとの通知です。破産手続の中で、破産管財人が破産者の一定の財産を管理処分していきます。この場合、管理組合は、破産開始決定前日までの滞納管理費等を債権として、裁判所へ届け出てください(ひな形が裁判所からの通知と同送されてきます)。しかし、この債権は、先取特権といって、居室を担保として一般の債権よりも優先的に弁済を受けられる権利を居室の新所有者にも主張できるため、通常、配当手続に参加することはできません。他方、破産開始決定日以後の滞納管理費等は、破産管財人が管理する金銭預貯金に比較的余裕がある場合は、適宜破産管財人が支払ってくれるときもあります。

 では、破産管財人が選任されたケースで、どのように滞納管理費等を回収するかですが、やはり居室が売却される際に、精算がなされます。破産管財人は、破産者の財産を換価して、債権者へ配当をすることを任務としています。ですので、居室をなるべく任意売却しようと努力します。しかし、居室の買主が見つからない場合もあります。その場合、破産管財人は、居室の所有権を放棄して、居室は破産者の財産に戻ります。この場合は、上記の「同時廃止」の場合と同様に、精算をすることになります。競売となった場合に、配当要求をして、競落代金から回収できることもありますが、希なケースです。

回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・内藤 太郎
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年12月号掲載)

集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
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