マンション・メンテblog

集合住宅管理新聞「アメニティ」のブログです。工事業者募集やセミナーの案内などを随時掲載していきます。

機械式駐車場を撤去し、防災倉庫にするには…

2020-09-25 16:55:50 | マンションQ&A
機械式駐車場を撤去し、防災倉庫にしたい。また備蓄品は各自で用意すべきとの声も。どのように進めたら良いか?



 私たちの団地では高齢化が進み、駐車場を利用する人が激減しています。平面駐車場は残して、メンテナンス費用のかかる機械式駐車場を撤去し、倉庫を建てる。そして、倉庫には災害時のための備蓄品(非常食、飲料水、簡易トイレ等)を購入して保管するという案が理事会で出ています。どのような手続で進めれば良いでしょうか。

 また、一部の理事からはそのような備蓄品は居住者が各自で用意すべきもので管理費を使うことは問題はないか、組合員ではなく管理費の支払い義務を負わない賃借人に管理費で購入した備蓄品をただで提供することに問題はないのかという意見も出ていますが、どのように考えたら良いでしょうか?



 機械式駐車場の撤去が、共用部分の「変更」なのか「処分」なのかかが問題となります。処分行為となれば区分所有者全員の同意が必要となりますが、機械式駐車場を撤去して、倉庫とすることは共用部分変更に該当すると考えられます。但し、軽微な変更ではないので、区分所有者及び議決権の4分の3以上の賛成が必要な特別決議が必要となります。

 区分所有法17条2項は共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすときはその専有部分の所有者の承諾が必要と規定しています。この特別の影響とは当該変更行為の必要性、有用性と当該区分所有者の受ける不利益とを比較考量して、受忍すべき範囲を超える程度の不利益を受ける場合とされています。過去の裁判例でも「増築工事により専有部分の日照・採光・眺望に影響があるとしても、その影響が若干であり、居住環境を著しく悪化されるとは認められない場合には特別の影響を及ぼすものではない」と判断されています(大阪高裁平成4年1月28日判決)。

 機械式駐車場を撤去して、倉庫を建てることが専有部分の居住環境を著しく悪化させることは通常は考えられないし、機械式駐車場が使えなくても平面駐車場は使えることからの特別の影響には該当しないと考えられます。したがって、本件では総会の特別決議が得られれば機械式駐車場を撤去して、倉庫を建てることはできます。

 それでは、災害時の備蓄品を管理費で購入して、管理組合が保管することはできるのでしょうか。管理組合の主たる業務が共用部分の維持管理にあることは当然です。しかし、管理組合の業務はそれだけにとどまりません。避難訓練を行うことや消火器を購入することが管理組合の業務に含めれることには異論がないと思います。
 
 防災に強いマンションを作ることは広い意味で共用部分の維持管理に資することなので、災害時の備蓄品を管理組合で購入して、保管することは許されます。手続としては備蓄品の購入代金を予算案の中に入れて、予算案を総会の決議(普通決議)で承認してもらうことになるでしょう。

 専有部分を賃貸することが許される以上は賃借人の存在は当然の前提であり、賃借人は管理費の支払い義務を負う者ではありませんが、規約や細則を遵守する義務を負っており、共用部分を維持管理する担い手であることは組合員となんら変わりません。居住している人を災害から救うことは広い意味での共用部分の維持管理に資するので、備蓄品の提供を賃借人に行うことは問題ありません。

回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」掲載)

 集合住宅管理新聞「アメニティ」は、1982年創刊、39年間の歴史を持つマンション管理とメンテナンスの専門情報紙です。1都3県などの分譲マンションを中心に10万部発行。見本紙ご希望の方は、ホームページからお申し込み出来ます。
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マンション敷地内公園の実態調査

2020-09-24 16:48:30 | 団地・マンションの植栽
マンションみらい価値研究所が研究レポートを発信
~居住者の生活スタイルや社会情勢とともに移り変わる、公園・プレイロットのあり方~

 大和ライフネクスト株式会社の分譲マンション総合研究所「マンションみらい価値研究所」は、マンション敷地内の公園・プレイロットの実態を調査し、レポートにまとめた。

 同社が管理を受託する管理組合の12%にあたる491組合がマンション敷地内に公園・プレイロットを設置しており、築年数が20年以上および戸数の多いマンションに設置されている傾向にある。

 「遊具の設置数と残存率」を調査したところ、「砂場」「スプリング遊具」「ブランコ」の残存率が5割を下回ることが判明。

  

 レポートでは、現在は遊具を撤去しているが、撤去までの間の合意形成に2年余りを要した管理組合の事例を紹介。また、現役で使用し続けられている遊具も多く、利用している事例も紹介。

「マンション内の公園・プレイロットにある遊具は現在どうなっているか」レポート
https://www.daiwalifenext.co.jp/miraikachiken/report/pdf/Report_015.pdf




NPO日住協「マンション管理フェア2020」

2020-09-24 15:21:04 | イベント
会期 
2020年11月11日(水)~13日(金)10:00~17:00
会場 
東京ビッグサイト 第1ホール内
(日本能率協会主催の「第4回団地マンションリノベーション総合展」に協力・併設)

マンション管理に関する最新の情報を提供および展示。管理相談も受付ます。また下記講演会も開催します。

(講演会)
NPO日住協セミナー
「大規模修繕工事のあり方と施工会社等の取り組み」

●2020年11月11日(水)
大規模修繕工事のあり方<その1>
第一部
(10:15~10:35)
「長期修繕計画の策定・見直し」
NPO法人 日本住宅管理組合協議会 会長 川上 湛永
第二部
(10:35~11:15)
NPO日住協会長が設備改修施工会社に、その取り組みについて尋ねます。
P・C・Gテクニカ 代表取締役社長 藤井 金蔵

●2020年11月12日(木)
大規模修繕工事のあり方<その2>
第一部
(10:15~10:35)
「修繕委員会の設置(勉強会への参加・設計監理方式)」
NPO法人 日本住宅管理組合協議会
理事 柿沼 英雄
第二部
(10:35~11:15)
「長寿命化のための計画修繕と一回だけの耐震改修」
建装工業
首都圏マンションリニューアル事業部
執行役員 営業統括部長 東 桂一
工事統括部 第2工事部長 木野 道哉
デザインフィット工法協会 会員 耐震設計
代表取締役 岡田 和広

●2020年11月13日(金)
大規模修繕工事のあり方<その3>
第一部
(10:15 ~ 10:35)
「資金計画(修繕積立金の設定)」
NPO法人 日本住宅管理組合協議会 会長 川上 湛永
第二部
(10:35~11:15)
「設備改修」
マルナカ 代表取締役社長 中尾 慧理夫
日本水理
9月末現在の情報です。※講演者、講演内容が変更になる場合がございます。ご了承ください。

聴講無料
事前申込制
定員200名


来場事前登録
https://www.jma.or.jp/homeshow/seminar/program.html
または、ジャパンホームショーで検索

分譲マンションの建替えに関する特別相談会

2020-09-19 09:33:07 | 建て替え
弁護士・建築士との無料の対面相談

東 京:2020年11月2日(月)
大 阪:2020年11月5日(木)
名古屋:2020年11月18日(水)
札 幌:2020年11月24日(火)
広 島:2020年12月3日(木)
福 岡:2020年12月4日(金)

無料(要予約)

主催
公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター
http://www.chord.or.jp/news/pdf/news_200917.pdf





高齢者増え、各戸に非常通報装置導入検討。修繕積立金を取り崩して費用に充てることができるか?

2020-09-18 17:00:03 | マンションQ&A
 
 私たちのマンションでは一人暮らしの高齢者が増えてきました。各戸に非常通報装置(緊急ボタンが押されると警備会社に自動通報されて、警備員が駆けつけます)を導入したいと考えています。費用については修繕積立金を取り崩して充てる予定です。組合員の一部から修繕積立金を取り崩すことは規約に違反すると言われています。規約は標準管理規約に準じていますが、問題があるでしょうか。

 
 標準管理規約28条では修繕積立金を取り崩せる場合を規定しています。
 この規定は限定列挙であるとされていますので、この規定のいずれかに該当する場合以外には、仮に、取り崩しの決議が圧倒的多数で可決されても、規約に違反するので許されないことになります。

 標準管理規約28条1項5号には「その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理」に該当する場合には修繕積立金を取り崩すことができると規定していますが、これに該当するといえるでしょうか。

 この点が争われた裁判例として神戸地方裁判所平成30年1月18日の判決があります。この裁判例では非常通報装置の導入は「管理」行為に含まれないという主張に対しては「管理」とは変更行為に至らないものを広く意味していると解され、本件通報装置を導入することも「管理」に含まれると判断しています。
 
 また、非常通報装置は「敷地及び共用部分等」に含まれないという主張に対しては、「本件通報装置のうち本件端末機器及び管理室内設備は文言上これに該当しない。しかし、同号が〝敷地及び共用部分等〟と定めているのは、本件マンションが当該建物と敷地から構成されるものであり、このうち専有部分に関する事項が区分所有者全体の利益に関係することが通常想定されないためであり、同号が本件端末機器及び管理室内設備のような被告(=管理組合)の所有する動産に対する支出を排除する趣旨であるとは解されない。本件通報装置を構成する各設備は、本件マンション内に設置され、機能的に一体として存在しているものであり、それが物理的観点から共用部分等に属さないものがあるからといって、支出を排除する実質的な理由はない。本件通報装置には本件マンション全体に対する共益性(区分所有者全体の利益)と当該目的にかなった各設備の機能的一体性が認められ、本件マンション全体にとって有益な設備として修繕積立金からの支出」することを認めています。

 この神戸地裁判決は控訴されましたが、判決後に被告の管理組合が「風紀、秩序及び安全の維持、防災等組合員の共同の利益を増進し、良好な住環境を確保するために必要な物品の購入及び設置」のためにも修繕積立金を取り崩せるとする条項を追加する規約変更と当初の非常通報装置導入決議を追認する決議を行いました。控訴審(大阪高等裁判所平成31年1月31日判決)はこの規約改正と追認決議の存在を理由に管理組合を勝たせていますが、原審の神戸地裁の判決理由については否定的な考えを示しています。

 標準管理規約を前提として、修繕積立金を取り崩して、非常通報装置導入費用に充てることは、規約違反行為と判断されるリスクが高いと考えられるので避けた方が良いと思います。

回答者:NPO日住協法律相談会 専門相談員
弁護士・石川 貴康
(集合住宅管理新聞「アメニティ」2020年9月号掲載)


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