原子力規制庁 原発関連資料、大量流出 経路特定できず
原子力規制庁の新入職員研修用の内部資料が外部流出した問題で、この他にも研修テキスト全文や研修の様子を撮影した動画も大量に流出していたことを毎日新聞が確認した。原発の安全に関わる秘密情報は含まれていないが、原発を起動させる手順書などもあった。同庁は実物と認めた上で流出経路を調べているが特定に至っておらず、核情報を扱う機関として情報管理の甘さが問われそうだ。
研修は昨年4~5月に実施された。毎日新聞はその際に使用したテキストなどの文書58冊(約3800ページ)の全文と、研修を撮影した動画約74時間のうち約60時間分が外部流出しているのを確認した。
テキストの中には、沸騰水型原発の設備を解説した80ページの資料も含まれ、原子炉本体や炉内のポンプ、タービンなどの図面のほか、原子炉起動から通常運転に至るまでの手順や原子炉の水温、圧力などを記した「起動曲線」と呼ばれるデータなどが掲載されている。
これらを含め、流出した資料の大半は「秘密情報は含まれていないが、外部に漏れると事務に支障をきたすおそれがある」として、4段階ある機密度のうち2番目に軽い「機密性2」に指定された文書だった。
一方、「原発事故の責任は誰が負うか」というテーマを議論した研修の動画では、参加した新人職員が「福島(第1原発)事故を見れば、東京電力が全部悪かったとも言えないと個人的意見としてある」「一つの団体だけの責任ではなく(電力と規制機関)どちらも悪い」などの意見を述べる様子も収録されている。
研修資料の外部流出は今年3月に発覚し、青森県六ケ所村の再処理工場に関する資料50ページがインターネット上に流れた。その際の流出元は、規制庁が昨年10月に資料の英訳を委託した翻訳会社で、同社が第三者に作業を外注する間に流出したとみられる。
今回流出した資料も同社に委託していたが、規制庁の調査に対して同社は「第三者に外注したのは一部分だけ」などと説明。今回の大量流出については関与を否定しており、現時点で流出元は特定できていない。
国際原子力機関(IAEA)は核テロなどの未然防止のため、各国に原子力施設の情報管理を徹底するよう求めており、原子力規制委員会も1月、機密情報の保護に努めるよう職員に求める「核セキュリティ文化に関する行動指針」を定めている。同庁の担当者は「外部流出があったことは問題だった」と情報管理の甘さを認めている。【酒造唯】
非常にお粗末 根井寿規(ひさのり)政策研究大学院大教授(元原子力安全・保安院審議官)の話 機密情報を扱う規制機関として、これほど大規模な流出は非常にお粗末だ。今回はたまたま機密性が低かったが、もし高いものだったら悪用されかねない。最初の流出が発覚した時点で調査を徹底すべきだった