ベネチア・ビエンナーレに自閉症男性、滋賀の澤田真一さん陶芸を出展

2015-04-01 10:20:33 | 芸術

ベネチア・ビエンナーレに自閉症男性、滋賀の澤田真一さん陶芸を出展 

イタリア・ベネチアで6月開幕する世界最大の国際美術展「第55回ベネチア・ビエンナーレ」に、滋賀県草津市在住の澤田真一さん(31)が陶芸作品を出品する。100年以上の歴史を誇り、世界的に注目される展覧会で、出展作家に選ばれただけでも一流のアーティストと評価された証しだ。澤田さんは自閉症と知的障害を抱え、ほとんど言葉を話さない。家族は「障害に関係なく、真ちゃんが評価されたことがうれしい」と喜ぶ。

動物や仮面、トーテムポールのような形をした作品は全て、細かいトゲのような突起に覆われているのが特徴。フランス語で「生(き)のままの芸術」を意味する「アール・ブリュット」に分類される。既存の文化や美術教育に影響されていない芸術のことで、評価や利益を求めず、内面をただ表現しているのが特徴とされる。

同県栗東市の山間の窯に隣接した小屋で1人、無言で作陶に打ち込む。粘土を成形する、少女のように細い指先は一切迷いがない。テンポ良く、素早く、小さなトゲを整然と並べる。制作時間は、大きさによって1〜2日。午前10時〜午後4時の作業時間ぴったりで仕上げる。出来上がると小さくほほ笑む。次の瞬間には帰宅の準備を始め、二度と関心を示さない。窯焼きは、陶芸を指導する池谷正晴さん(80)の作業だ。

澤田さんが陶芸に出会ったのは2001年。通所する栗東市の「栗東なかよし作業所」の運営団体が、窯と作業小屋を建てたことがきっかけ。制作を始めると、力強く独創的な作品が関係者の目に留まり、08年にはスイスでの展覧会で高い評価を得た。10年にパリで開かれた「アール・ブリュット・ジャポネ展」にも出展。今回のベネチア・ビエンナーレでは、「国際企画展」部門の総合ディレクターに認められ、37カ国150人以上のアーティストの一人として参加が決まった。

澤田さんの作品について、日本自閉症協会の石井哲夫顧問は「障害という特性がもたらした芸術ととらえるべきだ」とし、父正己さん(64)は「正直、私には何を訴えているかは分からない。ただ、だからこそ見た人がひかれるのかもしれない」と話す。

池谷さんは「一流の職人の『仕事』のようだ。頭の中にある独自の法則に従って制作している。その法則は西洋の建築様式に似ていて、緻密で複雑。だから海外で評価されたのでは」と語る。



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