社会保障改革/全国一律から地域実践型へ2025年を念頭に

2013-08-09 09:54:55 | 医療

団塊の世代が75歳以上となる2025年を念頭に

 「負担は現役世代、給付は高齢者」という年齢輪切りを転換、経済能力に応じた全世代負担型とする。
 政府の社会保障制度改革国民会議の最終報告書を大づかみに言えば、子ども世代へのつけ回しを減らすため、高齢者に我慢を求めるものだ。
 少子化で人口構成が一層いびつになる中で、遅きに失したとも言えよう。将来不安の高まる年金分野も、長期的課題として緩やかな方向性を示すにとどまっている。
 70~74歳の医療費引き上げなど医療と介護で改革案をいくつか盛り込んだが、膨らむ社会保障費の抑制が主眼で大胆な切り込みに欠ける。
 安倍政権には、高齢者に痛みを伴う施策の着実な遂行とともに、根本の制度改革に踏み込むよう指摘しておきたい。
 さて、国民会議後半の議論で、地方分権につながる項目が加わった点に注目したい。
 まず、病院機能の再編や幅広く診察する総合診療医などの医療体制を都道府県に担わせる案だ。高齢化といっても地域差があり、実態に合ったサービスを整えることに異論はない。
 しかし、国民皆保険制度の下、医療政策は国が一律に行っている現実がある。診療報酬の改定もそう。医師育成は国立大医学部が中心になって、人材面から地域医療を支えている。
 国の細かい規制や補助金システムは時として壁になる。東日本大震災で海水をかぶった病院を復旧再開させようとしても、手続きや説得に苦労したという現場の訴えは記憶に新しい。
 改革案は、消費税増税分を元手に基金を設けて病院整備やスタッフ確保に資金を出し、配慮するというが、単なるばらまきにならないか。現行の仕組みを含め、総合的に権限移譲しない限り、絵に描いた餅となろう。
 もう一つは介護保険サービスから軽度の「要支援」を外し、市町村事業に移す取り組みだ。重い要介護者の増加に歯止めをかけようと、いまは要支援の段階から予防のための体操などケアプランを作成している。
 ところが、高齢者の増加で業務量が増大し、サービス拠点の地域包括支援センター(社会福祉法人など)に負担がのしかかった。
 支援センターの主な役割は、町内会を通じた高齢者の健康把握、自宅訪問など。負担軽減され、自由裁量が広がって地域に目配りできるようになれば、好ましいことである。
 移行後はNPOやボランティア活用も見込んでおり、財政力のある自治体と弱い市町村とで、サービスにばらつきが出る恐れはある。自治体の連携、民間活用を通じ、フォローできる体制をつくってほしい。
 改革は、団塊の世代が75歳以上となる2025年を念頭に置いている。退院後のリハビリ、在宅医療、介護といった地域完結型社会はまさにこれからだ。
 時間的余裕はあまりない。全国一律から地域主体の取り組みを実現する肉付けを急ぎたい。