【 Okinawa1995 Vol.4 】

もう一つは、９３年に出版された
藤原新也氏の「南島街道」という写真集である。

確か、大阪の本屋で偶然手に取ったと記憶しているが、これも
いわゆる沖縄チックな被写体が選ばれているわけではない。
田舎道、海岸、草むら、農家の軒先らしき所におかれた巨大な瓜、
鄙びたガソリンスタンド、などなど…。

しかし、写された物体はどれも南国の強烈な光を浴びて
妖しいまでの輝きを放ち、不思議な生命力に溢れているかのように見えた。

もちろん技術的には露出やカラーのコントロールによるものだろう。
しかし、沖縄・琉球と云えば
守礼の門くらいしか思い浮かばなかった当時の私にとっては
この写真集はこれ以降、私の沖縄に対するイメージに
大きな影響を与えることになった。

【 Okinawa1995 Vol.3 】

「Attention」というその雑誌には
いくつかの離島の中で、当時まだ全く知られていなかった
鳩間島のページもあった。

特に名所旧跡や風光明媚な有様が書いてあるわけではない。
小学校の校庭で行く人かの生徒が遊んでいる、という
静かな午後の光景が記されているだけだった。

昔の夏休みのような、どこか懐かしさを連想させるひとコマ、
何もない、ただ豊穣で驚きに満ちた時間だけがあった
あの頃へ引き戻されるような、
そんな感覚と共に、ある一つの情景として
この島のことが記憶に残った。