「日本カメラ」4月号
北井一夫氏の連載「ライカで散歩」、今回が100回めという節目に当たるが
珍しく撮影同行記が添えられている。
読んでみると、北井氏が相当な覚悟を持って、東北被災地の取材に望んでいることが分かる。
「ライカで散歩」をはじめ、近年の北井氏の仕事は「ご隠居爺さんの写真道楽」といったふうで
あくまでマイペースに続けられていたから、正直言って唐突で意外な印象を受けた。
これは、あの震災が如何に大きいものだったか、という事も影響しただろうし、
「村へ」などの過去の取材で度々訪れた東北の変貌をこの目で見ておかねばならない、
という気持ちもあるのではなかろうか。
北井氏は震災以降、何度か取材を繰り返した後、「道でいこう」と決めたという。
「道」は、「村へ」でも度々テーマになってきたが、この場合の「道」は
いわば、彼岸と此岸とを結ぶものとして捉えられているような気がする。
彼岸と此岸、それは過去(震災前)と現在(震災後)でもあるだろうし、被写体と撮影者、
あるいは被災された方々の生と死であるかもしれない。
瓦礫が残る中を真っ直ぐにのびる道には、様々な思いが込められているようだ。