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ヴァイオリン ~ 雑音ラプソディ ~

50代後半になって突然始めたヴァイオリン。
ヴァイオリンやピアノなど
音楽に関することを綴っていきます。

牛田智大 コロナ禍での想いが込められたショパン演奏

2021-10-06 | ピアノ
ショパン国際ピアノコンクール第1次予選2日目、10月4日の夜の部(日本時間の5日0時30分頃) 、いつもの智大スマイルでにこやかに舞台に登場し、ほぼ満席の会場に挨拶する牛田智大さん、向かったのは艶消し塗装のピアノ、Yamaha CFX。
2018年の浜松国際ピアノコンクールの本選でラフマニノフの協奏曲第2番を演奏して2位を受賞した時と同じモデル。牛田さん曰く、ppは多彩で、ffは深みがあり、コントロール性が高くピアニストに寄り添ってくれるピアノなのだそうです。
多くの参加者がスタンウェイを選ぶ中で、日本のヤマハが登場したことになぜか誇らしく感じました。

演奏曲順は、
1. ノクターン第8番変ニ長調Op.27-2  (二つの夜想曲のうちの一つ)
2. エチュード 変イ長調Op.10-10
3. エチュード ハ短調Op.10-12 (革命のエチュード)
4  ファンタジー ヘ短調 Op.49 (幻想曲)

1曲目のノクターン、左手の1小節から始まります。2小節目の右手のメロディーの最初の1音(ファ)の音を鳴らしたときの、明るく澄んだ音色に衝撃を受けました。
高音は透き通るようで、まるで水滴の音のように響く。中低音は深みがあるしっかりした音色。スタンウェイの派手さやFazioliの軽快さはありませんが、そこが牛田さんの技巧と表現力にマッチしているのかもしれません。
演奏が進むごとに美しい音色が引き出されていきます。ペダルをあまり踏んでいないのか、響きが抑えられて音がしっかり届いてきます。
小さい頃から牛田さんの演奏を聴いてきましたが、コンクールの度に表現力が豊かになっていきます。
本当に素晴らしい演奏でした。

2018年に浜松で2位を受賞した牛田さんが、2020年のショパン国際ピアノコンクールを目指し、ファンからの期待が高まっていますが、パンデミックでコンクールは延期。然し、ようやくこの日を迎えました。
参加者は皆、開催に至るまでは不安や期待感、いろいろ複雑な想いがあったと思います。

演奏を聴いた後で知ったのですが、牛田さんのプログラムには構成の意図がありました。 
演奏日当日に牛田さんが次のようにTwitterで語っているので、引用して掲載します。

 『フランスの作曲家ベルリオーズの代表作のひとつに、パリ七月革命の10周年記念式典のために作曲された「葬送と勝利の大交響曲」があります。「葬送」「祈り」「祝祭」の3章からなる壮大な作品で、犠牲を伴いながらも自由に勝ち取ったフランス国民を讃え、犠牲者を弔う意味を込めて作曲されました。....今日演奏するショパンの「幻想曲」は、ショパンがベルリオーズの構想を祖国ポーランドに置き換えて描いたものです。ワルシャワの蜂起はロシア軍に圧倒され失敗に終わりました。ショパン自身が暮らすパリは革命に成功、一方で蜂起に失敗し国家消滅の危機にあるワルシャワ....
…その現実を見なければならないときの空虚で絶望的な感性が「幻想」というタイトルに繋がったのではないかと考えます。
今日の本番では、暖かく穏やかなワルシャワが徐々に悲しみに染まり、多くの犠牲と深い絶望を経て再び希望を見出すまでの変遷を描きます…』

私は、予選の演奏の後で友人から教えられてこれを読んだのですが、牛田さんのショパンに対する想いや作曲の背景、多分それだけではない、今起こっているコロナ禍での人々の悲哀や期待なども重ね合わせて、心を込めて弾いていたのだろうと、何度も演奏を聴きなおしています。




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Unknown (tkgmzt2902)
2021-10-07 07:34:49
ほんとに素晴らしい演奏でしたね。トーク番組で、牛田さんはあまりテレビを見ないと言っていたので、それがかえってプレッシャーにならなかったのかなと思っています。ショパンはこんな封に弾いて欲しかったのかも知れないと思いました。
反田さんも角野さんもやりきったと感想コメントがあり熱演でしたね。
沢田さんはカワイでしたね。とても品のある音で印象に残りました。日本人の活躍、嬉しく視聴しています。
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Unknown (tocalamusica)
2021-10-07 08:36:55
tkgmzt2902さん、おはようございます。
牛田さんの演奏、素晴らしかったですね。ヤマハも人気が高まるかもしれないです。 牛田さんは小さい頃天才ピアニストともてはやされてテレビによく出ていて、それを今は亡き恩師中村紘子さんに怒られて、テレビ出演をやめてピアノに打ち込むことにしたのです。浜松コンクールの受賞の前に中村さんが亡くなられて、存命中に受賞を見せられなかったことを悔やんでいました。ショパンコンクールは、かつて中村紘子さんが入賞したものなので、特別な思い入れがあるようです。頑張って欲しいですね。
反田さんのノクターン、鳥肌が立つほどきれいでした。最後は少し演奏に疲れが見られましたが。角野さん、最初は緊張してましたが、段々ほぐれて行くのを見て安心しました。
他の日本人の皆さんもとても上手でした。少しでも多くの方が2次予選に進めると良いですね。
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