普段はニューヨークにお住まいのヴァイオリニストの五嶋みどりさん。年一回程日本で公演を行なっているようですが、生で聴いてみたいと思いながら、今まで行ったことがありませんでした。
11歳でデビューしてから今年で40周年ということで、サントリーホールの企画で、ベートーヴェンと恩師故アイザック・スターン氏に捧げるオマージュとして、11/8〜11/12までスペシャルステージが開かれています、
アイザック・スターン氏は、1986年サントリーホールのオープニング記念のステージを飾った、イスラエル出身の巨匠ヴァイオリニスト。
それとは別に、同じオープニング企画の海外オーケストラシリーズで、五嶋みどりさんもソリストとして演奏しています。その時の年齢は14〜15歳。
プログラムによれば、アイザック・スターン氏がホールのオープニングを飾ったベートーヴェンを、同じステージで演奏して、この数日間を恩師に捧げたい、というのがコンセプトのようです。
オールベートーヴェンの5日間。曲目は全部違います。
11/8〜11/10はピアノとヴァイオリンのためのソナタ、11/11はチェロとピアノとの三重奏、11/12は新日本フィルとのコンチェルト。
11/8から3日間通えば、ベートーヴェンのヴァイオリンとピアノのソナタを10曲全部を聴けるわけです。
私は初日11/8のチケットを入手するだけで精一杯。買おうと思ったときは、11/8と11/10しか残席はありませんでした。
みどりさんには子供時代からのファンや支持者が多いですし、サントリーホール主催のコンサートはホールメンバーに優先的に販売情報を出すので、チケットの入手は難しいとわかってましたけど…
更に、チケットは少々お高めなので、高い席で後ろの方しか取れないなら、安い席でも良いかと考え、ステージ後ろのPブロックの残席を見てみました。
11/8は割りと余裕があり、驚いたことに最前列に1席空きがありました。
後編で書きますが、この席は意外と良い席だったのです。
11/8のプログラムは、ベートーヴェンの
・ピアノとヴァイオリンのためのソナタ第1番ニ長調
・ 〃 第4番イ短調
・ 〃 第8番ト長調
・ 〃 第7番ハ短調
みどりさんは、ルビー色の、柄の入った光沢のある生地で、ルビーを模した装飾が施されたノースリーブのロングドレスで登場します。
ピアニストは、フランス出身のジャン=イヴ・ティボーデさん。
楽譜はふたりともデジタル楽譜。最近流行っていますが、直接見るのは初めてでした。
ヴァイオリニストの譜面は、弾きながら足元に置かれたコントローラーを踏んでめくっていました。ピアノの方は、ピアニストの横に女性が座り、その方がコントローラーを操作していたのではないかと思います。
さて、五嶋みどりさんの演奏。ヴァイオリンの美しく柔らかい音色を際立たせるような演奏が印象的でした。
技術的な面は言うまでもありませんが、それを観客に見せつけるような弾き方はしない。それでいて、曲や作曲家が持つエネルギーをしっかり引き出して、観客を感動させてくれる。
これが真の一流ヴァイオリニストの演奏だと思った時間でした。
ピアノとの呼吸もピッタリで、気持ちが良い。
特にソナタの第7番。
ヴァイオリンとピアノの演奏と聞くとヴァイオリンが主役と思いがちですが、ピアノも主役の一人だと改めて感じさせるベートーヴェンのソナタでした。
後編につづく…