Tiangangの毎日

浦和から国分寺に引っ越したフットボール好き。レッズの試合や食べたもの、旅行、読んだ本などをのんびり書いてます。

「間接業務のユニクロ化のインパクト」

2005-01-26 10:21:10 | Weblog
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・2年前に出版されたものであるが大前研一氏の「中国シフト」を読み返してみた。日本がこのままで良いのかという危機感を覚えると同時に、日本が再度復活するチャンスの足がかりになり得るとも思えるヒントがある。本書の内容を総括するつもりはないが、氏が指摘する点で衝撃的だったのが間接業務の中国へのアウトソーシングだ。「間接業務のユニクロ化」とも言い換えている。
・日本では、製造業であれ金融・サービス業であれ間接業務と呼ばれる電話対応や単純な書類作成といった事務業務に相当のコストを費やしている。日本の業務部門の仕事をしている人は就業人口の約70%を占めているといわれるが、そのうち想像力、構想力を要求される知的ホワイトカラーやホテルベッドメーキング、スーパーのレジ係員のような現場ブルーカラー的なサービス業務従事者を半分としても日本の就業人口の35%に相当する人員が請け負う間接業務は、業務作業をマニュアル化、標準化すれば日本語人材の多い大連等の中国の都市で代行できると主張している。
・私が住んでいる遼寧省では、大連や瀋陽市で既にこの日本向けの電話対応業務のコールセンター、単純書類作成等のバックオフィス業務センター、日本用ソフトウェア開発のデータ入力作業請負のソフト会社が年々増え、また成長を続けている。瀋陽に東軟ソフトという会社がある。総裁の劉積仁氏は、瀋陽の東北大学の小さな研究室から立ち上げた会社を10数年の間に従業員6000人、売り上げ22億元に達する中国を代表するソフト会社に成長させた立志伝中の人物である。同社は国内の業務向けアプリケーションソフトの開発がメインだが、同時に日本のアルパイン社等と提携して日本用のカーナビ用ソフトの地図作成のデータ入力業務等を行っている。
・実際に瀋陽や大連の日本語人材は相当なものだ。大連外語学院、瀋陽の遼寧大学日本語科、長春の東北師範大学の日本語科などでしっかり勉強した優秀な学生が次から次へと就業している。中国東北は中国籍朝鮮族も約200万人いて彼らは第一外国語として中学・高校から日本語を学んできている者が多い。クレジットカード等のコールセンター業務でも少しトレーニングすればほとんど問題なく処理できる人材が大量にいて、大連では3000元(約4万円)、瀋陽ならさらに2・3割低い給与水準で雇用できる。
・日本語間接業務のアウトソーシングは韓国や台湾ではなく、人件費が安い中国でこそ可能になるわけだ。間接業務の中国へのシフト、このインパクトは非常に大きいものではないかと思う。アメリカが英語人材のいるインドやアイルランドに間接業務のアウトソーシングを行ったような動きの日本語版が大連、瀋陽で現在進行形で起こっている。
・これは日本の雇用を奪う脅威ともとれるが、知恵を出せば日本企業の復活のチャンスにも活用できる。欧米の銀行、クレジット会社、航空会社、ネット販売会社、運送会社等多国籍企業ではバックオフィス業務を安い外国に移管することが当たり前になってきている中で日本企業も彼らに伍していくために中国を活用しない手はない。日本で余剰となる雇用については、これを活用して新しいサービス産業等の創出に人員を充てるべきだ。例えば高齢化社会に対応した高齢者ケア産業だ。大量の人手を必要とするだろう。フィリピン人看護婦など外国人活用もありえるが、従来企業が間接業務に大量に抱えていた人員を解き放つという発想もありではないか。また直感的に日本の都市の再設計といったことも大きな需要があると思う。欧米と比べると日本の都市は景観が貧相で街がバラバラしている感を持つ。東京、大阪などの大都市の住宅事情は悪い。大前研一氏も指摘しているがパリ市街は建物が平均6階なのに東京の山の手線内は2.6階と低く、これは都市部の建築容積率規制等によるものとのことだ。大きなグランドデザインを描いて公共投資に頼らず規制緩和と民間の知恵で都市の再設計をするというのは大きな起爆材になり得る。「間接業務のユニクロ化」、これは製造業のユニクロ化に続く大きなインパクトになるだろう。日本企業が中国の事業環境を自らの競争力の強化のために取り込み復活する契機にもなり得るのではないか。

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