Tiangangの毎日

浦和から国分寺に引っ越したフットボール好き。レッズの試合や食べたもの、旅行、読んだ本などをのんびり書いてます。

「ベッカー教授の経済学ではこう考える」

2005-08-11 08:14:01 | Weblog
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ゲーリー・S・ベッカー、ギティ・N・ベッカーという二人の経済学者夫妻による「ベッカー教授の経済学ではこう考える」(東洋経済新報社)を読み終えた。旦那さんのゲーリー・S・ベッカー教授は92年のノーベル経済学賞受賞者だ。生活に密着する様々なことがらを経済学の観点から数式や専門用語を用いずに分かりやすく書かれた短編コラム集である。
宗教については、特定の宗教のみ認められている社会よりも信仰の自由が確保されている社会の方が宗教観の競争がなされ宗教が健全に栄えるという話、たしかに日本などでは新興勢も含めていろいろな宗教が並存している。
最低賃金を引き上げると企業側にとって雇用することに伴う負担が増えるので結局失業者は増加するという話、非常に納得できる。最低賃金水準を払うに値しない雇用ニーズが実際はたくさんあるにも関わらず雇用が創出されなくなるからだ。最低賃金保障の規制により失業者が増えるよりは、最低賃金など設けず自由とした方が良いのではないか。その上で低所得者には所得税免除や社会保障給付の世界でカバーした方が良いのではないか。
小・中・高等学校レベルでも公立・私立学校問わず利用できる教育バウチャー(年間○○ドルの教育費に当てることができる切符)を創設して学生が自由に学校を選択できることとし学校間競争を活性化させることが、教育環境改善の観点から望ましいという話、これも大きく賛同。競争がないところに進歩はない。伊藤元重氏も言っていたが日本の義務教育はいわば「配給制」で住んだ地域に割り当てられた学校に行かなければならない。これでは公立学校の教育が活性化されないということだ。戦後まもない時期の物資・サービスが極端に欠乏していたときに「配給制」は分かるがこれだけ豊かになった日本で今でも「配給制」というのはおかしい。
賭博や麻薬は禁止してもアンダーグランドの世界で違法化されているが故に巨額の資金が流入し犯罪が増える等かえって社会コストが高くなるので、反対に合法化して適度にたしなむことを解禁し、代わりに重い課税をかけて過度な利用を抑え中毒者の発生を抑えるといった方策にすべきだという話、麻薬は少し慎重に考えるべきだと思うが賭博については直ぐにでも実行できるのではないか。日本でも賭博に規制が多くても競馬・競艇・パチンコなどもあるし、不動産や株で値上がりしたところを売り抜けて儲けることだって大きなリスクを負うギャンブル性がある。賭博をオープンにしても問題はおきないだろう。中毒者が出るのを抑える必要があるのであれば課税でコントロールすれば良い。
平時において市場の水準より安い給与で徴兵制を行うのは、若者が兵役につかずに企業で働いていれば獲得していたであろう給与、産出していたであろう生産価値を社会として放棄することになり結果として高いコストを支払うことになるので志願制にする方が望ましいという話、お隣の韓国もそういう意味ではかなりの社会コストを払っているのだろう。
資本主義とその他の経済体制による発展の違いがはっきり分かるのは1950年代には同じ砂糖等の農産品輸出の島国で経済水準が似通っていた台湾とキューバのその後の発展を見ると良いという話、台湾とキューバを比較するという話ははじめて聞いたので新鮮だった。たしかに元々は砂糖きび等の農産品輸出の島国であったこと、それぞれ中国、アメリカという政治体制が異なる脅威になりえる大国の近隣に位置しているという意味で類似性がある。しかし現時点での経済水準は天と地ほどの差だ。