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5G低遅延の(説明の)謎

2020-03-17 23:00:44 | IT
5Gをめぐって米中の覇権争いが顕在化して久しい。
日本でも、5Gスマホが発売され、5Gサービスが提供される。

先日TV番組で雛段のメンバーに「G」をよくわかっていない人がいてびっくりしたけど、
もちろん「G」は「Genaration」ゼネレーション、「世代」です。
「5G」は「第5世代」ということ。

で、5Gの世界覇権争いで米中が政治を巻き込んでごたごたしていることは良く知られており、
HUAWEI(ファーウェイ)の幹部が拘束されたり、よからぬ機能を盛り込んでいると疑われて、
HUAWEIのスマホにはGoogleのアプリが乗せられないとか、いろいろあります。

ま、それはともかく、5Gになると何が変わるのか、という場合に言われるのが
・高速大容量
・低遅延
・同時多端末接続
で、いずれも4Gの10倍とか100倍とか性能がアップする、というものです。

高速大容量は4Gよりも高周波数帯を使い伝送方式が違うのでその分データ・レイト、実際にはデータ密度ですが、
ありていに言えば伝送速度が速くなります。

ただ、これにはデメリットもあって、電波は高周波になればなるほど直進性が強くなり、ビルや障害物の陰には
届きにくくなります。
基地局の設備を更新するだけでなく、配置を見直したり追加することになるのでしょう。

また周波数や方式が異なり、ユーザも今までのスマホは使えないということで、買いなおす必要があります。

ただ、現在の4Gでも理論的最大速度は1Gbps、5Gでは10Gbpsと言われていますが、
実測では4Gではせいぜい100Mbpsですので、5Gでも1Gbpsと言ったところでしょうか。

動画サクサクなんていわれますが、回線速度が速くなるだけで、サーバの能力が上がるわけではありません。
今でもあけおめメールでメールサーバーパンク、コンサートチケット売り出し時につながらないなどがありますが
回線が混んでいるからというよりもサーバーの能力がオーバーフローしているからです。

東京オリンピックのチケットサイトで延々と待たされたのもチケットサーバーの能力が不足しているからで、
回線が遅いからではありません。

回線速度が10倍になるので、BD(ブルーレイ・ディスク)1枚分のデータが30秒ぐらいでダウンロードできる
という計算もありますが、サーバーがもつのか誰が保証するのでしょうか。
特定の2人の間のデータやり取りならそのメリットを十分享受できるでしょうが、ネット配信のようなサービスで
実現するにはサーバーの能力も10倍に増強する必要があります。

低遅延は後で述べるとして、同時多端末接続。
これも方式を変えるので、今までの方式、つまり4Gに比べて、一つの基地局で接続できる端末数が
100倍ぐらいになると言われています。

IoT(Internet of Things、物のインターネット、すべての機器がネットに接続する世界)
が実験や実証レベルでなく、普遍的に実現できます。

ただし、これもデメリットが。
IoTでつながる端末とのデータ量は、スマホやPCに比べると少ないと思われますが、同時に100倍どころか、
千倍、万倍の端末が存在すれば、ネット全体の通信量が跳ね上がる可能性もあります。

ネットの攻撃にDoS攻撃、DDoS攻撃というものがあります。
DoSはDenial of Service(サービス拒否)です。
DDoSはDistributed DoS(分散型サービス拒否)です。
DoS攻撃、DDoS攻撃は端末側からサーバに対して過大な要求を送り、サーバーが処理しきれないようにする攻撃。
理屈は違いますが、電話が集中して「ただいま大変込み合っております」状態にするわけです。

少数か所から攻撃するとすぐばれ、そこからの要求を捨てればパンクはしません。
電話でいえば着信拒否です。
それを回避するのがDDoS攻撃で、分散型、つまり多数の端末から同時にDoS攻撃を仕掛けます。
1台の端末からたくさん要求を出すより、10倍、100倍の端末からならずっと少ない要求でパンクさせられますし、
少数台の端末からではパンクさせられないサーバーも多くの端末を使えばパンクさせられます。
攻撃する端末はウィルスで乗っ取ったものなども使います。

同時多端末からのリクエストが絶え間なく発生すれば、事実上のDDoS攻撃と同じ状態が発生するかもしれません。

さて、私が気になるのは低遅延。
低遅延にできるにはいくつかの理由があって、まず回線速度が速いので遅延も少ない。
これはある程度直感でわかります。

それでも、端末からの要求をネット上のサーバーに送り処理して返すのなら伝送部分しか速くなりません。
そこで考えられているのがエッジ・コンピューティング。
具体的にはMEC(マルチアクセス・エッジ・コンピューティング)と呼ばれ、基地局に大きな処理能力を持たせ、
ある程度の処理をさせる。言ってみれば分散サーバーですな。

そうすればネット全体のトラフィックが減って、ますます混雑が緩和されるし、距離も短いので伝送路による遅延も少ない。
わざわざ本庁まで行かなくても、地元に近い支局で本庁と同じ処理ができれば早い、というわけです。

ただ、世の中にそれこそ「ごまんとある」どころか、何千万、いやもっとか、とにかく無数にあるサーバーの全機能を
基地局に持つわけにはいきませんから、レンダリング(画面表示処理)などできる範囲が限られると思います。

ここまで書いていくとお題目は素晴らしいものの、実現するにはそれなりの設備投資が必要です。
ユーザーがスマホを買いなおす必要があるだけでなく、キャリア側も相当の機器の更新と増強が必要になるのがわかると思います。

端末代金も高くなるし、利用料金も当然高くなる。
利用料は今のところ月額千円程度の値上げになるだろうなんて言われていますが、それで済みますかね。

とはいえ、一応3つのメリットはそれなりに実現できると思われますが、問題は低遅延。
確かに近距離の遅延は減るでしょう。
自動運転や遠隔医療、ネットでの対戦競技などには威力を発揮するでしょう。

しかし、どんなに頑張っても光の速度は超えられない。
先日のTVでは低遅延のメリットとして「衛星通信などで相手の返事に間が空くのがなくなる」と言ってました。

本当でしょうか。

どんなに頑張ってもアメリカまでの距離が短くなるわけではない。
1万km離れたところはいつまでたっても1万kmです。
光であっても届くのに1/30秒はかかります。

往復で最低でも1/15秒はかかる.わけですから、こっちがしゃべり終わって相手がすかさず返事をしても、
光の速度でも0.07秒程度は間が空きます。
光ケーブルを使っても光の速度では進みませんので、もっと間が空くでしょう。

また、仮に静止衛星を使った通信であれば、地上との距離はおよそ3万6千km、往復で7万kmを超えますので、
電波の往復に1/4秒程度は時間がかかります。
某CMのように世界各地にいるミュージシャンがコラボして同時に演奏することはできません。

新技術が出てくると、実現するしないに関わらず「こういうことができる」とメリットが並べられますが、
実現するかしないかは「できるかできないか」だけがポイントではなく、「やるかやらないか」が問題です。

いくら技術的、機能的にできるとしてもやるやらないは別問題。
例えば、最近のテレビ放送を見ていてもデータ放送の手抜きはひどい。
スポーツ中継でも最低限の情報しか出してないから経過などが分からなかったり、ひどい場合は一切出さない。

ビジネス上の問題もあるとは思います。
例えば、料理番組でゆっくりとレシピを見ようとしてもデータ放送に出てこない番組は多い。
そういう番組はレシピをデータ放送に載せる手間を省いているだけでなく、発行している料理本に載せているから、
データ放送で出しちゃと本が売れなくなるというわけでしょう。

データ放送の開始前は多角的に情報が取れる、リアルタイムでわかる、みたいなことを言ってましたけど、
結局ニーズがそれほどなかったんでしょう。

ユーザが必要としなければ、いくら良い技術でも無用の長物です。
5Gで世の中変わるほどのインパクトがあるのかは疑問です。
実はそうだけど、我々のあずかり知らないところで活用されるだけなのかもしれませんが・・・・。

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