さて、これまで個別原価計算の仕組みと、
工事進行基準をとらなくても、
要件定義、見積もり、作番管理、作業高管理を
きちんとやることができるし、やらなくてはならないと書いた。
また、通算で見ると、普通のいわゆる現金主義でやっても、
工事進行基準でやっても同じになると言う例を示した。
では、受託システム開発でよくある大型の赤字の場合を見てみよう。
前回と同じく、ある受託システム開発を作業期間4年、受注額50億円。
見積原価40億円、一般比率15%、総原価46億円としよう。
前回は、毎年10億円の作業高を4年にわたって続けていった場合を
考えてみたが、今度は2年目からトラブルが発生して、
最終的に大赤字になったとして考えてみよう。
作業高は、1年目から順に、10億、15億、15億、20億と計60億、
通算で10億円の粗利赤字だ。
そして、作業の実際の進捗は、20%、45%、70%、100%とする。
一応納期は守れたとするわけだ。
普通の個別原価計算では、
1年目、売上0、原価10億円、仕掛残高10億円。
回収一般費0(1億5千万円分は未回収)
進捗が予定の1/4に達していないので、
翌年度以降、工数を追加して進捗を上げる計画とする。
2年目、売上0、原価15億円、仕掛残高25億円。
回収一般費0(2億2500万円分は未回収)
工数を追加したが、進捗率を回復させることはできなかった。
翌年も予定以上の工数が見込まれる。
3年目、売上0、原価15億円、仕掛残高40億円。
回収一般費0(2億2500万円分は未回収)
前年と同じ工数では、進捗率を回復させることはできなかった。
完成へ向けて、さらなる工数追加が必要と見込まれる。
4年目、売上50億円、原価20億円、売上原価60億円、
一般費9億円、売上総原価69億円、損益19億円の赤字。
遅れの回復のため、工数を追加、短期のため予想以上に原価高となった。
現実にはこれくらいの赤字はざらだ。
さて、同じ作業を工事進行基準で見てみよう。
1年目、原価10億円なので、原価進捗率は25%、
売上12億5千万円、原価10億円、一般費1億5千万円、
売上総原価11億5千万円、損益1億円の利益。
2年目、原価は15億円、原価進捗率は37.5%(累計では62.5%)
売上18億7500万円、原価15億円、一般費2億2500万円、
売上総原価17億2500万円、損益1億5千万円の利益。
この時点ですでに実際の作業は遅延しているにもかかわらず、
原価進捗率上はむしろ予定以上に進行しているとしか見えない。
3年目、原価は15億円、原価進捗率は37.5%(累計では100%)
売上18億7500万円、原価15億円、一般費2億2500万円、
売上総原価17億2500万円、損益1億5千万円の利益。
遅れは回復していないが、予定原価を消化していまい、
原価からだけ見ると完成しているはずとなっている。
4年目、原価20億円、原価進捗率は50%だが累計は100%を超えている。
実態としての売上は0、原価20億円、一般費3億円。
損益は23億円の赤字。
こういう場合、どういう計算になるのかわからないが、
仮に売上20億円を計上したとしても、実際には値増しなど無いわけで、
仕損費とするのだろうか。
いずれにせよ、4年トータルで見れば、売り上げ50億円、赤字19億円は
変わらないが、工事進行基準の場合、3年にわたって、黒字が出ている。
つまり、通算で赤字、本来赤字であるにもかかわらず、中間期では黒字となり、
法人税がかかると言うわけだ。
こういう場合、遡って売上の減額訂正ができるのかどうかは分からないが、
上記の展開が正しいとすると「最終的な大赤字の作番からでも税金が取れる」
これが果たして正しいやり方なのか。
工事進行基準がガラパゴスからの脱却なんて言うのは、
道路特定財源が温暖化対策だと言うよりもひどい詭弁なんではないだろうか。
***
「プレSE奔走す」 ISBN4-434-07543-8 1200円
セブンアンドワイ
楽天ブックス
その他オンライン書店で。
紀伊国屋(新宿)、ジュンク堂(池袋)には店頭在庫もあります
工事進行基準をとらなくても、
要件定義、見積もり、作番管理、作業高管理を
きちんとやることができるし、やらなくてはならないと書いた。
また、通算で見ると、普通のいわゆる現金主義でやっても、
工事進行基準でやっても同じになると言う例を示した。
では、受託システム開発でよくある大型の赤字の場合を見てみよう。
前回と同じく、ある受託システム開発を作業期間4年、受注額50億円。
見積原価40億円、一般比率15%、総原価46億円としよう。
前回は、毎年10億円の作業高を4年にわたって続けていった場合を
考えてみたが、今度は2年目からトラブルが発生して、
最終的に大赤字になったとして考えてみよう。
作業高は、1年目から順に、10億、15億、15億、20億と計60億、
通算で10億円の粗利赤字だ。
そして、作業の実際の進捗は、20%、45%、70%、100%とする。
一応納期は守れたとするわけだ。
普通の個別原価計算では、
1年目、売上0、原価10億円、仕掛残高10億円。
回収一般費0(1億5千万円分は未回収)
進捗が予定の1/4に達していないので、
翌年度以降、工数を追加して進捗を上げる計画とする。
2年目、売上0、原価15億円、仕掛残高25億円。
回収一般費0(2億2500万円分は未回収)
工数を追加したが、進捗率を回復させることはできなかった。
翌年も予定以上の工数が見込まれる。
3年目、売上0、原価15億円、仕掛残高40億円。
回収一般費0(2億2500万円分は未回収)
前年と同じ工数では、進捗率を回復させることはできなかった。
完成へ向けて、さらなる工数追加が必要と見込まれる。
4年目、売上50億円、原価20億円、売上原価60億円、
一般費9億円、売上総原価69億円、損益19億円の赤字。
遅れの回復のため、工数を追加、短期のため予想以上に原価高となった。
現実にはこれくらいの赤字はざらだ。
さて、同じ作業を工事進行基準で見てみよう。
1年目、原価10億円なので、原価進捗率は25%、
売上12億5千万円、原価10億円、一般費1億5千万円、
売上総原価11億5千万円、損益1億円の利益。
2年目、原価は15億円、原価進捗率は37.5%(累計では62.5%)
売上18億7500万円、原価15億円、一般費2億2500万円、
売上総原価17億2500万円、損益1億5千万円の利益。
この時点ですでに実際の作業は遅延しているにもかかわらず、
原価進捗率上はむしろ予定以上に進行しているとしか見えない。
3年目、原価は15億円、原価進捗率は37.5%(累計では100%)
売上18億7500万円、原価15億円、一般費2億2500万円、
売上総原価17億2500万円、損益1億5千万円の利益。
遅れは回復していないが、予定原価を消化していまい、
原価からだけ見ると完成しているはずとなっている。
4年目、原価20億円、原価進捗率は50%だが累計は100%を超えている。
実態としての売上は0、原価20億円、一般費3億円。
損益は23億円の赤字。
こういう場合、どういう計算になるのかわからないが、
仮に売上20億円を計上したとしても、実際には値増しなど無いわけで、
仕損費とするのだろうか。
いずれにせよ、4年トータルで見れば、売り上げ50億円、赤字19億円は
変わらないが、工事進行基準の場合、3年にわたって、黒字が出ている。
つまり、通算で赤字、本来赤字であるにもかかわらず、中間期では黒字となり、
法人税がかかると言うわけだ。
こういう場合、遡って売上の減額訂正ができるのかどうかは分からないが、
上記の展開が正しいとすると「最終的な大赤字の作番からでも税金が取れる」
これが果たして正しいやり方なのか。
工事進行基準がガラパゴスからの脱却なんて言うのは、
道路特定財源が温暖化対策だと言うよりもひどい詭弁なんではないだろうか。
***
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