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工事進行基準(その6) 誰に都合のいいルールか

2008-01-29 21:12:41 | IT
さて、いままで受託システム開発における個別原価計算の仕組みと、
原価管理(作番管理)について述べてきた。

大型案件が簡単に赤字転落する危険性をはらんだものだということを
お含みおきいただき、工事進行基準とのと違いを書いていこう。

この例示をするにあたって、
なかなかきりのいい数字を思いつかなかったので、
現実とは多少ずれてしまう。

売り上げ利益率が非現実的だとか、原価の進捗率はそうではない、
などとお思いになるやもしれん。
しかし、それを根拠にして、
ここでの議論自体が無意味だと結論付けないでほしい。

全体の話の流れは正しいと信じている。

***

ある受託システム開発を作業期間4年、受注額50億円。
見積原価40億円、一般比率15%、総原価46億円としよう。

全体の利益は4億円、売上利益率8%としたが、
あくまで計算しやすいように数字を整えてある。

これを普通の個別原価計算で処理したとする。
4年間一定の進捗で進行し、予定通り完成売り上げたとする。

1年目、売り上げ0、原価10億円、仕掛残高10億円。
この原価に相当する一般費1億5千万円は未回収となり、
この会社の業績には利益を減額する効果がある。

2年目、売り上げ0、原価10億円、仕掛残高20億円。
この年も1億5千万円の利益圧迫効果をもたらす。

3年目、売り上げ0、原価10億円、仕掛残高30億円。
やはり、1億5千万円の利益を圧迫。

4年目、売り上げ50億円、原価10億円、
累計仕掛40億円に加え一般費6億円を売上原価として計上、
この作業での利益は4億円。
ただし、一般費は4億5千万円分が過回収となり、
会社全体の利益を押し上げる効果がある。

つまり、4年トータルで見れば、一般費の過不足は相殺されるが、
個別年度ではでこぼこが出る。

次に、工事進行基準で見てみよう。
工事進行基準は、原価の進捗率を根拠にして売り上げ計上するので、

1年目、原価10億円、これは全体の1/4なので売上も1/4として、
売上12億5千万、原価10億円、一般費1億5千万円、利益1億円。
なお、仕掛りは0となる。(売ってるからね)

2年目、同じく原価10億円とすると、
売上12億5千万、原価10億円、一般費1億5千万円、利益1億円。

3年目、同じく原価10億円とすると、
売上12億5千万、原価10億円、一般費1億5千万円、利益1億円。

4年目、同じく原価10億円とすると、
売上12億5千万、原価10億円、一般費1億5千万円、利益1億円。

4年間合計で見れば、売り上げ50億、総原価46億、利益4億は変わらない。

個別の年ごとの損益が変わるだけだ。
しかし、税務当局にしてみれば、税金を3年間とりっぱぐれることになる。

どうせなら早く取ってしまえ、利益確定しているようなもんでしょ、
と言うのが本音ではないのか。

さらに、当初予定通りならまだしも作業がうまくいかず、
赤字作番になってしまった場合はもっと悲惨だ。

***

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