ばぬあ通信 ―バヌアツ共和国 青年海外協力隊活動記―

青年海外協力隊としてバヌアツ共和国タンナ島で小学校教諭として2007年から2年間活動しました。未知の世界をあなたへ☆

no.72 4.8 変わりゆくタンナ

2009-04-08 18:19:25 | Weblog
みなさんこんにちは!タンナはここ数日通信状況が悪く、メールの送受信ができませんでした。思い返してみれば私がタンナヘ赴任したときはそれがいつものことで、家から約40分のところにある公衆電話へメールの送受信をしに行って「あー今日はダメかぁ。仕方ないから明日また来るかな。」というのが日常茶飯でした。そう思うとタンナはこの1年半で大きく変化しました。今日はそれについていくつかの例を挙げてお話したいと思います。

まず一番の変化は携帯電話が使えるようになったことです。それまでは私のタンナでの通信手段はもっぱら公衆電話で、村の公衆電話に電話がかかってきたときは村の人に大声で「テツヤ、テレフォーン!」と呼ばれ、約50メートルくらい離れている公衆電話へダッシュ!ということがよくありました。とはいえ私の住むロカタイ村は電波状態がよくないので、今でもときどき「テツヤ、テレフォーン!」がありますが、そのたびになつかしく、そしてなぜか少し嬉しくなってしまいます^^

もう一つの大きな変化は物がたくさん入って来るようになったことです。1年半前はタンナで買える物は本当に限られていて、月に一度貨物船が来たときだけお店に商品が溢れ、そのときが買い物のチャンス!という感じだったのに、今では3艘の貨物船がしょっちゅうタンナに出入りし、物がなくなるということはほとんどなくなり品揃えも充実しました。価格は首都と比べれば割高ですが、わざわざ首都で大量に買いだめをしてタンナへ戻る、という必要もなくなりました。

そしてここ最近の大きな変化はタンナヘたくさん自動車が入ってきたことです。そのほとんどは後ろが荷台になっているピックアップトラックなのですが、それがすごい勢いで増え続けています。もちろんここでも車は高いものです。それがこんなにタンナへ入ってくるなんて・・・。どこにそんなお金が?というのが正直な感想です。

他にもたくさんの変化があったのですが、総合して言えることは生活が近代化しているということです。「それはいいことだ」と思うかもしれませんが、実は私は全く反対の感想をもっています。タンナではほとんどの地域で今でも自給自足に近い生活をしています。多くの家庭で当然のように薪で料理をしています。そこへ起きた急激な近代化。正直な感想をいうと、この1年でタンナの人は個人差はあれどみなすれたような気がします。

この1年の変化を共に過ごしてきた私は、どう考えても「彼らの生活が豊かになった」とは言いがたいのです。これらはみんな先進国の価値観での「豊かさ」であって、ここバヌアツでの「豊かさ」ではないと感じます。鳥は空を飛ぶように、魚は水を泳ぐように、それぞれに適した暮らしや生活方法があるのではないか、と思うのです。確かに携帯電話は便利で、おしゃべり好きのバヌアツ人にとってすでに欠かせないものになっています。しかし、人は携帯電話代を払うために生きているのではありません。日本には日本の、バヌアツにはバヌアツの、先進国には先進国の、途上国には途上国の分相応な暮らしがある。私たち先進国での生活を基準としたものさしで彼らの暮らしを見たら「なんてかわいそう」という人もいるかもしれない。でもそれは誤解です。彼らには彼らの暮らしがあるのです。中には生きるために先進国の援助を必要としている国があることも事実です。しかし、もともとそこで人は生活していたのです。

私の配属先のロカタイ小学校には中国の援助によって作られ届けられた文房具が山ほどあります。オーストラリアの観光客がくれた文房具もたくさんあります。ノート、ペン、鉛筆、消しゴム、定規、分度器、色鉛筆、カラーペンなどなど何でもです。そして大切にされることもなく、ぞんざいに扱われています。日本人の私だからそう見えるのかもしれませんが、やはりそれが現実だと思います。

物をあげることで人を幸せにできるのなら、とっくに世界中が幸せになっているのではないだろうか。私は物よりも私の心をここへ置いていきたい。それを彼らが望んでいないとしても、それが無駄になるとしても、それが彼らを不幸にすることはない。そして多少なりとも彼らを幸せにできるのではないかと思うのです。

姪のアヤが大人になる頃、この国は、この世界は、この地球はどうなっているのか。本当に豊かな世界になるだろうか。この私の心配が思い過ごしになることを祈りつつ、未来は私たち自身の手の中にあるということを忘れてはいけない、と思います。

久々?に長くなってしまいました(^^ゞ日本は桜の季節ですね!その美しい四季も日本だからこそ感じられるもの。日本にいる方は存分に春を満喫してくださいね!ではまた!Ale!(^o^)/


写真はロカタイ小にあるノートやコピー用紙の山です。ロカタイ小の全校児童は約140名。どう考えても使いきれる量ではありません。物が溢れる途上国の実態を目の当たりにしたとき、なぜか胸の奥が痛くなりました。

最新の画像もっと見る