ばぬあ通信 ―バヌアツ共和国 青年海外協力隊活動記―

青年海外協力隊としてバヌアツ共和国タンナ島で小学校教諭として2007年から2年間活動しました。未知の世界をあなたへ☆

no.53 10.15 公教育の地域間格差

2008-10-15 14:30:25 | Weblog
みなさんこんにちは!今日の午後は丘の上にある巡回先の小学校でワークショップを行う予定だったのですが、約束の時間に行ってみたらすでに校長は出かけた後・・・。どうやらすっかり忘れられたようです(^_^;)また明日行って、もう一度予定を組みなおそうと思います。

さて問題です。次に挙げるの物の共通点は何でしょう?
ネットにつながったパソコン、大きいコピー機、職員室、窓のガラス、計算ドリル用ノート、のり(文房具)、多目的ホール、制服、スクールバス。

正解は・・・「バヌアツ第2の都市ルーガンビルの小学校にあって、タンナのロカタイ小学校にないもの」でした。さらにこれに「学習するという空気」と「教員のやる気」を付け加えてもいいかもしれません(*_*)

先日バヌアツ北部のサント島ルーガンビル市で行われたワークショップの際、個人的にルーガンビルの小学校を視察してきました。それに加え違う島で同じように算数科の指導をしているJOCVと話をしたことでタンナ島の実態がさらに見えてきました。まず、ロカタイ小学校では制服を着ている子どもを見ることはまれです。毎週の全校集会で校長が制服を着るように言っていますが、子どもたちも教師もそれを徹底する気はないように私には見えます。しかし、ルーガンビルでみた小学校では制服を着ていない子どもを探すほうが困難でした。私が見た限り、1年生に一人いただけ。この点からも教育に対する関心の違いを感じました。

さまざまな違い中で、私が一番驚いたのは「言葉」です。1年生の教室でも英語で授業が行われ、わかりにくいところは説明をビスラマ語でしていました。つまり1年生はビスラマ語を理解しているのです。タンナでは考えられません。また子ども同士がビスラマ語で会話をしているのです!!!タンナではみな学校でも村でもローカルラングレッジで会話しています。村の人のビスラマ語を耳にするのは私と話すときくらいです。私はずっとバヌアツ全体がこのような感じなのだと思っていました。しかし、ほかの隊員に聞いたところ、どうやらこれはタンナ島があるバヌアツ南端の島々だけのようなのです。

タンナでは公用語のビスラマ語が通じないこともよくあることです。表向きは学校内では英語を話すようにと教員は言っていますが、教員同士の会話でも教員と生徒の会話でも授業でもローカルラングレッジが使われています。学校においても数字でさえローカルラングレッジが使われているので、1を「One(ワン)」ではなく「Karena(カレーナ)」ということもしばしばあります。ルーガンビルの小学校の子どもたちとロカタイ小学校の子どもたちの学力の差は言葉では言い表せないくらい開いています。正直、私一人の力ではには10年かかってもこの差を埋めることはできないと思います。もちろん校舎などのハード面の差も大きいですが、それよりも言葉の問題の方が深刻だと私は感じました。この言葉の問題は私から見ると学校に限らず、この島のすべての経済発展・活動等が滞る原因になっているように感じます。

どこでも同じ水準の教育が受けられるといういのが公教育であり、それを実行するのが公立学校です。ここバヌアツではこの考えはまったく当てはまらない。バヌアツにきて日本の公教育がとても優れているものだということを毎日痛感しています。「教育に僻地はない」日本では当然のことですが、途上国ではそれは夢の話なのです。

毎日授業をするたびに言いようのない空虚感に襲われます。まだまだ私は苦しまなくてはならない。もっと努力が必要なのだと痛感します。今日の5年生は20+1も9-7も正しくできませんでした。日々課題は山積です。明日は巡回先での授業です。巡回先の学校では足し算と引き算を徹底的に指導していこうと思っています。

日本はもうすっかり秋の装いなのでしょうか。タンナは暑い日が増えてきました^^みなさんもくれぐれも体調を崩さぬように気をつけてくださいね。ではまた!Ale!(^o^)/

写真はサント島ルーガンビル市の小学校の1年生のクラスと職員室。職員室にはなんと「生きている」パソコンが4台もありました!ひょえー!!!

no.52 10.10 この国でできること

2008-10-10 14:08:12 | Weblog
みなさんこんにちは。ご無沙汰しています。お変わりありませんでしょうか?先月から今月の初めにかけてバヌアツ全州の現地教員対象のワークショップのため任地タンナ島を約2週間離れていました。少し前まで寒かったタンナですが、最近は暑くなる日も増え夏の訪れを感じさせます。とはいえ、夜は今でも厚手のブランケットが欠かせません。

早いものでバヌアツへ赴任して1年が経ちました。この1年、いいこともそうでないこともたくさんありましたが、たくさんの人に支えられて無事に任期半分を終えることができました。ありがとうございます^^

さて、ここで問題です。7-5+2=?そうです、正解は「4」。しかし、バヌアツ人の多くはこの問題の答えを「0」と言います。この国では長い間BODMASという計算の手順を使ってきました。これはそれぞれの頭文字、B(ブランケット・かっこ)・D(ディビジョン・割り算)・M(マルチプリケーション・掛け算)・A(アディション・足し算)・S(サブトラクション・引き算)の順で計算をするというものです。なので、7-5+2は先に5+2をしてしまうために答えが「0」となってしまいます。

バヌアツJOCVではこの間違った手順・計算方法を正すためにさまざまな取り組みを全国規模で行ってきました。徐々に正しい認識が広まると同時に、未だに正しい計算手順が踏めない教員もたくさんいます。現地教員や子どもたちに対して「7つのりんごを持っています。5つ食べました。そのあと2つ買いました。りんごはいくつあるでしょう?」という文章題に合わせ、絵を描いて説明してやっと一時的に理解してもらえるといった感じです。しかし、今まで長い間の習慣を直すことは難しく、また一番問題なのは、この国では7-5+2の答えが「4」だろうが「0」だろうが大した問題ではないということなのです。もともと生活に数字がなく、また算数を生活に活用していないので、これは教室の中だけのことであってそれが生活や経済、人生にかかわることとは考えられていないのです。日本ならば「基礎的な計算ができなかったら生活できないよ」とか「大人になったときに困るよ」と言うこともできるし、何より算数は私たちの心の中に「できるようにならなければならないこと」という考えが漠然とでもあるのですが、それがバヌアツ人にはほとんどないように感じます。

もちろん、算数が大切なことはみんなわかっているはずです。しかし、それが生活に直結していないのでバヌアツ人の多くは計算ができないことや正しい答えを導けないことを不便だとか不自由だとは感じていない。感じる必要がないといったほうが適切かもしれません。教員も特別子どもたちにわかりやすく算数を指導したいとは思っていない中で(中にはそうでない人もいるはずです)いったい私は何ができるのだろうか、何をすべきなのかと毎日考えています。

今日教えた6年生は17-7をするときに、線を17本書いてその線のうち7本を消して、残りの線の数を数えていました。数の概念も計算を頭の中でするといった考えさえもないのです。それに危機感を感じる(感じ取れる)教員も皆無に近い。小学校にいるうちにせめて足し算・引き算と九九だけでも身につけて欲しいのですが、それもこの国の実態から考えたら高望みなのかもしれません。

いったい私には何ができるのか、何をすべきなのか。

技術移転をしたくても私が授業をすると担任は教室を出て行ってしまう。悪気なく。その背中をみながら、無力な自分を痛いほど感じる。自分に負けたくないと思いながらも、路頭に迷うだけの現状を打破する方法を探しながら残り半分になった任期を全うしたいと思います。

最近、丘の上にある小さな学校に巡回指導を始めたのですが、そこでは公用語のビスラマ語も「???」という子どもたちがたくさんいて、親やコミュニティーが学校教育は必要ないと考え、学校へ通っていない子どもたちもたくさんいるそうです。そんな中での算数指導のあり方とは何なんだろうかと考えさせられます。う゛ー!負けないぞー(>_<)o!

今日驚いたこと!今までずっと現地で買った歯磨き粉を使っていたのですが、今朝から日本製のものに変えました。・・・!!!すごいよ、メイドインジャパン(゜゜)!歯の裏のつるつる具合が半端じゃない!気持ちいー♪ちょっと感動してしまいました(^^ゞではまた!Ale!(^o^)/

写真は新しい巡回指導先の丘の上のラトゥーン小学校です。


no.52 画像

2008-10-10 14:00:51 | Weblog
やはり低学年は机・イスはありません。しかもなぜか4年生の教室には机がありませんでした(-_-;)3年生はあるのに・・・。