生きて帰ってきた男ーある日本兵の戦争と戦後 小熊英二 *****
帰ってきた男とは「小熊謙二」、1944年11月に徴兵され、終戦とともにシベリヤ抑留、1948年8月に帰国を果たした筆者の父である。抑留経験者の手記はいくつか読んだことがあるが、手記...
科学史の核心 小山慶太 ***
近代歴史の流れの中で、転換点となる時期には経済的発展とともに科学技術の発見が集中してもたらされることがある。本書はイギリス、フランス、ドイツ、アメリカの各国で17世紀以降に起きてき...
パンデミック vs 江戸幕府 鈴木浩三 ***
江戸時代は鎖国政策が取られていたとはいえ、欧州と中国とは貿易でつながっており、特に19世紀に入ってからは頻繁に海外船が日本の海岸線に到達して人々との接触があった。公衆衛生や感染症の...
人間らしさ 文明、宗教、科学から考える 上田紀行 ***
筆者は東工大の教授、ゼミの学生たちと会話する中で、彼らが自分のことを客観的にしか語らず、人との関係も高所から見下ろすように表現するのを聞いて危機感を持った。他人との関係を自分ごとと...
群島の文明と大陸の文明 小倉紀蔵 ***
日本論には、西洋(諸国)と日本を比べたもの、日本と中国を比べたものなどがあるが、世界の中で比べれば比較的類似点が多い韓国文化と日本文化の違いを踏まえた文化比較論が少ない。「縮み志向...
日本書紀だけが教える「ヤマト王権のはじまり」 伊藤雅文 ***
遣隋使を初めて送った推古朝、当時の隋では、ヤマト王権に、暦、貨幣、歴史書、政治制度、徴税、法律などあらゆる国家としての仕組みがないことを指摘された。その後、60年を経た白村江の戦い...
繰り返す日本史 二千年を貫く五つの原則 河合敦 ***
1500年にわたる日本史には共通する日本人たちの対応があるというのが本書。それは次の五つで、危機への過剰対応、貴種に敬意、祟りに穢れ、和を尊ぶ、学ぶ意欲。過去の教訓は次に活かされな...
明治維新で変わらなかった日本の核心 猪瀬直樹、磯田道史 ***
日本の通史は土地所有とその管理機構の歴史である、という視点から古代の律令制、鎌倉・室町時代の地頭・守護、江戸時代の百姓・武士と大名・幕府の関係から考察する対談。弥生時代以降は、農地...
観応の擾乱 亀田俊和 ****
鎌倉時代から建武の新政を挟んで室町時代への移行期というのは日本史好きでもなかなか馴染みがない場面がある。本書テーマである「観応の擾乱」は1350-1352年ころに起きた足利兄弟尊氏...
婆娑羅大名 佐々木道誉 寺田英視 ***
「観応の擾乱」を読んでいて気になる人物がいた、婆娑羅大名と呼ばれた佐々木道誉である。高校の日本史教科書で「騎馬武者像 足利尊氏」と解説されていた絵は、大鎧を着て太刀を腰に帯びながら...