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てっしーずのおでかけ日記

観たこと、聞いたこと、気づいたことを書くよ!

オバマ・ショック

2009年04月04日 | 本の記録
scarface ending  スカーだけにXが象徴的に使われているのが印象的(1932)

オバマ・ショック
越智道雄, 町山智浩
集英社新書
http://books.shueisha.co.jp/CGI/search/syousai_put.cgi?isbn_cd=978-4-08-720477-3

本の感想です。
めずらしくベストセラーものです。
前に読んだ町山智浩の本もよく売れていたものだったんですけど。
それにしても日本のオバマブームというのは何だったんでしょうね。
もう過ぎ去った感もありますが、スピーチでのいくつかのフレーズと小浜市と何だか珍しく明るい話題として、意味なく日本人が食らいついていました。
スピーチがすごかったとCDやDVDまで出てましたけど、そんな風に日本人がアメリカ人のスピーチに興味を持ったことなんかなかったですよね。
確かにオバマのスピーチは良かったかもしれないけど、アメリカの過去の大統領にもうまいとされている人は少なくなくて、大学の英語音声学か何かの授業で聞かされた覚えがあります。
でも、今回は突然のブーム。
しかも、スピーチの内容にはまったく興味がなく、いくつかのフレーズや聞き取りやすい英語ばかりが注目されたというのも不思議でした。

さて、この本はオバマに関する本ですが、オバマの経歴や過去の話はその一部で、なぜオバマで今アメリカに求められたか、これからのアメリカはどうなっていくのかを読み解いたもの。
そのことが最初は意外だったんですが、そういえば、私たち日本人が求めているのは別にオバマ本人の情報じゃないんだよなあ、と気付きました。
彼によって日本も少しは景気がよくならないかなあ、とか、アホな戦争が終わらないかなあ、といったことを考えている人が多いわけで。

この本を読むとオバマ登場は二大政党のバランスの変わり目にうまくフィットしたことが大きかったことが分かります。
さすが新書だけに読みやすくてあっという間に読めるんですが、それだけに話があまり脇道に逸れないのが残念といえば残念。
対談のひとつの魅力というのは脇道に話が逸れて、それぞれの人のパーソナリティが見える瞬間じゃないかと思うので。
そういった意味で面白かったのは町山智浩のお父さんの話。
とんでもなくアメリカかぶれで「暗黒街の顔役」を見たのがそのきっかけだったという話。
アメリカン・ドリームの崩壊について書いている町山智浩のお父さんがアメリカン・ドリームにひたすらあこがれていたなんて。
それなのに一度もアメリカに行くことがなかったというのも時代を感じさせます。
「暗黒街の顔役」はベン・ヘクトが脚本を書いたギャング映画の名作という印象しかなかったのですが、ラストが数ヴァージョンある不思議な映画でした。
レンタルで借りたヴィデオは最後に数ヴァージョンのラストが続けて入っていました。
ラストで主人公の情けない姿を思い切り見せるヴァージョンは強烈だったなあ。(ひ)

やつらを喋りたおせ!

2009年03月27日 | 本の記録
Frank Zappa - 07 - Harry, You\'re a beast 最後のフレーズはレニーの言葉らしい

やつらを喋りたおせ! ― レニ-・ブル-ス自伝
レニ-・ブル-ス 藤本和子
晶文社 (1977/11 出版)
http://bookweb.kinokuniya.co.jp/guest/cgi-bin/wshosea.cgi?W-NIPS=9833032222

古本屋で偶然見つけて喜んで買いました。
絶版で手に入らないだろうと思っていたのに結構安い値段で嬉しかった。
レニー・ブルース作で翻訳が藤本和子というのだから読みたくもなるというものです。
藤本和子というと当然演劇関係の本を訳してもおかしくないわけですが、孤高のコメディアン、レニー・ブルースの本を訳すというのは意外といえば意外でしょうか。

それにしてもタイトルだけでもすごいインパクト。
レニー・ブルースについては当然ながら間接的な知識ばかりで実際どんな感じだったのかは分かりません。
亡くなる一年前に出版された、この本はいかにもレニー・ブルースという胡散臭さに満ちた一冊。
子供の頃の貧しい生活、海軍の水兵としての生活、元ストリップ嬢のハニーとの出会いと結婚生活、いかさま神父として成功した話というところまでは、予想もつかない意外な展開と、レニー・ブルースという人物の知性にあふれた話が途中までつづいているのに、妻との離婚、薬物使用をめぐる裁判の話から突然、同じ話の繰り返しになっている。
この後半の重苦しさは彼の当時の心情を表したものなのか、すべてが冗談でしかないのかさえ分からなくなってくる。
不思議なバランスだなあ。
この本が出版された当時の人びとにとってはレニー・ブルースの過去なんてどうでもよくて、裁判の真実が知りたかったということなんでしょうか。
それとも、裁判のことしか頭にないくらい彼の頭に中が混沌としていたということなんでしょうか。
読めば読むほぼレニーという人間がますます分からなくなってくる。
もう少しいろいろ本や映像を見たいけど、彼のすごさは分かるんだろうか。
それにしても、この邦題はすごいな。
How to talk dirty and influence people.をこんな訳が出来るなんて。
この邦題をかっこわるいなんて書いている人がいたけど、それはどうかな。(ひ)



魂のゆくえ

2009年03月26日 | 本の記録
Gil Scott-Heron - The Bottle

魂(ソウル)のゆくえ
ピーター・バラカン著
アルテスパブリッシング
http://www.artespublishing.com/books/903951-05-8.html

久しぶりに本の感想を。
昔、新潮文庫から発売されていた名著の復刊です。
今でも文庫の方もちゃんともっているんですが、こちらも買ってしまいました。
1800円プラス税という値段なのでずいぶん高くなった気がしますが、それは仕方がない。
20年近く経っている本ですから、かなり内容も改訂されてますし。
今も昔も私の音楽の聴き方は相当適当。
いいものが聴ければいいと言うのが基本姿勢なので、音楽の知識が圧倒的に欠けているし、そんなに興味がないみたいです。
今回も読んでいるときは「なるほど、このレーベルはこうして誕生したのか」とか思ったんですが、もうすでにかなり忘れています。
でも、ギル・スコット・ヘロンのことが書かれているのを読むと、彼の歌詞をちゃんと自分で訳して読んでみたいなあという気になったり(昔、ピーターさんが自分の番組で対訳プレゼントをしてたなあ、そう言えば)、今や忘れ去られた存在になりかけているロバート・パーマーをもう一度聞き直したいなあという気になりました。
しかし、時代は2009年になったんですが、私の音楽に対する興味はこの本が最初に出た80年代末頃がピークだったようです。
その後はソウル・ジャズ、ジャズ、カントリーというところに興味は移っていって、ある意味、新しい音楽でなければ何でも良いという感じになっています。

この本で一番印象的なのは、黒人が白人と同じような生活をすることで音楽的にクロスオーヴァーする部分が出て面白くなったのに、それが行くところまで行くと白人と変わらなくなりつまらなくなってしまうというくだり。
多くの文化がそうやって、新しいものを生み出すと同時にオリジナリティを無くしていく。
そういうものなんでしょうが、その先のソウルやロックがどこにいくかは、20年経っても全然答えが出ていない。
私のようなオールドタイマーにはとてもついていけない凄いものはいつ出るんだろうか。

全然関係ない話ですが、オバマ大統領のお薦めCDはタージ・マハールとトゥマニ・ジャバテのCDなんですね。
Kulanjan/Taj Mahal&Toumani Diabate
http://www.bk1.jp/product/80915688

他にも本を紹介しているらしいんですが記事が見つからないので分からない。
それにしても、センスのいい大統領だよなあ。
びっくり。(ひ)

アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない

2009年01月05日 | 本の記録
Homer Simpson tries to vote for Obama


アメリカ人の半分はニューヨークの場所を知らない
町山 智浩
文藝春秋
http://www.bunshun.co.jp/book_db/3/70/75/9784163707501.shtml

発売されてすぐに買おうとしたら、すぐに本屋で見つからなかったんですが、相当売れていたんですね。
何だか知らんが、アメリカのせいで偉く不景気になっているらしい。
映画や音楽とアメリカの情報は大量に入ってきているけど、一般のアメリカ人暮らしぶりや考え方といった日常に関する事って、自分から知ろうとしない限り、なかなか知る機会がない。
そんな知られざるアメリカのいろいろな側面を紹介してくれるのが町山智浩な訳ですから、そりゃあ売れるね、今という感じです。
この本は他の本に比べると娯楽色が薄くて、ブッシュ時代にアメリカがなぜ駄目になったのかをいろんな側面からコンパクトに説明してくれています。
記事がコンパクトなのは雑誌に載った短い原稿をまとめたものだからなのですが、読みやすさという点ではそれがいいのかもしれません。
大学の教授が書いた本だと多すぎる資料を基に持論を延々と展開していたりして、私のような学のない人間にはとても読んでいられない。
だいたい、統計や資料を多く持ち出している本って案外当てにならないですしね。
それにしても、もう少し詳しい話を知りたいという人はTBSラジオの「ストリーム」を聴くという手もありますが。

最近、デトロイトが大変なことになっているというニュースを見ていたら、地元のお店が壊滅状態なだけでなく、ウォルマートまで潰れてしまったと言っていたので驚きました。
この本でもウォルマートは大資本にものを言わせ、地元産業をあっという間につぶして、ひとり勝ち状態を作った会社(日本で言うとイオン? )として紹介されています。
でも、今やその会社が一部地域で撤退する状態にまでなっているんだから、アメリカの病状はどんどん進行していると言うことでしょうか。

どうにもならない状況のアメリカですが、それでも批判をすることがマスコミの権利として存在しているというのは素晴らしいと思います。
日本だと昨年は特定の新聞のことをやたら批判している議員がいましたが、マスコミにはこういう人間と思い切り対決して欲しいし、マスコミは意見を言わず客観的事実だけを報道していればいいという空気というのがあって怖い。
そういう意味で「シンプソンズ」がFOXを批判する内容の番組を放送したなんていう話は最高でした。
日本にそんなことをできる番組は存在しないよなあ。(ひ)

上陸

2008年12月19日 | 本の記録
I Scream, You Scream, We All Scream for Ice Cream 


上陸 田中小実昌初期短篇集
田中 小実昌 著
河出文庫
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309407579

田中小実昌の翻訳やエッセーは結構読んでいるのに小説はこれが初めてかもしれません。
これが初期の短編か、とため息のでるような素晴らしいものでした。
書かれたのが1950年代ということもあり、戦後が舞台になっている物語がほとんど。
一流大学に入りながらも学校にろくに行かず、アルバイトする若者が登場するのは作者自身を反映しているんでしょうか。
戦後すぐの日本に満ちていただろう、今の時代とはまったく異なる空気感を漂わせるストーリー自体も面白いのですが、すごいのは小説であることを破壊するようなことを淡々とやってしまっていること。

例えば「その十日間のこと」という短編は、戦後、米軍基地関係の仕事をする者たちがストライキに参加せざるをえなくなった10日間の話。
無駄だとわかりながらもストライキをする、3人の登場人物の会話と心理描写が続いている。
わずか50ページほどの短編小説なのに3人の心理がつぎつぎと描写されていく。
読み進めていると、ああこれは別のやつが考えていることなのか、なんて後から気づいたりするくらいなのですが、それぞれの心理が描かれていけばいくほど、彼らが他の人物に対してだけでなく、自分自身の気持ちや考えがわからないことだけが明らかになっていきます。
だからと言って文学的に絶望するなんてことはなくて、それぞれの人物が自分の不安や焦燥をごまかしつつ、他人や自分を侮蔑しながらも、淡々と今までと同じ生活を送っていく。
小説が描かれている時間内に事件というほどの事件は何も起こらないのに、登場人物の心の中のうねる様な動きだけが描かれる。

と書いているうちに、これって田中小実昌が翻訳したハードボイルド、ミステリーに近いものがあるんだと気づきました。
話は変わりますが、いろいろと検索しているうちに、こんなものを見つけました。
殺人混成曲
http://home.att.ne.jp/surf/ikku/bk2.html
http://www.aga-search.com/1004-2marionmainwaring.html
■“リヴァプールからニューヨークへ向けて出航したイギリスの豪華客船に、偶然乗りあわせた9人の探偵、これがなんとクイーン、クリスティー、ガードナー、スピレイン、セイヤーズといった大家たちが創りだした、おなじみの名探偵たちなんです。これで事件が起こらなければどうかしている。果然殺人が起つて名探偵9人が演ずるてんやわんやの大騒ぎを、イギリスの女流新人マナリングは、それぞれの作家の文体模写で書きわけます。こちらはそれぞれの作家に通じた訳者9人が、芝居もどきに役を受けもつて、味を出そうという新趣向、これこそ探偵小説始つて以来の奇抜で洒落た作品です。(1959年9月号『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』広告ページより)”
■エラリイ・クイーン(青田勝)、メイスン弁護士(田中融二)、マイク・ハマー(田中小実昌)、ピーター・ウイムジイ(中田耕治)、ネロ・ウルフ(森郁夫)、アプルビイ副総監(深井淳)、エルキュール・ポアロ(福島正実)、ロデリック・アレン(青木雄造)、ミス・シルヴァー(三樹青生)、演出(都筑道夫)

す、すばらしすぎる。
し、しかも今も手に入る本だなんて。
これは絶対買って読まないと。

演出が都筑道夫になっているから都筑道夫発のアイディアなんですかね、この翻訳家の夢の共演は。
とにかく読みたい。(ひ)



ブリックヤード・ブルース

2008年11月27日 | 本の記録
Keef Hartley Band - Roundabout


ブリックヤード・ブルース
キーフ・ハートリー 著
訳:中山 義雄
ブルースインターアクションズ
Keef Hartley "Journey Through The Blues"
http://www.bls-act.co.jp/books/show/994

これもイギリスに行く前に読み始めた本です。
キーフ・ハートリーというブルース・ミュージシャンの自伝で、50~70年代のイギリスの音楽を含む状況が伝わってくる非常に面白い本でした。
正直言って、イギリスのブルースはほとんど聞いてないんですよね。
ヴァン・モリソンはゼムよりもソロになってからの作品の方をよく聴いているし、クラプトンはどうも苦手でほとんど聴いていない。
クリームは大昔、千歳烏山の図書館でCDを借りて聴いたくらい。
フリーはいいと思うけどCDは1枚も持っていない。
でも、そんなことに関係なく、音楽に限らず、当時のイギリスの若者が何を考えていたのか、どんなことをしていたのかが生に伝わってきます。
ハートリーの母親との微妙な距離感が、日本人の親子関係とはちょっと違うもんだなあ、とか、時代や国によるドラッグとミュージシャンの関係の違いなんてことも考えさせられたりしました。

個人的に興味深かったのはイギリス人とブルースの距離感の問題。
ソウルにしても、ブルースにしても、アメリカから輸入した文化。
ラジオやテレビで取り上げられることがなく、レコードもごくわずかしか入っていなかったのに、それを貪るように聴いていたわずかな人間が自分たちでブルースの影響を受けた音楽を始めるようになる。
その中から、ブルース・ブレイカーズやZEPが登場すると、本国アメリカでは黒人ミュージシャンが軽視され、イギリスの白人ミュージシャンの人気が盛り上がっているという妙な状況になったわけです。
よく日本人は自国の文化を軽視して、他国の文化をありがたがる、というようなことが言われますが、それはどこでも変わらないものですね。

それにしても、この本のレコードガイドはすごい。
本の半分くらいはレコードガイド。
さすがブルースインターアクションズ。
ブルースインターアクションズのHPで見たんですが、恒松正敏は絵を描いているんですねえ。
名古屋で展覧会があるそうです。
http://www.p-vine.com/news/140

東京でも見られないかなあ。(ひ)


ロンドンの小さな旅

2008年11月20日 | 本の記録
ロンドンの小さな旅
出口保夫 文 出口雄大 イラストレーション
東京書籍
http://waga.nikkei.co.jp/comfort/life.aspx?i=MMWAg3044019072007

イギリスに行く前に買ったエッセイです。
東京書籍というと教科書のイメージがあるんですが、まさに教科書に載っていそうなエッセイ。
品が良い文章に、イギリスと詩に対する筆者の愛情があふれた文章。

イギリスに関する本というのはなかなかいいものがないんですよね。
書店に行ってもフランスに関する面白そうなものは多いのに。
大体、女性ひとり旅、ピーターラビット、ロンドンのおしゃれなティータイムとお買いもの、フットボール、豪華鉄道の旅なんて感じで全然ピンとこない。
頭が悪くて品格もないオヤジが楽しめる旅本なんて全然ないんですよね。
オヤジはツアーにでもおとなしく入っておけということ?
まあ、そんな話はともかく、男から見た等身大のイギリス関係の本がないから読んでみたんですが、うーん。
私のような下世話なやつにはどうもあわない本みたいです。
歴史ある建物のすばらしさ、英文学の紹介、イギリスの歴史を大切にする文化のすばらしさを紹介した文章ばかりがつづくばかりで息がつまりそう。
大学の教授にはこういう感じの人がいたよなあ、と学生時代を思い出しました。
やっぱりカズコ・ホーキの本くらい登場人物が生き生きとしてないとね。
後半に漱石の話が出てきて、留学時代の漱石はよく言われるほどのひどい状態にはなっていなくて自転車で町を散策することで気分転換できていたんじゃないか、ということが書かれていました。
こういう方からみたらそうなるんでしょうねえ。
うーん。

著者の息子、出口雄大のイラストとエッセーが時々登場するのが救いでした。
イギリスでの失敗談や、文書の端々から漂ってくる、イギリス大好きな父との微妙な距離感が伝わってきます。(ひ)


京都、オトナの修学旅行

2008年11月13日 | 本の記録
京都、オトナの修学旅行
赤瀬川 原平 著 , 山下 裕二 著
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480424778/

表紙のインパクトで思わず買ってしまいました。
かみ合っているんだか、かみあっていないんだか、よく分からない2人のやり取りが面白い本でした。
京都の定番の名所を修学旅行のノリで回ってみようという一冊です。
学生のときに名所旧跡をまわっても全然興味がないから無駄。
オッサンになって人生の酸いも甘いも知ってから見た方がいいに決まっているということで「オトナの修学旅行」になったという訳です。
といっても、曲者ふたりが出かける旅ですから、表面上は素直に旅を楽しみ仲良く会話していますが、その裏には利休と秀吉に負けない対決というか、応酬が潜んでいるのが面白い。
どちらが秀吉なのかは言いませんが、探りを入れつつ話題を振っていく山下裕二に対して、絶妙な答えを返す赤瀬川原平。
赤瀬川 原平は会田誠のことを何度か口にしてますが、あれってどういう真意があるんだろうなんて考えてしまいました。
オトナの修学旅行は面白いけど、意外に疲れそうですね、こりゃあ。

それにしても、赤瀬川原平が小、中、高と三度の修学旅行に行かなかった理由というがおかしかった。
小学校はおねしょが治らなかったから恥ずかしくて、中学校は家が貧しかったから、高校は絵を描くのにお金を使いたかったから、というんですが、どこまでが本当で、どこからがネタという感じですね。
赤瀬川原平と別役実はとても素直に話を信用できない。
大真面目にとんでもない嘘をいいそうだもんなあ。
2人の対談を聞いてみたいです。(ひ)


ロンドン快快

2008年10月17日 | 本の記録
FRANK CHICKENS We Are Ninja


ロンドン快快
著者: カズコ・ホーキ
講談社文庫
http://shop.kodansha.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2732890
http://www.kazukohohki.com/

イギリス旅行の前後で何冊かイギリスに関する本を読みました。
ロンドンのガイド的なものも読んだんですが、これは家に眠っていたものを掘り起こしてたまたま読んだという感じです。
フランク・チキンズはWe Are Ninjaがかつてヒットしましたが、不思議な存在感がありました。
当時、日本はビデオクリップを紹介する音楽番組がたくさんあって、そうした番組で取り上げられていたんですが、フランク・チキンズって全然いわゆる「音楽的」なグループじゃなかったんですよね。
パンクでもニューウエーブでもネオアコでもないし、日本人が参加しているからといって、全然日本のポップスやロックにもあてはまらない。
どう取り上げて良いか、困っている感じがしました。
結局、ただのキワモノ扱いという感じだったんですが、今更、本を読んで音楽ではあるけど、パフォーミング・アート的なものだったんだなあ、と感じました。
自分を表現する手段として選んだのが、たまたま音楽だったということで。
もちろん、著者自身が書いているように、セックス・ピストルズの洗礼を受けたことがロンドンに行くきっかけにはなっているんですけど、別にピストルズやジョニー・ロットンになりたい訳じゃなく、彼女は自分自身を表現したかったわけです。
そんなのアーティストなら当たり前だろ、とツッコミを入れる方もいらっしゃるかもしれませんが、同じピストルズに洗礼を受けた人でも、ピストルズのファッションや音楽をまねるところから入る人と、自分をこうやって表現していいんだ、と思って自己表現をすぐに始める人はずいぶん違う気がします。

それはさておき、本の方ですが、80年代のロンドンの景気、雰囲気、政治、人びとの生活意識なんてものが伝わってきてとても面白い。
家族や友人、仕事を通じての知り合いを次々に紹介しているだけなのに、そうか、80年代にはイギリスもこんなにのんびりしていたんだなあ、とか、サッチャーって、ある意味、小泉みたいな存在なんて思ったりしつつ読んでしまいました。
70年代にはスクォッターなんて呼ばれる空き家に勝手に住んで生活している人が非常に多かったのに、80年代に取り締まる法案ができて、そんな生活をするのが難しくなってしまったそうです。
アニー・レノックス、デイヴ・ステュワートといったミュージシャンも元スクォッターというのはびっくり。
もちろん、不法居住者がいるというのはいいことじゃないけど、ただ取り締まりをきびしくすればいいっていうものじゃないわけです。
正しいことを正しいという理由だけで行っていく世の中っていうのはすごく嫌ですね。

カズコ・ホーキさんは今や音楽だけじゃなく、パフォーマンスや映画を手がけたりもしているそうですが、なかなか日本では紹介されないみたいですね。(ひ)


ハノイ挽歌

2008年08月22日 | 本の記録
Me and Mario Giacomelli 1/5


ハノイ挽歌
辺見庸 文春文庫
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%8F%E3%83%8E%E3%82%A4%E6%8C%BD%E6%AD%8C-%E6%96%87%E6%98%A5%E6%96%87%E5%BA%AB-%E8%BE%BA%E8%A6%8B-%E5%BA%B8/dp/4167564025/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1219238129&sr=8-1

仕事の忙しさと夏の暑さに参っていて、ブログの更新も少し滞っています。
そんな憔悴した日々にぴったりの本が「ハノイ挽歌」。
たまたまうちにあったのを読んだのですが、残念ながら絶版みたいです。
辺見庸に特に興味があったわけではないんですが、新日曜美術館に彼が出たときのジャコメッリの特集ですっかりやられてしまいました。
http://www.nhk.or.jp/nichibi/weekly/2008/0525/index.html

ジャコメッリの展示は残念ながら見逃してしまったんですが、辺見庸の淡々としていながら私的な語り方、特に彼自身の病気の話というのに感動してしまい思わず本を手に取ったというわけです。
客観的に話しているようでありながら、同時にどんどん主観性を帯びていく、その不思議なバランスが「ハノイ挽歌」にも存在していました。
コーエン兄弟の「バートン・フィンク」を思わせる、ヴェトナムのホテル・トンニャットの不思議な空気感を描いたエッセーの中に、ジャーナリストとしての客観的で無駄をそぎ落とされた文章が不意に混入してくる。
夏の暑い夜、ひたすら日本を応援し続けるスポーツ番組と、グルジア問題を扱うニュース番組が同列に存在するテレビを見るようでもありました。
ヴェトナム戦争と湾岸戦争の取材にどっぷりと入り込まざるを得なかったジャーナリスト辺見庸はアメリカの反省のなさ、同じ過ちを犯し続ける人間の業の深さを見るのですが、同時にそうした戦争の是非という判断を超えたものを見つけてしまいます。
それがヴェトナム国内向けの「ヒルトン・ハノイへのクリスマスのお客様」という、アメリカ人捕虜を撮影したドキュメンタリー映画でした。
ヴェトナム人のいかに捕虜を人道的に扱い、アメリカのやっていることが間違っているかをアピールした映画なのですが、映像にはそんな戦争の是非を超えた人間の孤独や絶望が映されていたのです。

それにしても、ジャコメッリの展示が見られなかったのは残念。
この番組が放送されたときはすでに展示が終わっていたんですよね。
もう少し早く放送してくれていたら。(ひ)