楡家の人びと
北杜夫/著
新潮文庫
http://www.shinchosha.co.jp/book/113157/
久しぶりに本の感想を書きます。
昨年、世田谷文学館で齋藤茂吉の展示を見た際、この「楡家の人びと」の詳しい紹介や楡家の再現模型まで目にして、ぜひこれは読まなければと思い、ようやく手に取ったものの、かなり分厚い本でした。
三島由紀夫を始めとする著名な作家たちが絶賛した本だということでかなり高い期待を持って読み出しましたが、それを上回るすばらしい本。
チェーホフの「桜の園」がすばらしい戯曲であるように、この作品もすばらしい。
「桜の園」とは話も時代もなにもかも当然違うんですが、喜劇というもののもつ力を改めて実感したという意味で思わず連想してしまったのです。
タイトル通り、この本は楡家の物語、しかも北杜夫の自伝的要素の強い作品として有名なのは多くの人がご存知の通り。
話は大きな私立病院を作り上げた楡基一郎を中心に始まります。
はたして医者としての腕が一流なのか疑問ながら、大きな野心を抱き、要領のよさとカリスマ性でのし上がった人物。
関東大震災によって病院を失いながらも青山の病院を再建し、世田谷にもうひとつ病院を作ろうとしたところで突然、基一郎が亡くなります。
その後、頼りない二代目院長徹吉がなんとか病院を経営していくというところまでは、楡家の人びとの勝手気ままな暮らしぶりがずっと描かれていきます。
ところが物語の後半、第二次世界大戦によって物語はガラリと様相が変わっていきます。
一番驚いたのは真珠湾攻撃が始まる前の新聞の見出しがずらりと並んだページ。
それまでの物語を破綻させるような、5ページほどもある大量の見出しが並び、フィクションに「現実」が侵食していきます。
齋藤茂吉が新聞に書いた記事の紹介が登場するのも印象的でした。
その後の後半は、ほとんどが戦争中の話で、楡家の人びとが相変わらず世間からずれた人びとでありながらたくましく生きていたかが描かれていきます。
といっても、戦争を生き抜いたことで何かを美化することもなく、悲惨な戦争があっても人間の本質は変わりようがないのだということが分かります。
物語に登場する数多くの登場人物が魅力的で数々のエピソードのそれぞれが印象に残ります。
北杜夫がこの本を書くきっかけになった「ブッデンブローク家の人々」にいつかチャレンジしたいと思います。
調べたら絶版みたいだけど。(ひ)
北杜夫/著
新潮文庫
http://www.shinchosha.co.jp/book/113157/
久しぶりに本の感想を書きます。
昨年、世田谷文学館で齋藤茂吉の展示を見た際、この「楡家の人びと」の詳しい紹介や楡家の再現模型まで目にして、ぜひこれは読まなければと思い、ようやく手に取ったものの、かなり分厚い本でした。
三島由紀夫を始めとする著名な作家たちが絶賛した本だということでかなり高い期待を持って読み出しましたが、それを上回るすばらしい本。
チェーホフの「桜の園」がすばらしい戯曲であるように、この作品もすばらしい。
「桜の園」とは話も時代もなにもかも当然違うんですが、喜劇というもののもつ力を改めて実感したという意味で思わず連想してしまったのです。
タイトル通り、この本は楡家の物語、しかも北杜夫の自伝的要素の強い作品として有名なのは多くの人がご存知の通り。
話は大きな私立病院を作り上げた楡基一郎を中心に始まります。
はたして医者としての腕が一流なのか疑問ながら、大きな野心を抱き、要領のよさとカリスマ性でのし上がった人物。
関東大震災によって病院を失いながらも青山の病院を再建し、世田谷にもうひとつ病院を作ろうとしたところで突然、基一郎が亡くなります。
その後、頼りない二代目院長徹吉がなんとか病院を経営していくというところまでは、楡家の人びとの勝手気ままな暮らしぶりがずっと描かれていきます。
ところが物語の後半、第二次世界大戦によって物語はガラリと様相が変わっていきます。
一番驚いたのは真珠湾攻撃が始まる前の新聞の見出しがずらりと並んだページ。
それまでの物語を破綻させるような、5ページほどもある大量の見出しが並び、フィクションに「現実」が侵食していきます。
齋藤茂吉が新聞に書いた記事の紹介が登場するのも印象的でした。
その後の後半は、ほとんどが戦争中の話で、楡家の人びとが相変わらず世間からずれた人びとでありながらたくましく生きていたかが描かれていきます。
といっても、戦争を生き抜いたことで何かを美化することもなく、悲惨な戦争があっても人間の本質は変わりようがないのだということが分かります。
物語に登場する数多くの登場人物が魅力的で数々のエピソードのそれぞれが印象に残ります。
北杜夫がこの本を書くきっかけになった「ブッデンブローク家の人々」にいつかチャレンジしたいと思います。
調べたら絶版みたいだけど。(ひ)
