『スタジアム虹の事件簿』(青井夏海)
観客席で不審な行動を連発し、遂には風に舞う紙吹雪の中で無数の一万円札をばら撒き始めた男の真意は?
自分が高校教師殺害事件の真犯人だと唐突に名乗り出た青年の運命は?
アルバイトの女の子が遭遇した奇妙な出来事の意味は?
そして、“結婚”の二文字を前にして揺れ動く女性が巻き込まれた事件の行方は?
プロ野球球団・東海レインボーズのスタジアムで、不思議な事件を次々と解決に導くのは、筋金入りの野球音痴の球団オーナー虹森多佳子。
優勝の夢に向かって走り始めた万年最下位球団の奮闘と、安楽椅子探偵の名推理を軽やかに描いた愛すべき本格ミステリ。
ユーモアミステリに新風を吹き込む青井夏海のデビュー作。
ずっと読みたかったのですが、機会がなくて中々読めない本というのがあります。
青井夏海さんのデビュー作、『スタジアム虹の事件簿』もそんな1冊でした。
この本の出版の経緯は、少ぅし変わっています。
野球とミステリが大好きな作者が自費出版をして、口コミとネットで広がった評判に吸い寄せられた(?)東京創元社から再販され、作者のメジャーデビュー。
正にシンデレラストーリーといったところでしょうか。
作品にはアラが目立つところもありますが、大変に面白い。
取り上げられているのは日常のナゾではありません。
『素人(犯人)が一生懸命考えた犯罪』(一部違いますが)です。
探偵役の未亡人オーナー・虹森多佳子のおっとりした話し方に助けられて、
語られる犯罪には陰惨な影はありません。
犯人がわからない話もあるので、
探偵が犯人を名指しするのが快感
という人は物足りないでしょう。
しかし、それにしても面白い。
安楽椅子探偵というのがどういうものなのか、この本を読むとよくわかります。
作中で語られなかった、優勝旗の行方も気になります。
シリーズ展開するのに、十分な舞台装置がそろっていて、この1冊だけだなんてもったいない。
続きを書いていただけないかなぁ。とつくづく思います。
安楽椅子探偵といえば、極めつけの安楽椅子探偵が東京創元社から出版されています。
『安楽椅子探偵アーチー』(松尾由美)という作品。
これは驚愕の探偵が登場します。正に安楽椅子探偵。笑。
興味のある方は、まとめてお読み下さい。