夜明けと共に起床。コロニアルを散歩しながら鳥の声を録音してみる。
ホテルの窓もドアも吹き抜けのレストランでパパイア、アサイー、グアバ。
カラジャス鉱山で掘られた鉄鉱石はカラジャス鉄道の貨車に乗って北東へ、約九百キロの旅を経て、太西洋に面した古都サン・ルイスの港から積み出される。鉄鉱石を追って我々も飛行機に乗る。
ブラジルでは北が暑い。赤道直下のサン・ルイスは一年中三十度を超える。17世紀にこの国で唯一フランス人によって築かれたこの街は、ヨーロッパのタイルで飾られた美しい街並みが世界遺産に登録されている。
珍しい土地に取材に行った時には、本来の取材とは別に、必ずその地方のレストラン紹介を撮って来ると言う仕事もあって、ここでは地元で評判の海鮮料理屋を撮影させてもらう。仕事を終えてそのまま夕食。
今夜はたまたま一年でいちばん賑やかなブンバ・メウ・ボイと言うお祭りの、そのまたピークの夜だというので、ホテルに帰る前に広場に寄ってみることにした。
時計は十一時を回っている。むっと湿った熱帯の空気、会場へ続く石畳の路地、テーブルを出した店先に、薄暗い赤い電灯の下で、祭りの後のけだるい人々が座ってのんびりと話している。もう終わっちゃったらしいねと歩いていると、広場の奥の方から賑やかな太鼓の音が聞こえた。
「あっちだ!」と小走りに行くと、ステージの上で牛の被り物をかぶった人を中心に、鮮やかな衣装や羽飾りをまとった男女が数十人、男の太い民謡に合わせて手に持った打楽器を打ち鳴らし、笛を吹きながらシャッフルのリズムに跳ね踊っている。
うあぁ!と走って車にカメラを取りに行く。なんとか最後の踊りを収められた。こりゃあイパネマどころじゃないわ。