アパッチ蹴球団-高校サッカー篇:project“N”- 

しばらく自分のサッカー観や指導を見つめなおしていきたいと思っています。

『優先順位』はどうやって生まれるのか?

2006年09月05日 12時33分42秒 | コーチングの謎
先日、短い時間だったが、
日大東北高サッカー部の指導者
(B級コーチのライセンスを持たれている方)と
話す機会があった。
短い時間だったが、
とても刺激を受けた密度の濃い時間だった。



日本代表のこと、
ジーコのこと、
オシムのこと、
トルシエのこと、
現在のチームのこと、・・・etc。
いろいろなことをただ喋り合った。
何も飲まず、何も食べず、
ただサッカーの話だけをし続ける、
短い時間で・・・そんな時間だった。



彼は現在、日大東北高サッカー部で
とにかく“ドリブル”にこだわっている、
と言っていた。
特に、ゴール前では
『とにかく仕掛けろ』と選手には指導している、
とのこと。



ドリブル練習でも、
[身体の中心にボールをおく]ように、
【アウトサイド】でのドリブルを重視しているとのこと。
【アウトサイド】でドリブルすることで、
[ボールを身体の中心に置きやすくなり]、
その結果、
[相手のプレッシャーをどちらにもかわせる]。



さらに、
【アウトサイドでのドリブル】の延長線上で、
【アウトサイドでの“パス”】にもこだわっている、
とのこと。
【アウトサイドのパス】は
[相手に読まれにくい]。



彼は“自分のこだわり”には
具体的な根拠と強い信念があった。



日大東北高の先生の話を聞きながら、
お会いする直前に、
たまたま読んだサッカー雑誌の記事を思い出していた。



記事の内容は
宮澤ミッシェル氏がU-16日本代表監督の城福浩氏に
“指導者としての城福氏の考え方”をテーマに
インタビューしたものだった。



オシムと同じように、
『人もボールも動く“ムービングフットボール”』を
掲げる城福氏の考えを解析する、
というような宮澤氏の意図も見えたが、
城福氏は冷静に語っていた。



(以下は城福氏の発言概要)
『たとえば、
10人の指導者が試合を観ていたとして、
 「チームの課題を10個挙げろ」
と言われたら、
たぶん、10人の指導者が
ほとんど同じ課題を抽出するはずです。

でも、
その10個の課題について、
どれからトレーニングすべきか?
 「優先順位をつけてください」
と言われたら、
10人の指導者の優先順位のつけ方は
誰一人として一致しないと思います。
それが指導者(の個性や価値観)だと思います。』
※但し、上のカッコ内は自分による脚注



極めて冷静な意見をインタビューで述べていた。



ジャーナリストに
必要以上に、
オシム氏と同一上のベクトルで語られることに対して
極めて冷静に対応していた。



その冷静さ、というか腹の坐り方が、
素晴らしかった。



日大東北高の先生も
『日本はまだまだ個人の部分を上げていかなくちゃいけない』
という確信を持っていた。



「勝つ、ということにたいしてはどう思う?」と聞くと、

『確かに、負けるのは悔しいけど、
それでもドリブルによる仕掛けにこだわるんです』
『時間はかかるかもしれませんが、
個人が仕掛けてドリブルで勝負できるようになることが、
勝つことにつながるようにしていきたい』



「いろいろなこだわりがあって当然だけど、
なぜ“ドリブル”なの?」と聞くと、

『自分がやってて、楽しいからです』
『駆け引きが楽しいし、裏を取るのがおもしろい、からです』
『いろいろ山の登り方はあると思うけど、
自分は“ドリブル”で山を登ってみようと思ってます』



日大東北高の先生の答は
とても明確だった。
『自分が好きだから・・・。』
聞けば、選手時代はFWをやっていた、とのこと。



たしかに、指導者が面白い、と思わなければ、
選手にも伝わらないのかもしれない。



指導者の言葉が説得力を持つのは
自分の信じている価値観を伝えようとする時
なのかもしれない。



選手時代の経験や、それまでの経験を通じて、
指導者としての【価値観】が形作られ、
具体的にはトレーニングやキーファクターにおける
【優先順位】という形で
指導者の【個性】は現れる。



でも、本当に大切なのは
【情熱】なのかもしれない。



日大東北の先生からは話している最中ずっと、
熱いモノが伝わってきた。



自分も頑張ろうと、と思った。



短い時間だったが、
とても刺激的な時間だった。