The Attack on Pearl Harbor

　Allison Lassieur著のゲームブック「The Attack on Pearl Harbor」をプレイしました。

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It is 1941. As war spreads across the globe, the United States tries to stay out of it. But on December 7, an attack on Pearl Harbor delivers the war right to America's doorstep. Will you:

・Join the Japanese attack force? OR...
・Serve as a U.S. sailor in Pearl Harbor? OR...
・Care for wounded sailors as a nurse on shore?

Everything in this book happend to real people. and YOU CHOOSE what side you're on and what to do next. The choices you make could lead to survival or to death.

Allison Lassieur「The Attack on Pearl Harbor」（Capstone press）裏表紙より

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　本書は「You Choose: Interactive History Adventures」というシリーズの一冊で、タイトルをご覧になれば分かるように、太平洋戦争の端緒とも言える真珠湾攻撃をテーマとしたゲームブックです。政治的にアメリカ側に肩入れされているようなこともなく、基本的には淡々と歴史的な事実が語られていると思います。もしかしたら、私の英語力が足りなくて読み取れないだけかもしれませんけれども。
　いわゆる“IFモノ”のように話が史実からずれていくことはなく、読者の選択は真珠湾攻撃の大勢には影響を与えません。読者はあくまでも、真珠湾攻撃と言う歴史的な戦闘に参加することとなった一兵士として、個人レベルで華々しい戦果を挙げたり、あるいは不運にも命を落とすことになったりするわけです。

　特徴的なのは、サンプルとして裏表紙にも書かれている最初の選択で、日本兵、アメリカ兵、アメリカの看護兵の中からどの視点で話を進めていくのかを選択することですね。
　人はどうしても、自分に近しい者に感情移入してしまいます。日本人であれば日本人の、アメリカ人であればアメリカ人の視点で物事を見、物事を判断しがちになります。ですが、たとえ事実は一つだけであっても、一方的な見方しかしなければ、その事実の全体像を掴むことができず、何かを見落としたり、判断を誤ったりすることになってしまいます。
　二人称小説という形式を取ることが多いゲームブックにおいて、本書のように一つの出来事を多視点から眺めることができるというのは、なかなか面白いアプローチだと思います。これは太平洋戦における硫黄島の戦いを日米双方の視点で描いている映画、『父親たちの星条旗』、『硫黄島からの手紙』と似たような構図になっていますね。ちょっと毛色が違いますが、エンタテイメントへの応用という意味では、『おジャ魔女どれみ♯』のCDドラマで、とある一日の出来事を4人のおジャ魔女それぞれの視点から描いている、「どれみのなっが～い一日」、「はづきの長い長い一日」、「あいこのめっちゃ長～い一日」、「おんぷのとっても長い一日」とも似ていますね。

　本書には複数のエンディングがあり、その中には良いものも悪いものもあります。しかしそれらは全て、読者が選んだ行動の結果という意味合いもありますが、一つ一つのエンディングが実際に居たであろう誰かの運命でもあったはずです。本書では日米双方の視点を体験すると同時に、同じ軍にあっても運命を分けることになった兵士たちの視点をも体験することになるわけです。
　一応トゥルーエンドのようなものもありますが、そのルートを探すというゲーム的な側面はあまり重要ではないでしょう。トゥルーエンドは、あり得る一つの結末という程度の意味でしかありません。基本的に全ての分岐を読み尽くし、さまざまな視点から真珠湾攻撃という出来事を体験するというのが、より本書を楽しむためには良いのではないでしょうか。
　子供向けのゲームブックということで気楽に読んでいたのですが、形式の面白さに加え、題材への興味も加わり（私は山本五十六と同郷なこともあり、太平洋戦争についてはある程度の興味を抱いています）、楽しんで読むことができました。