社会思想社・現代教養文庫、イアン・リビングストン著のゲームブック、「トカゲ王の島」をプレイ開始。
これ以降、「トカゲ王の島」のネタばれを含んでいます。ご注意ください。
あたし、レイン・デシンセイ。19歳のか弱い女の子、兼、凄腕の剣士をやってます。
旧友のマンゴに会うために立ち寄った小さな漁村・オイスターベイ。しかしその村は、近くにある火山島に住むトカゲ男の脅威に晒されていたのです。
マンゴと2人でその火山島に乗り込んだあたし。しかしマンゴは、砂浜にいた巨大蟹の手によって、命を落としてしまった。
あたしはマンゴの無念を胸に抱き、トカゲ王の打倒を誓ったのでありました。首を洗って待ってろよ、トカゲ王!
<現在の状況>
技術(9):9
体力(21):14
運(12):12
金貨:
宝石:
飲み薬:力の薬
食料:8
装備:剣、革の鎧、ザック
あたしは森を西へと進んでいった。
しばらく進んでいくと、木の上から煙が見えた方角・南西から、ドンドンドンドンと太鼓の音が聞こえてくる。
怪しい。いかにも怪しい。もしかしたら、さっき出会った首狩り族の仲間かもしれない。
しかし、あんまり危険を避けていても、大願を成就することは出来ない。一応向こうの位置はある程度把握しているわけだから、慎重に立ち回りさえすれば道は開かれるだろう。
そんなわけで、あたしは少し方向を変え、南西を目指すことにした。
進んでいくにつれて、徐々に太鼓の音が大きくなってくる。ついでに、なにかの話し声も聞こえてきた。
あたしは音を立てないように、ゆっくりと、慎重に近づいていく。
やがて、前方に開けた土地が見えた。そこに多くの人が集まっているようだ。
そこにいたのはやっぱり首狩り族。えーと、ひぃ、ふぅ、みぃと、全部で12人。太鼓の音に合わせて、何かの儀式のように踊り狂っている。そしてその輪の中心には、哀れな一人の男が杭に縛り付けられている。
不意に、太鼓の音が止んだ。
仮面をつけ、頭蓋骨の首飾りをしたやつがのっそりと現れた。そいつは他の首狩り族とは一味違いそうだ。
女が出てきて、骨で出来たナイフを仮面に手渡した。これから何が行われるのかは、大体察しがつく。縛られている男を殺そうというのだろう。
助けたい。
しかし、相手の数が多すぎる。
どうしよう、どうしよう、どうしよう。
首狩り族の凶刃は刻一刻と男に迫っているが、まともにやりあうわけにはいかない。
考えている時間はない。とにかく行動しなくてはならない。
あたしは茂みから飛び出すと、かがり火の中から火のついた木の枝を掴み取り、近くに立っていた竹の小屋に火をつけた。更に、その隣の小屋にも同様に火を放つ。
あたしは火のついていない安全そうな小屋の裏に身を隠した。様子を伺うと、火事に気が付いた首狩り族は、慌てふためいて大混乱に陥っている。
首狩り族の注意が縛られている人からそれた。そう判断したあたしは、間隙をぬって剣を構えたまま突進し、男の人のロープを断ち切った。その男の人は自由になると、一目散に森へと向かって駆けていく。
あたしも続けて逃げようとしたんだけど、どうやら首狩り族に気づかれたらしい。ヤツラがあたしに向かって槍を投げつけてくる。
ビュン、ビュン。
幸いなことに、槍はあたしをそれて向こうまで飛んでいった。しかし不幸なことに、代わりにあたしの前を走っていた男の人の背中に命中してしまったのだ。
どうと派手に倒れるその男の人。確認しなくてもわかる。即死だ。
助けたかったけど、運がなかったと思うしかない。首狩り族の追跡は続いているのだ。あたしはとにかく森の中を全力で走りつづけた。
細かい木の枝などが無数の擦り傷、切り傷を作るが、そんなのに構ってはいられない。
いいかげん疲れてきた頃、前方に中が空洞になった丸太があるのを見つけた。どこまで逃げればいいのかもわからない状況だが、ここに身を隠せば追っ手を撒けるかもしれない。しかし逆に、そんなところに逃げ込んだうえで見つかってしまったら、もうおしまいだろう。
考えている暇はない。あたしはいちかばちか、その丸太の中に飛び込んだ。
手足を引っ込め、あたしは丸太の中で丸くなる。無数の傷から血がにじんでくるが、とにかく息を殺して、ひたすらじっと耐える。
10分か、20分か。
周囲から人の気配が消えた。
あたしは慎重に丸太から首を出してみる。きょろきょろと辺りをうかがうが、どうやら安全なようだ。
あたしは丸太から這い出し、食事をとってしばらく休息を取った後、再び森を西へと進むことにした。
まったく、酷い目に遭った……。
森を再び、西へ、西へ。
西へと進んでいくと、地面が湿ってきたことに気づいた。はじめは湿っているという程度だったけれど、次第にぬかるみ、そしてくるぶしまで水が浸る程にまでなる。
さらに進んでいくと、前方に黒くにごった沼が出現した。一応まだ進めはするけど、ちょっと嫌な感じもする。
そんなことを思っていたところ、後ろからぴしゃぴしゃと奇妙な音がした。振り返ると、妙な怪物が沼を渡ろうとしているところみたいだ。そいつは長い腕が沼にまで到達し、水かきのついている足で沼をすばやく移動している。
あたしは緊張して剣に手をかけるが、そいつは特にあたしを気にしているような様子もない。ここは適当にやり過ごしちゃおう。
あたしはそいつが通り過ぎるのを待って、沼の中へと足を踏み入れた。
一歩進むごとに、足はどんどんと重くなる。一応前には進んでいるけど、本当に大丈夫なのかなぁ。
とにかく前へ、前へ、前へ。あたしは気合いで足を運ぶ。
と、そのとき。急に目の前の沼の中から巨大な触手が突き出してきた。6本足のタコみたいな化け物、スライム・サッカーだ! あたしのこと、食べる気満々みたい。
やばい、やばい。
こんな足場じゃまともに戦えないよ!
ボカ、スカ。
泥に足をとられ、疲労で腕も重くなる。
最悪な状況の中、それでもあたしは必死で剣を振るった。
かなり酷い手傷を受けながら、それでも何回目かのラッキーヒットがスライム・サッカーを切り裂いた。
スライム・サッカーの身体が、沼へと沈んでいく。どうやらこの強敵を相手に、生き残ることができたみたいだ。
他にも何か厄介なものが出てくるかと思ったけど、なんとか無事に沼を抜け出し、固い地面にたどり着くことができた。あー、しんどかった。
あたしはどしんどしんと大地を踏みしめる。やっぱり人間、地に足をつけて生きないとね。
しかし、なんか足がもぞもぞするなぁ……、って、うわー、足にヒルがはりついてるじゃん!
あたしは慌てて食料を取り出し、はりついているヒルをこそげ落としていく。まったく、最後まで碌なことないなぁ。
ヒルを全てこそぎ落として、あたしはその場にへたり込んだ。さすがに今の一連の出来事は、ちと身体が辛かったっす。
あたしは虎の子の力の薬を一気に飲み干す。おぅ、力が湧いてきた!
元気を取り戻したところで、あたしは道をまた西へと進んでいった。うへ、まだなんか足元がぬるぬるするなぁ。
前方には2つの丘が見える。道はその丘の境にある谷間へと伸びている。あたしは道なりに進んでいくことにする。
谷間に入ると、南の丘によって太陽が隠れ、日陰になった。
道がだんだんと細くなっていくなぁなんていうことを思いながら歩いていると、丘の上のほうからごろごろという音が聞こえた。
!
あたしは道を駆け出す。地すべりだ。
幸い、地滑りに巻き込まれることもなくその危機を脱することができた。いつまたこんなことが起こるとも限らないので、あたしは足早にその場を離れた。
道は再び広々としたものになっていった。
少し進むと、道の右端に大きな丸い石が置いてあった。その表面にはなにか文字が刻まれている。それはどうやら警告のようだ。
「道をもどれ。さもないと死ぬぞ」
……そう言われてもなぁ。
そもそも戻れといわれても、どっち方向に戻ればいいのか、この丸い石から読み取ることはできない。そもそも危険なんて、この島にいる以上、当然ついて回るものなのだ。
あたしは気にせず、先を急ぐことにした。
(つづく)
<現在の状況>
技術(9):9
体力(21):21
運(12):6
金貨:
宝石:
飲み薬:
食料:6
装備:剣、革の鎧、ザック
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