百醜千拙草

何とかやっています

悪代官と越後屋

2007-11-09 | Weblog
昔、政商という言葉がありました。明治時代の三菱財閥とか、政治家を使って経済活動を有利にする企業とか事業者とかのことですが、今は余り聞かなくなりました。私利私欲のために政治家を利用するという場合を指すことが多いですが、必ずしも自分の企業のためというわけではなく、より高い理想を実現するために政治家に働きかける場合もありました。例えば、大正期の神戸の鈴木商店の場合は、アメリカが日本への鉄の輸出を差し止めた時、日本の工業立国を目指していた鈴木商店番頭の金子直吉は、積極的に政治家に働きかけ、最後には自らアメリカ大使と交渉し、鉄の供給を受けるかわりに、それを用いて造った船舶の多くをアメリカに専売するという船鉄交換を申し出て、アメリカの鉄輸出の差し止めを撤回させました。無論、これは鈴木商店のみならず、日本の工業界にとって大きな成果でした。直吉自身はどうも自分自身や(あるいは鈴木商店の)利益のためというよりは、むしろ日本のためと本気で考えていたような節もあります。
しかし、一般に政商というと悪代官と越後屋が小判を敷き詰めた菓子折りを前にして、「お前も悪じゃのう、ひひひひ」とインビな笑いを漏らしている像が目に浮かんできます。政商という言葉が無くなったからといって、そうした者がいなくなったわけではないのは勿論でしょう。そのことを改めて知らされたのが、今回の小沢一郎と福田首相の密室会談とその後の辞任さわぎでした。読売新聞の渡邊会長と自民の森元首相が今回の連立構想の脚本を書いていたという話が明らかになり、この不可思議な小沢一郎の辞任騒ぎとその翻意がなんとなく理解できたような気がしました。以前からマスコミの持つ力は大きいです。ペンは剣よりも強しですから、マスコミが社会の木鐸であれば理想なのですが、残念な事にその強大な力は多くの場合は、誰かに都合の良いプロパガンダを流すために歪んで使われています。今回の事件はまさに典型的な例でしょう。渡邊会長自ら、自民-民主連立にむけての社説を自社の新聞に書き、さらに裏では元首相と相談して、福田、小沢の密室会談を演出し、自民党の政権維持、即ち経団連の利益を維持しようと画策したというのですから呆れます。マスコミにいて報道を生業とする大企業の長であるなら、できるだけ中立で清廉な態度であって欲しいものです。それが特定の政党と強く絡み付いていて、自ら政治にクビをつっこんで社会を操ろうとしているというのは、特にマスコミが社会に大きな影響力を持っている以上、非常に汚らしく映ります。そう言えば、鈴木商店崩壊のきっかけになったのも、大阪朝日新聞が悪意あるガセネタをばらまいたからでした。そうしたことが原因で多数の人が被害を被ってもマスコミは全く無責任なのです。人ごとだと思っているのです。無責任な記事を出版して社会を混乱させた場合に、責任をとったマスコミの人というのを見た事がありません。
悪代官の森元首相と越後屋(経団連)の番頭(?)渡邊会長という図、醜悪です。これを機会に、小沢一郎にはもうちょっとクリーンな政治を推進してもらいたいと思います。(少なくとも自民党よりは経団連との癒着はなさそうですし)
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