百醜千拙草

何とかやっています

Dr. Sacks' take on Ukraine

2024-06-25 | Weblog
イスラエルの戦争犯罪が正式に認定され、世界から強い口調で非難されていますが、ネタニヤフは反省の色を見せません。その反吐の出るような傲慢で邪悪な愚かさはネタニヤフだけのことではなく、シオニズムに洗脳されたイスラエル軍やイスラエル国民の多くにも共有されていると考えられます。そして、イスラエルの非道な悪行知っていながらも自己利益のためにそれを支えているのがアメリカ政府とその属国です。一方で、プーチンは人道支援として43,000人のパレスティナ難民を6ヶ月間受け入れることを表明。イスラエルのジェノサイドを支援し続けるG7諸国(日本も含む)とパレスティナ難民の受け入れを表明するロシア、どちらが「人として」マトモなのかは私には自明に思います。

パレスティナとイスラエル、ロシアとウクライナの構図はよく似ています。パレスティナを挑発し10/7に軍事行動を起こさせたイスラエル、ロシアを挑発し続け、2014のクリミア独立とロシアへの編入、2022のキエフ侵攻を招いた新ウクライナ政府、いずれもアメリカの積極的な支援をがあってのものです。

日曜日にはウクライナ政府軍はクリミアの都市をアメリカ製のミサイル攻撃し市民が死傷する事件がありました。戦争法に則って普通に戦争をしたのではウクライナはロシアには勝てないので、市民の住む都市にミサイルを打ち込むテロ行為に出たのでしょうか。ま、プーチンが言うように本当は誰がやらせたのかは明らかですけど。

下のビデオにある通り、アメリカがウクライナのヤヌコビッチ政権を転覆させ、ウクライナをNATOに取り込もうとした2014年、ロシアはそれを看過できず押さえたのがクリミアです。しかも、このプロセスでは、クリミアはまず住民投票と議会でウクライナからの独立を可決し、独立した後にロシアに編入を依頼した上で、ロシアが認可するという手続きを踏んでいます。つまり、アメリカやイスラエルとは違って、ロシアは国際法を(少なくとも形式的には)尊重する姿勢を見せています。そうしないと、戦争は際限なくエスカレートし、ただの殺し合いになる(つまり世界規模での核戦争になる)とプーチンは考えているからでしょう。

ロシアにとってウクライナとジョージアは譲れないred lineであり、特に、クリミア半島は黒海からの防衛上の重要拠点であり、ここをNATOに押さえられることはロシア国家の危機に直結します。ロシアにとっては国家存続の問題であり、自らの生存のためにやらねばならぬことを手順を踏んでやってきたと私には思えます。しかし、アメリカは、ウクライナでの戦争を単なる陣取りゲーム程度に考えているように見えます。ロシアと西側での戦争に対するこの見方の差は深刻だと思います。

ロシアがクリミアをわざわざ煩雑な手づづきを経て編入したのは、その手続きがロシアに法的根拠を与えるからで、ちょうと同国がサンフランシスコ条約を根拠に、北方領土を日本に返さないと主張しているのと同じだと思います。そしてクリミアや北方領土を管理下に置く目的は、ロシアにむけたアメリカ軍のミサイル発射台をこれらの土地に設置されないようにすることでしょう。

キューバ危機の時にアメリカは、自分の喉元にナイフを突きつけられることがどういうことかを身をもって学んだはずで、ウクライナやクリミアにNATOが進出することがロシアにとって何を意味するかは理解できると思うのですが、そのようには見えません。キューバ危機当時はオバマは2歳、バイデンも20歳そこそこですから、実感がないのかもしれません。上にも述べた通り、この認識の差、つまりロシアにとっては国家存続の問題であるが、米英にとっては単なる陣取りゲーム、が私はもっとも恐ろしい結末へつながる要因ではないかと思います。

アメリカが第二次対戦後も、世界中で不法行為をやりたい放題できたのは、その圧倒的な軍事力と経済力があったからでした。しかし、中国の台頭、ロシアの軍事強化、インドの人口増加によって、軍事力、経済力、人的資産もBRICSが欧米を凌駕する勢いとなってきました。そして、親米であったサウジアラビアはアメリカドルを捨てて、BRICSに加盟、イラン、エチオピアといったイスラム諸国も加盟、トルコ、ベネズエラといった数多くの国々も加盟への動きを見せており、アメリカの世界一極支配は終わりに向かいつつあります。しかし、傍目には明らかなパワーバランスの推移を、アメリカやイスラエルは実感しているようには見えません。

NATO諸国の中でも、このアメリカの態度に「いい加減にしろ」と思っている人々は少なくないと思います。ハンガリーはNATOがウクライナに入るなら、軍事協力はしないと表明。トルコもおそらく同様の行動をとるでしょう。そもそもこのウクライナ戦争はアメリカが仕組んだものと言ってよいでしょう。下の動画で言及されている通り、かつて「ロシアをNATOで包囲する」という欧米の対露戦略をいまだに引きずっているのか、アメリカはウクライナをNATOに組み入れることに異様な執着を見せてきました。

実のところ、私は近代における防衛問題というのは、結局は戦争ビジネスを回すための口実に過ぎないと思っております。しかし、問題は、当事者がいつの間にかそれを忘れ、ゲームに熱中する子供のように政治家自身がその建前を信じ込み、そして大衆を巻き込んで、状況がコントロールできなくなるまでエスカレートしてしまうことが起こりうるということでしょうか。

これまでアメリカによるNATO拡大とウクライナへの介入に対し、比較的、鷹揚に対応してきたプーチンも、さすがに「もしNATOがウクライナに入るようなことがあれば、それは第三次大戦になる」と、理解の悪い不良高校生に諭すように当たり前のことを言いました。この当たり前のことがアメリカやNATO諸国の少なからずが理解できていないように私は感じます。

「NATOはウクライナに手を出すな」このプーチンの要求は今回のキエフ侵攻時も、2014年のクリミア編入時も、それ以前も一貫しています。これらのロシアの行動は、アメリカが挑発しなければ起こらなかったことです。前回も述べたとおり、「NATOは東進しない」は1991年の冷戦終結時の東西の合意であり、アメリカとNATOはそれをずっと破り続けてきました。そのNATOが最後のred lineであるウクライナに入れば、ロシアは西側とフルスケールの戦争となるという当たり前のことをプーチンはあらためて言わざるをえませんでした。それほどアメリカは傲慢なのか、キューバ危機のチキンレースの時のように、意地になっているのか、私にはわかりかねますが、ひょっとしたら本当に愚かなだけなのかも知れません。

さて、ウクライナ戦争に関して、先週、話題になったのが、"Piers Morgan Unsencored" でのアメリカの経済学者で公共政策専門家のJeffrey Sacksへのインタビューでした。
今回のウクライナ戦争に至る歴史的経緯についてSacksが解説しています。西側プロパガンダに沿った主張をするピアス モーガンを、ロジカルな議論を積み重ねて教育するという構造ですが、もしモーガンが意図的に無知を装っているのなら大したものです。下にインタビューの真ん中あたりの一部の内容を示します。

、、、、
モーガン:あなたは、プーチンが行なった野蛮な戦争の現実の基づいているというよりも、プーチンの世界観を受け入れることに非常に依存しているように見えるのだが、、、。

サックス:多分、それは私がアメリカについて知りすぎているからでしょう。
第二次世界大戦後のヨーロッパにおける最初の戦争は、アメリカがベオグラードを78日間爆撃したものでした。目的はセルビアを解体し、飛び地としてコソボを作り、バルカン半島南西部にバルカン半島最大のNATO基地であるボンドスティールを設置することです。アメリカはクリントン政権下でこれを始めました。アメリカが、不法にヨーロッパの国の国境を破り爆撃したわけですが、国連は無力でした。しかも、これはNATOの「任務」と正当化されたのです。

その後、アメリカは何度も不法に他国で戦争を起こしました。アフガニスタン、イラク、そしてシリア。シリアへの軍事行動は、オバマ政権下で、特にオバマとヒラリー・クリントンが、アサド政権を転覆させるためにCIAにやらせたことです。そして、NATOがカダフィ政権を転覆させるためにリビアを不法に空爆しました。

2014年2月にはアメリカはキエフで何をしたのか、私はその一端をこの目で見ました。アメリカはウクライナの右翼軍とともにヤヌコビッチを政権から引き摺り下ろしたのです。我々(アメリカ)はウクライナの大統領を転覆させたということです。

興味深いのは、このクーデターは、EUの代表とヤヌコビッチが「早期選挙、国民統合政府、両陣営の撤退」をすることで合意をした翌日に起こったということです。(EUとウクライナ大統領が正式に合意したものであったにもかかわらず)反ヤヌコビッチ勢力が「我々は同意しない」と言って、政府ビルを襲撃し、ヤヌコビッチを引き摺り下ろしたのです。そして、間髪を入れず、アメリカは新政府を支持すると宣言したのでした。本来ならば、「協定合意があったのだから(クーデターは)違憲である」とアメリカは言うべきはずのところです。つまり、アメリカは、EUがウクライナ政府と交わした協定を無視して、(親ロシア)政権を転覆させたのです。しかも、アメリカは、ロシア、EUとともにこの協定の当事者だったにもかかわらずです。

ところで、2015年ですが、ロシアは「平和は交渉によってもたらされるべきだ」と言ったのであって、決して「ドンバスを返せ」と要求したのではありません。これによって、ウクライナ東部のロシア系民族とこのウクライナ新政権の間で交渉が行われ、停戦合意、ミンスク第2次合意(ミンスク II) に至りました。(最初のミンスク合意は2014年)ミンスク II 合意は国連安全保障理事会で全会一致で決議され、ウクライナ政府が署名し、ドイツとフランスが保障人となりました。
そして、私は直接聞いたのですが、この国連安全保障理事会が全会一致で承認したこの合意はアメリカ内部では笑い飛ばされたのです。

ウクライナ新政府は、この合意に不満をもち、この地域(ドンパス、ルガンスク)に自治権を与えたくないと言うと、アメリカは彼らに「心配するな」と言ったのです。ドイツのメルケルは、2022年のインタビューで、「ミンスク II はウクライナに力をつける時間を与えるための、単なる保留期間だ」と説明しました。とんでもないことです。ミンスク II は国連安全保障理事会が全会一致で採択した条約であり、これで東ウクライナの戦争は終わるはずのものでした。(しかし、ウクライナ政府を転覆させたアメリカは言うに及ばず、協定の保証人であるはずのドイツも最初から合意を誠実に履行するつもりはなかった)

誰が信頼に足るのか、誰を信用すればいいのかという話になると、私の問題は私がアメリカ政府をよく知りすぎているということだと思います。私はアメリカ政府を一瞬たりとも信用したことはありません。

だから、この両者(アメリカ/ウクライナ新政権 と ロシア)に、全世界の前で、「これらが合意の内容である」と示してもらいたいと思います。そうすれば世界は(誰が正しくて誰が間違っているのか)判断できるでしょう。なぜなら、次のようなことを明白な合意文書にすることもできるからです。
アメリカは「もう他国の政府を転覆させるつもりはない、アメリカはこの合意を受け入れる」と言う必要があるでしょう。ロシアは「決められた境界を越えることはない」と言う必要があるでしょう。そして、NATOは拡大してはなりません。これらを合意して、それを世界に示し、どうなるか見てみたらどうでしょう。条約は時には実際に守られたりすることもあるのだから。、、、、
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