百醜千拙草

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Avoid White Bigots: Lessons never Learned

2007-11-02 | Weblog
先々週のノーベル賞科学者、ジムワトソンの失言が話題になっています。「アフリカの将来が暗いのは、われわれの社会政策が、彼ら(アフリカ人)の知能レベルが我々と同等であるという事実に基づいているからでであるが、実際のところの調査ではその事実というのは必ずしも正しくない」と語ったらしいです。ワトソンは昔からこの手の人種差別的、男女差別的発言を何度かやっている問題児なのですが、コールドスプリングハーバーは、今回の事件を重くみて、ワトソンを停職処分に処す予定とのことです。そもそもこの発言は新作の本のイギリスでのツアーの直前のインタビューでなされたもので、このためツアーは急遽キャンセルとなりました。新作のタイトルは「Avoid Boring People: And Other Lessons from a Life in Science 」で、各章には、(自分が?学んだ)マナーを中心に構成されているようです。今回の失言事件の直前にNatureに発表されたHuntington Willardによるこの本の書評は、「Honest Jim talks manners」と題されています。クリックが「科学の歴史をゴシップにした」と非難したワトソンの以前の本、「The Double Helix」は、当初は「Honest Jim」というタイトルになる予定であったことから、こういうタイトルになったのでしょう。「マナーを語る」と評された本の出版記念ツアーが、とんでもない失言のために中止になったのですからちょっと恥ずかしい話です。この書評には、ちょっと面白いことが書いてあります。ワトソンはハーバードの科学研究には非常に批判的であったのですが、前ハーバード学長のサマーズに対しては同情の念を寄せていたとあります。サマーズは数年前の「ハーバードで女性教授が少ないのは女性と男性で遺伝的に違うからではないか(つまり、女は生まれつき頭が良くないとの意)」という大失言がもとになって、ハーバード学長を蹴り落とされました。因みにハーバードの現学長はDrew Faustという女性です。ついでに自然科学ではハーバード以上の名門、MITの現学長もSusan Hockfieldという女性です。要するに、サマーズは男と女の頭の構造は遺伝的に違い、だから頭のできも違うのだと考えており、ワトソンもその説を信じているということなのです。私も男と女では持っている遺伝子のセットがそもそも違うのだから違いがあってもおかしくないと思いますが、サマーズにしろワトソンにしろ、「違う」ということを「善し悪し」や「優劣」と直接つなげる様な発言をするから問題になるのだと思います。彼らが「違う」ことと「優劣」を並べて発言するとマズいことになるとわかってない筈がありません。にも関わらずやってしまうのは、心の中では、「男は女よりも賢い」とか、「白人は黒人よりも頭がよい」とかいうことを本当に信じているからに他ならないと思います。私もしばらく前まで、日本人が一番賢いと信じていましたが、バカな日本人や賢い白人やその他のアジア人に多数会った経験から、人種や性別による差よりも個人差の方が遥かに大きいことを学びました。ともあれ、「マナーを語り、自然科学から学んだレッスン」について書かれたこの本の著者が、このような馬鹿げた失言をするというのは「何だかなー」というか、「三つ子の魂百まで」(因にワトソンは79歳だそうです)という感じです。ひょっとしたら人種偏見者や差別者は、遺伝的要因で決まるのかも知れません。アメリカの自然科学界でこれほどまでに力を持っていた人が、人間的には尊敬できない人種、性差別者であるとしたら悲しい限りです。 アメリカ科学者連合の会長、ヘンリーケリーは、「ワトソンは、最悪の方法で、私たち科学者を失望させてくれた」と強い調子で非難しています。現代生命科学でのアイコンともいえる科学者が、科学的根拠のないしかも悪意のある偏見を公の場で口にしたのですから、遺伝学および近代生命科学に対する世間の信頼を損なったと思われてもしかたありません。若くしてノーベル賞を貰ってしまい、祭り上げられてしまったので、人間として成熟するヒマがなかったのかも知れません。79歳の老人が書く本のタイトルが「Avoid boring people」であるというあたりからして、この人の精神年齢も計り知れようというものですが。新著の最終章には、是非とも今回のバッシングで彼が学んだ(かもしれない)レッスンを追加してもらいたいものです。
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