百醜千拙草

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先制攻撃

2024-07-16 | Weblog
先週のNATOサミットでは、NATOはアグレッシブにロシアを非難しウクライナ戦争へ深くコミットしようとするそぶりを見せています。どこまで本気なのかわかりませんけど、世界にとっては危険な状況になりつつあります。
ウクライナはそもそもNATOのメンバーではないし、NATOはそもそも北太西洋の安全保障(防御)機構であります。そのNATO(アメリカ)が35年前のソビエトとの約束を破りつづけて、東進を繰り返し、2002年には一方的に弾道弾迎撃ミサイル制限条約を破棄し、「北大西洋の防衛」という名目をはるかにこえて、NATOメンバーですらないウクライナ政府軍の対ロシア戦争を支援しようとしています。

以前に触れたように、このウクライナの戦争に至ったウクライナをNATO側に引き込む企てはオバマ政権時代から計画されたものでした。オバマ政権がウクライナのクーデターを支援し、ウクライナの親ロ政権を転覆させた2014年、ウクライナ東部を巡る新政府軍 vs 東部独立派軍との内戦が激化し、結果、現在の事態へとエスカレートするに至りました。今のバイデン政権とNATOが、80-90年代のアメリカ対ロ強硬派が主張していた「ロシアの黒海へのアクセスを封鎖するようにロシアをNATO加盟国で包囲する」という目標を諦めていなかったのか、ウクライナの中立性がロシアにとってどういう意味を持っているのかを理解していないのか、あるいは本当に第三次世界大戦を望んでいるのか、私には分かりかねますけど、多分、その全てがある程度は当たっているのだろうと思います。

アメリカとか日本とかウクライナとか、われわれは包括的に呼んで、あたかも一国の全体の利益のためにその政体があるかのように、我々は思い込むクセがありますけど、歴史を見てみれば、そして、近年のグローバル化を見てみれば、「国」というのは、単に地理的な概念にすぎなくなってきています。アメリカ政府や日本政府がアメリカ国民や日本国民全般の利益と安全と繁栄を望んでいるわけでないのは明らかです。むしろ、そうした国の一部の支配者層がその国の国民を搾取し、戦争を口実に、戦争の道具として使って、富と力のヒエラルキーを維持してきました。江戸時代の参勤交代のようなもので、中央主権を維持するためには地方や一般国民が豊かであっては、むしろ困るのです。富の偏在こそがグローバル化した世界の支配者層が望んでいることで、彼らは、経済的に階層化された社会の頂点にい続けるため、国民は「生かさず、殺さず」、日々の目先の生活のことで頭がいっぱいという状況に置いておくシステムを構築してきました。そして、その構造が不安的になってくれば、戦争という非常事態に持ち込んで、リセットすればいい、死ぬのは下々の一般国民だ、とでも思っているのでしょう。彼らにとっては国境はないに等しく、常に安全な場所にいることができるのですから。

アメリカでもイスラエルでも、思うに、その支配者層は自国がロシアの核兵器で荒廃し、数多の国民が犠牲になっても、大きなダメージはなく、むしろ、そうして人口が減ってくれた方が良いとでも思っているのではないか、とさえ想像します。ですので、NATOやアメリカが過去35年間、ロシアを挑発し続け、2014年にウクライナ政府を転覆させて、ロシアと敵対させ、現在、わざわざウクライナのNATO加盟の可能性をちらつかせて、意図的にロシアを世界大戦に引き込もうとしているのだと考えているのだとしても、驚きません。

幸い、NATOの加盟条件に「他国との紛争のないこと」「政治的に透明な民主主義国家であること」という条項があります。前者をウクライナは満たさないのは明かですし、後者についても今のゼレンスキー政権は選挙で選ばれた大統領ではなく、臨時軍事政権の独裁政権になっているので、NATO加盟国がその規則を重んじるならば、ウクライナのNATO加盟は基本的に不可能だとは思います。しかし、嘘と約束を重んじないことでは定評のあるアメリカですから、そのあたりは力で捻じ曲げてくるかも知れません。

NATOが全面的にウクライナ側に立ってのロシアとの戦争は、米ソ軍事衝突であり、即ち第三次世界大戦のことですから、そうなって迷惑を被るのは主戦地の周辺国です。前にも述べた通り、NATOメンバーのハンガリーはNATOのウクライナ支援に強く反対しているし、黒海を挟んだ同じくNATOメンバーのトルコも同じスタンスです。日本と言えば、いつもと同じでアメリカの命令には「ワン、ワン」と二つ返事。北大西洋の自衛に、太平洋の島国が、自分からわざわざ首を突っ込んで、戦争ビジネスの捨て駒にされるために憲法改悪し、自国とは無関係の米ソ戦争に、米兵の代わりに自衛隊員を出して犠牲にし、たっぷりと軍事費を負担させられて、そのツケはわれわれ国民に回す、っていうのはどの世界のマヌケなのでしょう。相手から、都合よく使われて腰抜けぶりをバカにされているのに、何の勘違いしているのかニヤける増税メガネ。

世界の平和を望む人々は、当然、戦争反対です。NATOやウクライナの「平和を守るために戦争する」という言明自体がoxymoronであり、「平和を守るため」にはあらゆる手を使って戦争を避ける知恵が必要です。勇ましいことを言う人ほど知恵がない。そういう人間を我々は警戒し、立ち止まって深く考える必要があると思います。

かつて自民党がまだ多少はマトモだったころ、宮沢喜一が「『保守』とは立ち止まることだ。立ち止まって考えること」と「保守」と言う言葉を定義しましたが、立ち止まって考えれば、戦争をすれば、勝っても負けても、国民が死に、国が疲弊し、社会が破壊される、それで徳をするのはごく一部の支配層の人間だけであると言うことは明らかではないかと思います。

ロシアを激しく非難し挑発するNATO(アメリカ)は煽動者であり、東ヨーロッパのみならず世界の平和を脅かす存在となってきました。NATOは中国もウクライナにおけるロシアの戦争の「決定的な支援者である」と非難しましたが、それに対し、中国は、「NATOの声明は冷戦的な考え方と好戦的なレトリックに満ちており、挑発的であり、明らかな嘘と中傷に満ちている。(NATOは)対立を煽ってはならない」(中国外務省、林健報道官)と述べました。つまり、戦争を起こしたい連中の意図を冷静に指摘して批判したわけです。

そして、週末、トランプが襲撃されました。まだ状況が混沌としていますが、時期大統領になる可能性が濃厚なトランプに大統領になってほしくない勢力がやったと仮定すれば、最も怪しいのはウクライナでの戦争を拡大させたい連中でかと思われます。私はトランプという男が人間的に嫌いですが、時期大統領としては、バイデンよりはちょっとだけマシかもしれぬと思っています。それは、トランプはウクライナへの軍事支援を止めると言っているからで、ウクライナはアメリカの軍事支援がなくなれば、現政権はロシアと交渉するしかなくなり、とにかく戦争は止まるからです。

さて、そのNATOの態度に、プーチン自身も、「NATOは第三次世界大戦を起こそうとしている」と直裁的に述べましたが、かつて、プーチンは下のようにも言っていたのはNATO、アメリカを含めて世界は覚えておくべきでしょう。

「50年前、レニングラードのストリートは私に一つのルールを教えてくれた。
 もし戦いが避けられないのなら、先に攻撃しろ、と」
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