東日本大震災から14年か。
あんときゃ透析ができなくて困った。
ふだんは週3回(月・水・金)
1回当たり4時間の透析をしていたのに
水不足で
週に2回
1回当たり2時間の透析がしばらく続いた。
さあやっと『ノーマル運転』になったなと思った
4月31日の午後6時に透析中に電話が透析室に来て
ベッドで上半身だけ起こして受話器を握ると
「ドナーが見つかりましたよ。手術は明日です」
と移植コーディネーターの鈴木A子さんの声。
目を覚ました時は7時間の手術が終わっていたが
鼻の穴からニョキッと出た管は
喉の奥へと延び肺へ直接酸素を送り込むようになってたのかな。
とにかく
この管がうっとうしかった。
口の中の上あごがエグれていたが
これは自然に治ってゆくと言われていた。
全身麻酔をする手術のときは
上あごの肉がえぐれるのは仕方がないらしい。
ふつうは
前歯も4本ぐらい抜かれるとのことだが
前歯は健在でホッと一息。
ようするに全身麻酔の際は
麻酔医がなにやら
ぶっとい管で口の中を
職人技で出したり抜いたりするらしいので
そのとき口中が傷つく。
でもそれはある程度仕方がないのだそうだ。
病気になる前は初心者患者だったから
局部麻酔より全身麻酔の方が
自分がわからないまま目を覚ましたら終わっているから
そちらを希望するなんて思っていたが
そんな考えはこの日を境に吹っ飛んでしまった。
局部麻酔で手術が可能なら局部に越したことはないのです。
入院中の私の経過はここで述べても面白くなかろうと思うので
一人の妙齢の上品そうな御婦人患者が印象に残った。
渋谷区松濤まではいかないが
小田急線の豪徳寺あたりにすんでいそうな
女優の風見章子に激似の婦人である。
その彼女が怒り心頭なのだ。
何度となく看護師に訴える。
「気温が高いからと言って安易に冷房をつけるなんて信じられません。
今、世間では計画停電とか日常生活を我慢したり
なにより被災地ではまだまだ耐乏生活を強いられてるとき
つまり我が国が日本が一丸になって
この困難を乗り越えていかなくてはならないというときに
我々だけがこうしてベッドの上で安穏としている。
それだけでも世間様に申し訳が立たない。後ろめたい
忸怩たる思いでいるそのようなときに
エアコンとは何ですか!」
若い男性看護師は
「いや、あの、ココは病院ですからエー。
特別に許され」
すると背後にいた御婦人と同室の
若い女子患者2人組が
「アタシたちが暑がりじゃなくて、このおばさんが寒がりなだけ」
「アハハハ」
と、言い放った。
御婦人は「ワタクシ、院長先生にお手紙を書きます。ええ、書きますとも」
と述べた。
どちらの肩を持つということはないが
ボクも当時体脂肪が0.3パーセントで寒がりだったので
超寒がり仲間ということで御婦人に親近感を抱いた。
2週間後
御婦人はゴキゲンになった。
空室だった個室に格安で入室したとのことだ。
そして
こうるさい御婦人のいなくなった大部屋の
若い2人組女子は
ガンガン冷房を効かせ始めていた。
追伸.春になってゆくにつれ、重ね着していた服を一枚ずつ脱いでいき
カラダが軽くなってゆくのは嬉しいですねぇ。