真夜中の病院の屋上で
星を見ながら
いつもの包帯娘としゃべっている。
たとえ
話が途切れ
しばらく沈黙の時間が続いたとしても
けっしてそわそわとした居心地の悪い
気持ちにならない。
ワタシ「コロナの次は関税か
戦争はあい変らずだし。
世の中は大騒ぎのようだね」
彼女「ここにいると関係ないよね。
下界のことは...」
(5分ほど沈黙)
ワタシ「53年ぐらい前になるのか。
小学4年の時、社会科見学で
五島プラネタリウムに行ったの。
暗闇で
星座の説明なんかをする解説員の人が
つるつる頭で
そうそう外見がNHKの鈴木健二アナに似ていた。
やんちゃなエンドウくんが
『あの解説の人が月だ』
なあんて、はやした。
彼女「なんでそんなくだらないこと覚えているの」
「さあ。星の説明は全く思い出せないんだけどね。
解説者の頭がつるつるだったことだけは覚えている」
(2分間の沈黙)
ワタシ「『星は何でも知っている』って歌があったけど
人類の未来とか世界の行く末なんか
もうすでに知っているのかな」
彼女「星座占いというのがあるんだから知っているかもよ」
ワタシ「聞いてみたいな。
西暦16666年の世界はどうなっているのか。
のぞいてみたいな。
彼女「猿の惑星になってるかな」
ワタシ「イヌと猿が世界を二分していて
高関税の応酬をしてるんじゃないか。
ちなみに
どちらもサツマイモが好きで
大きな需要があるから
今の小豆なんかに相当する先物取引の商品が
サツマイモになっている。
そういや
昭和の屋台で売られた
ホクホクした石焼き芋の
十分に焼けてちょっと固くなった小麦色の表面を
木の皮のように
メリメリと剥がして嚙みしめると
その甘みは何物にも代えがたいな」
(1分の沈黙)
ワタシ「宇宙が誕生して
135億年ぐらいらしい」
彼女「気の遠くなる時間だよねえ」
ワタシ「そうかぁ?
135億っていったらさ
たとえば、135億円の資産を持ってる人なんて
世界にたくさんいるでしょ。
彼女「135億ドルでもけっこういますよ」
ワタシ「でしょ。135億という数字は
それほど大きな数字には思えない。
世界の人口も近いうちに135億人になるよ。
俺に言わせると1年がたった135億個つらなっただけの時間が
はるか宇宙が誕生して今までと同じだなんて
むしろ「アレ。それだけ?」って
言いたくなるぐらいだよ」
彼女「なるほど。夜空の星々を眺めると
コレらがみんな、たったの135億年でできあがったのって
不思議に思っちゃったんですね」
ワタシ「そう。いつもそう思っていた」
彼女「ダークマターとか言ってまだ宇宙のほとんどがわかってないから
ある日、偉い学者が大発見して、宇宙ができて、135億年どころか
とんでもない年月だったということに塗り替えられるかもよ」