あたしが家に着いた時には、丁度先生が帰る所でした。
母、妹、弟、姪、長男が嗚咽するなか、茫然と見つめる。父は元気な時とさほど変わりのない穏やかな顔でした。
まだ暖かいままの父に触れ、抱き起こして抱きしめ。なんで待っててくれなかったのか、と。
それを言ったら、なんでおまえは帰ったんだと父は言いたかったでしょう。
でも、父の最後は誰も見てなかったんです。
妹は朝食の支度で台所に、弟と長男はリビングで寝ていて。
姪たちは父の傍で寝そべって絵を描いてたそうです。
父の枕の方にいた母が、「ゴボ」っと言う音に驚いて父を見たら、口から血を吐いていて、そのまま。
妹は悲しみの中にも父の最後の世話をしてくれています。そういう時どうしたらいいのか知ってるのでしょう。顔をキレイに拭いて、胸の上で指を組んで。ヒゲも剃ってくれました。
あたしは固まったまま何もできず。
まるで生きているようです。見ていたら息を吹き返してくれるんじゃないかと思えるくらい。
でも、戻って来て欲しいけど今のままで戻るのは可哀想。弱って行く姿をずっと見てきたので・・・やっと言えた「お疲れ様」と「ありがとう」。息のある内には言えなかった。言ったらそのまま生きるのを諦めてしまいそうだったから。
葬儀屋さんがじきにきて、まだ暖かい父の胸にドライアイスを乗せて行きました。季節柄当然なのでしょうけど、あまりに冷たそうで切なかったです。
それからは儀式の為に大変慌ただしかった。悼む間もなく。
翌日が通夜で、父の兄弟が一緒に寝たい、と言うことだったので、父と過ごせる夜は亡くなったその日が最後。母と兄弟三人で、ビールを飲みながら一晩過ごしました。
手が空く度に、父の傍に行って腕を摩っていたのですが、夜にはもう氷のように冷たくなっていて。それでも触らずにはいられなかった。明後日には、もう触れる体がなくなってしまうのだから。
想像していた通り、一番辛かったのはお棺に納められようとした時。
言うまいと思っていましたが「やめて」と言ってしまいました。・・小さい声だけど。立ちあがれないのを旦那が引き起こしてくれました。
体があるうちは、一見「寝ている」ようなのでまだ良かったんです。心がそこにもうなくても、形があるだけでも救われてたのに。
生まれて初めて骨を拾いました。・・父はそこにいるのでしょうか。
母、妹、弟、姪、長男が嗚咽するなか、茫然と見つめる。父は元気な時とさほど変わりのない穏やかな顔でした。
まだ暖かいままの父に触れ、抱き起こして抱きしめ。なんで待っててくれなかったのか、と。
それを言ったら、なんでおまえは帰ったんだと父は言いたかったでしょう。
でも、父の最後は誰も見てなかったんです。
妹は朝食の支度で台所に、弟と長男はリビングで寝ていて。
姪たちは父の傍で寝そべって絵を描いてたそうです。
父の枕の方にいた母が、「ゴボ」っと言う音に驚いて父を見たら、口から血を吐いていて、そのまま。
妹は悲しみの中にも父の最後の世話をしてくれています。そういう時どうしたらいいのか知ってるのでしょう。顔をキレイに拭いて、胸の上で指を組んで。ヒゲも剃ってくれました。
あたしは固まったまま何もできず。
まるで生きているようです。見ていたら息を吹き返してくれるんじゃないかと思えるくらい。
でも、戻って来て欲しいけど今のままで戻るのは可哀想。弱って行く姿をずっと見てきたので・・・やっと言えた「お疲れ様」と「ありがとう」。息のある内には言えなかった。言ったらそのまま生きるのを諦めてしまいそうだったから。
葬儀屋さんがじきにきて、まだ暖かい父の胸にドライアイスを乗せて行きました。季節柄当然なのでしょうけど、あまりに冷たそうで切なかったです。
それからは儀式の為に大変慌ただしかった。悼む間もなく。
翌日が通夜で、父の兄弟が一緒に寝たい、と言うことだったので、父と過ごせる夜は亡くなったその日が最後。母と兄弟三人で、ビールを飲みながら一晩過ごしました。
手が空く度に、父の傍に行って腕を摩っていたのですが、夜にはもう氷のように冷たくなっていて。それでも触らずにはいられなかった。明後日には、もう触れる体がなくなってしまうのだから。
想像していた通り、一番辛かったのはお棺に納められようとした時。
言うまいと思っていましたが「やめて」と言ってしまいました。・・小さい声だけど。立ちあがれないのを旦那が引き起こしてくれました。
体があるうちは、一見「寝ている」ようなのでまだ良かったんです。心がそこにもうなくても、形があるだけでも救われてたのに。
生まれて初めて骨を拾いました。・・父はそこにいるのでしょうか。