ギリギリ探偵白書・214


 ギリギリ探偵白書
 「間抜けな尾行者」



 
 私が事務所に入ると、田中がパソコンの前で唸っていた。
 ひっそりと後ろに回り込む事にした。

 田中は、メールを読んでいる。


サザビー 「どしたっ!?」

田中   「のはっ!いつから、いたんですか?」

サザビー 「最初からいたよ、事務所を開いたときから」

田中   「そんな事を聞いたんじゃないですよ」

サザビー 「んで、何見てんの?」

田中   「逆援情報です。ホラ、伊東美咲似ですって」

サザビー 「迷惑メールじゃねーか」

田中   「知ってますよ。ちょっと想像してただけですよ」

サザビー 「それは妄想と言うのでは?」

田中   「ま、いいじゃないですか、ヒマなら仕事してくださいよ」

 (それは、こっちのセリフですよ)

サザビー 「ところでさ、調査がないからヒマなんじゃない?」

田中   「甘いですよ、調査だけが仕事ではないのですよ」

サザビー 「そう?お前は何やってんの?」

田中   「スパムメールの研究です」

 (文章読んで妄想してるだけでしょ)

サザビー 「チラシ配り行って来いよ」

田中   「え~、サザビーさんはぁ?」

サザビー 「俺は事務所を守ってるよ」

田中   「守るって何からですか?」

サザビー 「世間の荒波だよ」

田中   「サザビーさんじゃ、小波からすら守れないですよ」

 (言ってくれるねぇ)

 田中が出て行った後、すぐに睡魔が襲ってきた。
 
 キーボードを叩く音で目が覚めた。
 およそ3時間ほど眠っていたらしい。
 事務所では、あべちゃんがパソコンに向かっている。


サザビー 「ふぅ、10分ほど寝てしまったぜぃ」

阿部   「ああ、俺は1時間前からいるけどな」

 (ウソバレバレ)
 
阿部   「まあ、いいや、これから依頼者に会いに行く」

サザビー 「依頼か?」

阿部   「緊急らしいから、サザビーも来てくれ」

サザビー 「緊急のわりに、メールで相談かよ。
      何気に、のんびり屋さんだな?」

阿部   「とにかく、急いで準備してくれ」


 私は、早速、調査機材の準備に入った。
 あべちゃんは、灰皿を持ってトイレに入った。

 (急ぎじゃねぇの?)

 それから、我々が向かったのは、都内某所のスターバ○クスだった。
 店の前から、あべちゃんが電話をかける。

 店の奥の方で女性が電話に出る。

 依頼者の女性は、ストーカーに付け回されている言っていた。
 コーヒー屋に逃げ込んだから助けて欲しいと
 メールがあったのは1時間前だ。

 依頼者の話が本当ならば、今もストーカーが近くに居るはずである。

 あべちゃんは、電話で店を移るように指示している。
 近くのファミレスに移るようだ。

 私は、その場に留まり、ストーカーを確認する事にした。
 しかし、依頼者が店を出た後、それを追う者はいなかった。
 
 (なんだ、被害妄想か?)

 その時、店のトイレと思われる所から出てきた男が
 慌てて、店を飛び出した。

 店の前の道で左右をキョロキョロしている。

 (・・・・・) 

 私は、とりあえずデジカメで男を撮影した。

 (はい、チーズ) 

 男はガックリと肩を落とし駅の方に向かっていった。

 (さて、どうすんべ?)

 この男は、限りなく怪しい。
 男の後をつける事も考えた。

 (ま、次でいいや)

 私は、ファミレスに行き、デジカメを見せた。
 やはり、この男がストーカーだった。


阿部   「で、コイツは?」

サザビー 「帰ったんじゃない?」

阿部   「ふ~ん」


 翌日より、本格的に調査を開始した。

 依頼者の帰宅時には、決まって男が現れた。
 どうやら、家も知られているらしい。

 依頼者の家のポストに仕掛けたカメラに男が映っていた。
 男は毎日のように、ポストへ手紙を入れていた。
 驚いた事に、その手紙は白紙だった。


田中   「何すか?これ」

サザビー 「知らんのかね、無言手紙だよ」

田中   「へ、無言電話の手紙版っすか!?」

サザビー 「そう、そしてこの手紙には、もう一つ仕掛けがある」

田中   「なんすか、それ?」

サザビー 「炙り出しだよ」

田中   「炙り出し??」


 私は、紙に火を近づける。


田中   「ま、まさか??」


 ヴォッ!!

 紙に火が着いた。メラメラと燃える。


サザビー 「うわっ、アチチ」

田中   「・・・・・」

サザビー 「ま、そう言うわけだ」

田中   「そう言うわけだ。じゃないでしょう
      どうするんですかっ!証拠、燃やしちゃって」

サザビー 「安心しろ、今のはタダの紙だ」

田中   「・・・・・」


 それからも調査を続行し、証拠を集めた。
 そして、男の家を訪ねた。

 男は、すぐにストーカー行為を認めた。
 男は、依頼者の高校時代の同級生であった。

 (依頼者は、まったく覚えていなかったけど・・・)




        完



 メールマガジン「ギリギリ探偵白書」の復刻版です。

 ギリギリ探偵白書は、過去に行った調査を本人了承のもと掲載しています。
 尚、調査時期や調査対象者・ご依頼者様の個人情報は本人様の請求以外は開示いたしません。
 また、同作品に登場する人物名は全て仮名です。


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