ギリギリ探偵白書・9

 高層ホテルのラウンジに、女性が一人。

 私(阿部)は夏目を連れ、その場に赴いた。

阿部   「陣内さん(仮名)ですか?」

女性   「はい・・・」

 依頼者・陣内有紀さん(仮名)は離婚して1年、元夫・木下安男(仮名)からの復縁を迫られていた。

陣内さん 「私はよりを戻す気はないんです」

 ありきたりと言っては失礼だが、よくあるストーカー事例であった。

阿部   「はっきりと前の旦那さんには言ったのですか?」

陣内さん 「それは・・・」

阿部   「言ってないんですね」

陣内さん 「はい・・・」

 状況はしつこい電話と待ち伏せが中心という事であった。

 調査が始まり、私はカメラや録音機などを仕掛け、証拠を収集する。

 調査自体は簡単に終了した。

阿部   「証拠の収集は完了しました。後は、訴訟か話し合いです」

陣内さん 「考えさせてください。もう少し・・・」

 私は証拠を手渡し帰路に着いた。

 実は、私は依頼者の家の前を通勤で通る。
 調査が終了し、2日後。車で事務所へ向かっていると
 依頼者の家の前に「カギの△△○○」という車が止まっている。

 (おかしいな・・)

 普段なら気にも留めないが、その時はそう思い車を止めた。

 マンションを見上げると、依頼者の家の前に男が二人立っている。

 私はマンションの階段を駆け上がり、廊下へ出た。

阿部   「木下さん、どうしました?荷物でも取りに来たのですか?」

カギ屋  「???」

阿部   「カギ屋さん、この部屋、この人の部屋じゃないですよ」

カギ屋  「???」

 カギ屋は手を止めて、私を見上げた。

木下   「お、お前、誰だ!」

阿部   「阿部です。T.I.U.総合探偵社の」

木下   「た、探偵!どういうことだ。なんなんだ」

阿部   「あなたのしている事は犯罪ですよ」

カギ屋  「あのぅ。お取り込み中悪いんですけど、出張料が5千円・・。」

 (こんなときに出張料か!)

 元夫の木下は財布を取り出すように見せかけて、突然走り出した。

 私は追わなかった。カギ屋という証人がいたから。

 後日、話し合いがしたいと依頼者である陣内さんから連絡があった。

 しかし、元夫の木下は失踪し、会社や親類にも連絡はなかった。

 彼は愛想の果てに全てを失った。


        完



 メールマガジン「ギリギリ探偵白書」の復刻版です。

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