ギリギリ探偵白書・6


 コーヒーを入れながら、今日の音楽を選んでいると、電話が鳴った。

阿部  「はい、T.I.U.です。」

 調査の依頼は、50代の男性からであった。
 娘さんの婚約者を調べて欲しいとの事だった。

 その婚約者、吉村保(仮名)は、定職には就かず、何もしていないのに
 都心の高層マンションに住み、車は高級外車、金遣いが非常に荒いという。

 ここまでの情報から推理すると、ヒモか資産家の息子である。

 (まさか、、プチリタゴールド会員?)

 調査に入ると、私は彼の行動に驚愕した。

 初日に女性2名と会い、2回とも食事をして封筒をもらった。
 彼は中身も確かめずに帰宅した。

 2日目も同様に別の女性と会った。

 断片的に、

 「だからさ・・・・・なんだよ。」

 「へぇ、そうなんだ。」

 という会話が聞こえてくる。
 彼は最後に封筒を受け取ると帰宅した。

 3日目は男性とコーヒーショップで会い、ここでも封筒をもらっていた。

 気になるのは、彼に接触した人物と封筒の中身である。

 もちろん、封筒の中身は札束であるのだろうが、
 接触人物は女性だけでなく男性も含まれている。

 彼と接触した人物は、わずか3日間で7名もいた。

 さらに気になるのは、調査中、別の一団が彼を尾行していたことである。
 私は、彼の帰宅後、彼を尾行している一団の尾行を開始した。


 どうやら、彼は触ってはいけない集団に触ってしまったらしい。

 調査3日目に彼と接触した男性は、大手企業の次長クラス
 その関連団体が・・・・・。

 調査を始めて1週間で彼の生い立ちや現在、近過去の状態が
 報告書として作成された。

 この報告を受けた依頼者は、突然、娘を呼び出した。

娘さん  「何、お父さん」

依頼者  「ちょっと、見てみなさい」

 (・・・10分ほどの沈黙・・・この沈黙が私には苦痛・・・)

娘さん  「な、なによ、これ、誰よあんた!探偵!?これ・・・」

阿部   「・・・・・・・」

娘さん  「さ、最低!だからなんなのよ。いいじゃない」

依頼者  「しかし、彼は犯罪者だぞ。しっかりしなさい!」

 そんな会話が続く中、娘さんが彼を呼び出すと言って携帯を取り出した。

 彼は来なかった。


 依頼者さんに挨拶をし、私はこの場を去った。

 彼は、お金と言う魔物に狂ってしまったのか
 最後に待ち受ける落とし穴に気付いていない。
 そう、彼はただのマネーゲームとしか思っていないのだろう。


        完



 メールマガジン「ギリギリ探偵白書」の復刻版です。

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