つぶつぶタンタン 臼村さおりの物語

身体の健康と無意識のパワーへ 癒しの旅~Have a Beautiful Day.~

久坂部羊「廃用身」、圧倒的な小説 介護虐待、断捨離は善意かフェティシズムか

2020-02-04 22:34:56 | 本の感想/読書日記

3日後は東京読書交換会。読書交換会の前は読書熱が高まる。そのときまでに読み終えないと誰かに交換してもらう本がないのだ。(読んでない本でもOKです

東京読書交換会ウェブサイト

読んだ小説の感想。久坂部羊さんの「廃用身」を読んだ。

衝撃作だった。あたしが2020年に読んだ小説で、ナンバーワン。2020年は始まってまだ1か月だけどたぶん半年後くらいでもナンバーワン。それぐらいの衝撃。

「廃用身」は久坂部羊さんのデビュー小説とのこと。あたしにとっては「無痛」に次いで2冊目の拝読だった。
久坂部羊「無痛」、医師が書いた犯罪者の責任能力に焦点を当てた小説

「廃用身」はドキュメンタリー仕立ての小説。編集者が漆原医師の著作出版に向けて奔走するという形式で綴られている。漆原医師はデイケア施設に勤務する医師で、老人向けに画期的な治療法を編み出す。切断(amputation)療法、名付けてAケア。

日本の介護、介護サービスを利用される方、そのご家族。取り巻く事情が詳細に綴られていて、「・・・小説だとおもったのだけど、これはドキュメンタリーなのかしら」とおもうこともしばしば。

介護虐待の話も綴られていた。

私事で恐縮ですが、拝読しておもったのは、母親との関係を改善していてよかったなあということ。
老人虐待に当たる言葉やセリフ例が、昔あたしが子どもの頃に言われたことばかりだったから。これっておそらく少なくない家庭で(少なくともあたしやそれ以上の世代では)あったのかもしれない。

自分がやられたことをやってしまうのが人間の常。よく親にやられたことを子どもにやってしまうという育児の連鎖が話題になるけれど、これって介護でも同じなんだろうなと。

あのままだったら、あたしはもし介護することになったとき、きっと介護虐待してしまったんだろうなとおもう。

自身の心をいやすこと、健康に保つことは、あらゆる立場の人に大切だね。今の瞬間自分が苦しいだけではなく、あとで自分に返ってくることになる。


さてAケアに話を戻します。

廃用身とは脳神経の疾患などの影響で麻痺してしまった四肢のうち、リハビリをしてもどうにもならないもの。Aケアの根底には、廃用身は、本人にとっても、介護者にとっても重く、邪魔になるというのがその根底にあります。だから切断してしまう。
現在の法律においては、Aケアは保険診療対象外。だから代わりの病名が割り当てられて、それを執刀する医師がいる。

当初、小説のなかではAケアによって、心が明るくなったり、思考力が高まったり、不要な体重が減ったため自身で動けるようになったり。よいエピソードがいっぱい登場する。

そこに密告や週刊誌への暴露があり、Aケアが世間に取りざたされる。さまざまな側面から漆原氏をたたく発言をする人も出てくる。またAケアを受けた患者が事件を起こす。

果たしてAケアはどうなのか? 漆原医師はどうなるのか?

というのがこの小説の主なあらすじです。


考えさせられた。Aケアは、究極の断捨離かもしれない。けれども自分がそれをやりたいかというとわからない。

「わからない」というのは直接的な身体断捨離についてだけではなく、自分の思い出や記憶についてもいえる。別に面倒でも重くても、断捨離しなくてもいいかもともおもってしまったよ。

話を飛躍させると、近年のあたしはアート表現に興味がある。
そしてアートのすばらしいところはなんの役にも立たないところなのかもしれないとおもっていたから、よけい考えさせられた。

「廃用身」、お勧めです。よろしればぜひ読んでみてください。

※「廃用身」は前回の読書交換会の持って行ってしまってすでに手元にはないです。

ではまた


東京都豊島区池袋で読書交換会を開催しております。人にあげても差支えがない本を持ち寄り交換する読書会です。
東京読書交換会ウェブサイト
※今後の予定は2020年2月7日(金)夜、2月22日(土)夜です。

臼村さおり twitter @saori_u
思考していることを投稿しています。


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