雨かと思いきや午後は晴天。夕暮れには美しい夕日を眺めました。気温も個人的にはこのくらいが一番快適かもしれません。
本の感想です。宮下奈都さんの小説『羊と鋼の森』(文春文庫)を読みました。秀逸な流れるような文章。言葉の海に気持ちよく身をゆだねながら読みました。
羊と鋼の森 (文春文庫) | |
宮下 奈都 | |
文藝春秋 |
この本、2016年の本屋大賞受賞とのこと。まったく知りませんでした。読書から遠ざかりすぎていたこともあり、読書交換会という読書会を2015年9月に始めました。半年あまりではまだそれほど本が身近ではなかったのかもしれません。
いまは読書交換会でご一緒させていただく方たちと本屋大賞のことが話題にのぼることもあり、ずいぶん本との距離感も変わったんだなとおもいました。
舞台は北海道、主人公はピアノの調律師の青年。正確には青年の少年時代から物語がスタートして、少年がピアノと出会い、調律師になり、そして修行を重ねていくという時系列綴られています。
とてもよかったです。文章が美しく、綺麗な音楽が聞こえてくるようでした。ピアノは機械じゃなくてむしろ生き物の体に近いとおもいました。生命体であるかのごとくでした。数千万円するバイオリンがあるように、楽器は奥が深そうです。
一番印象に残ったのは、ピアノを調律するときに、以前と完全に状態が同じになることはない、ということでした。同じ方向性に戻ることはあるけれど、それはまったく同じではない。いい悪いといういい方が適切かどうかはわかりませんが、よりよくなったり、悪くなったりする。あたしたちの体と同じです。
そしてあたしたちの体はどうしても寿命を全うするように作られていますので、前よりよくなることはあまりない。けれどもピアノはそうでもなく、味が出るというかよくなるということもあるんだというのが新鮮でした。
もちろん、人として味が出る、深みが出るという意味では、あたしたちだって負けません!! 養生して大切に慈しんでまいりたいです。
深みが出るといえば、さまざまな経験はあたしたちを豊かにしてくれます。
ピアノは弾かなければ調律が狂うこともないとのこと。けれども弾かれないピアノよりも、弾いてそしてメンテナンスして調律して、また弾いてまた調律してとしているピアノのほうがしあわせですよね。
何かをすれば、何かを受け止めれれば、傷つくこともあります。けれども何も経験せず引きこもって生活するよりも、さまざまな出来事を経験するほうがしあわせ、そんな気がしています。肝要なのは、センターがずれても、ふとしたときにメンテナンスして中心を合わせる時間を設けること。そしてあたしたちの人生はまた動きます。
この小説は、主人公である調律師、や登場するピアニストたちの成長物語にもなっていました。自己啓発本みたいな側面もある申しますか、ピアノと一緒に成長していく変わっていく。
ではまた
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月2回、東京都豊島区池袋で、読書交換会をやっています。人にあげても差支えがない本を持ち寄り交換する読書会です。⇒東京読書交換会ウェブサイト
◆臼村さおり twitter @saori_u
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