少し木の枝を切った。当たり前なのかもしれないけれど、木によって枝を切り落としたときに漂ってくる香りが異なる。同じ栄養(、つまり土)で育っても、各自の個性が出るんだなあとあらためておもったよ。
本の感想。重松清著「その日のまえに」(文春文庫)を読んだ。
その日のまえに (文春文庫) | |
重松 清 | |
文藝春秋 |
重松清さんの本を拝読するのは、「定年ゴジラ」「流星ワゴン」「トワイライト」に次いで4冊目。⇒重松清「トワイライト」(文藝春秋) 読書感想
今回もしっとりとした読みごたえがあった。
「定年ゴジラ」は定年世代を主人公にした異色作だけれど、今回の「その日のまえに」も含めて、重松清さんの作品は中年(30代~40代)に焦点を当てた物語が多いとのこと。
「その日のまえに」のその日は、死ぬ日のこと。中年にして亡くなっていかなければならない人やその家族および友人たちが、死まで、あるいは死後までどうやって生きていくかの日常が綴られている。
あたし自身も父親をがんで亡くしているので、自身の思い出と少し照らし合わせながら読んだ。そしてちょうど意地っ張りな年齢で上手にお別れができなかったけれど、この本の登場人物たちのやり取りを通して、自分も一緒にさよならをさせていただくような気分になり、癒されたよ。
形式としては、短編集の集合のようなスタイルをとっていて、どこから読んでも大丈夫。一遍一遍の物語がどこかで少し交わっている。
死というのは誰もが直面することで、自分の死もしかり、大切な人の死もしかり。
どうやって生きていくか、どうやって死んでいくか、考えさせられた。
と言葉にすると、シンプルな短い文章になってしまうけれど、逆に一口では言えないからこういう言葉になってしまっておる。
死生観や思い出は共有できるけれどでもひとりひとり共有できないものであり、読む人ひとりひとりに、物語は違った形で響くのかもしれないね。
そして文章が美しいから、安心して物語の世界に身をゆだねられた。
大切な人を亡くした経験を持つ方に、死について考えたい方にお勧めしたい一冊。
「流星ワゴン」も「トワイライト」も、死が出てきた。重松清さんのテーマなのだろうか。また著者の小説を読ませてもらいたいな。
ではまた
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