高橋源一郎さんとSEALDs主要メンバーである牛田悦正さん,奥田愛基さん,そして,柴田万奈さん4人の会談を本にして出版された,『民主主義ってなんだ?』を斜め読みした。
民主主義ってなんだ? | |
高橋源一郎×SEALDs | |
河出書房新社 |
本の特徴上,2015年上期に政府が提出した,いわゆる『平和安全法制』なる,第189回国会 第七二号議案と第七三号議案についての,私自らの考え方を明確にしておかなければならない。
両議案に対して反対である。理由は,私のブログ過去記事『政府提案の安保法制は,違憲な法律を含んでおり,抑止力を高めることにも寄与しないので反対します.』に記載している。
本書を読もうと思った動機は以下の二つである。
1.SELADsとはどんな考え方を持った学生たちのなのかを知ろうと考えたこと(古い言葉ではイデオロギーと言ってよいであろう)。
2.彼らが国会を包囲したデモで使っていた『民主主義ってなんだ?』,『これだ!』のコールの定義を知りたいと思ったこと。
読後感。
斜め読みした本を批判しても仕方ないので,率直に感想を書く。
1.本に出てくる三人はよく勉強していると感じた。少なくとも,ある組織の中で,年齢を重ねて一定の職位についている「大人」の大多数よりも勉強している。特に,本の中の奥田さんが「民主主義と立憲主義って,本来緊張関係にある」(同書 59頁)ということは,彼らが,勉強していることの何よりの表れであろうと思う。よって,彼らを積極的に支持はしないが,怪しげに見ることもない。
SELADsは左翼活動家たちに扇動されていると揶揄する大人たちがいるが,もし,そう思うのであれば,彼らと具体的なテーマについて議論してみれば良い。彼らのツイッターなりなんなりで議論は可能であろう。
2.彼らの考えている民主主義が具体的な政体がどのようなものか?,少なくとも,本書からは,読み取ることができなかった。それは,議論をリードする高橋源一郎さんが,古代ギリシャのアテネの政体(彼はアテナイと言っているが,一般にはアテネであろう)から,近代の啓蒙思想にまで時間をワープさせてしまうことに要因があると考える。もっと,彼らに語らせるべきであった(大人の行動については批判する)。
それ以外にも,高橋さんが,多くの情報を彼らにもたらして議論をするため,彼らがどんな政治を,これからの日本に求めているのか?という,具合的なところが,精読すればあるのかも知れないが,見出せなかった。これは,少し,残念であった。
3.日本の歴史をどのように捉えるかの観点も,本の中から見出すことができなかった。これも,議論をリードする高橋さんのミスリードであろう。日本が,1960代まで,貧しい国(都会は発展していたが,田舎は,貧しかった)であったという観点から,日本において民主主義がどのように考えられて来たのか?という観点が,現代と未来を考える上で必要であろうと思う。欧米の政体や民主主義の姿だけを見て,日本の政体がどうあるべきを考えるべきではないと思う。
そう言った,観点から,下の本は読むに値すると考える。
終戦後史 1945-1955 (講談社選書メチエ)2015/7刊 | |
井上寿一 | |
講談社 |
新・100年予測――ヨーロッパ炎上 (2015/7刊) | |
ジョージ・フリードマン著 | |
早川書房 |
それは,結局,国民(欧米は市民であるが,日本は,憲法により国民となっている)を,継続的に如何に飢えさせずに社会を維持し続けるか?という,政治と経済の両方を考えることでもある。本書において政治,哲学,および,宗教の関連は議論される。古代ギリシャにおいて,内陸のスパルタよりも海に面したアテネの方が交易が盛んであったということも語られている。しかし,古代ギリシャの都市国家は全て滅亡し,ヘレニズム,ローマ,ヴィザンティン,オスマントルコの支配される歴史を持つ。
どうやって食っていくかを考えるのは,大人の役割である。だから,これから自分を形作ろうとする,学生の三人にその責任は,まだ無い。しかし,民主主義と立憲主義が緊張関係にあると考えるならば,その延長線上には,どうやって一億人以上の人たちを豊かさを維持した上で暮らすことが可能になるのか?という政治の最も重要な役割を考えざるを得ないはずである。
安倍政権を支持するという人たちの最も重要な理由は,経済対策である。1980年代後半のような日本がJapan As No.1と呼ばれたような強い経済力を欲するというのが,安倍政権を支持している理由だ。それを,私は,非常に利己的であるとは思っているが,現実はそうだ。
批判する考えはなかったが,少し,批判染みてしまった。
凡庸であるが,彼らのようにモチベーションの高い若者たちが暮らしやすい社会こそが,日本が必要とするものでろうと考える。彼らを揶揄する少なくない大人がいることを,残念に,そして,申し訳なく思う。
以上。
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