【かねやす】のお母さんに教わった鮒ずしの楽しみ方をご紹介しよう。非常に簡単な料理(吸物)である。茶碗に頭と尾を入れて、お湯を注いで3分待つだけ。
じわじわと脂が浮いてくる。箸で頭を崩して汁を吸う。調味料は何も入れていないのに、上品で淡い旨味が出ている。
目と顎の周りのゼラチン質が熱によってグミのようにプルンプルンになるのが面白い。ちゃんとした吸物ができるのは驚きだった。ネイティブの意見は聞いてみるものだ。

次に鮒を包んでいたご飯を種にして吸物を拵えてみた。スプーン1杯のご飯に薄めのだしを張る。するとだしにえもいわれぬ深い味わいが生じる。酸味が相乗効果によって高次元の旨味に変わるのだ。
鮒ずしは捨てるところのない立派な食材である。発酵食品の調味料としての大いなる可能性を私に示してくれた。
